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知らない間にメンバーから激重感情を抱かれて帰れないダンジョン探索録  作者: Schuld


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4-1

 振り返って自分が学生だった時のことを考えれば、背伸びしていてもガキだったのだなと心から思う。


 特に、今年で18歳。まだまだ女子高生として制服が似合う年齢の子を前にすると。


「ほっ、本日付けで配属されました、佐々木・陽菜乃です! よろしくお願いしまっす!!」


 びしっと背景に描いてやりたくなる最敬礼をする彼女。本日より新卒として株式会社防人組、第四特種調達課つきとなった少女は、何と言うか既にへたばっていた。


「私は有明・江月予備役一等陸曹であり、第四課課長だ。よろしく」


「ご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくおねがいしまっす!!」


 声は空元気なのか、精一杯運動部らしく張り上げているのだが、顔色も悪いし隈も酷い。だのに機械式のカメラアイに置換された右目だけが――この態とらしいレンズとファインダー、So-kon製だな――キッチリ開いているのは、眼瞼筋周りも換装されているからだろう。


 つまり、眠くてならないようだ。


「さて、佐々木さん、私は課長として君に何点か確認せねばならないことがある」


「何でも聞いてください!!」


「……もう頭は上げていいよ」


「ありがとうございます!!」


 何だろう、私も運動部だったけど、ここまで仕込まれなかったよな。やっぱクロスカントリー部って実銃扱うから、滅茶苦茶厳しいんだろうか。私がフンワリ知っている社会人のイメージよりも更に角張ってる。


 多分コレは緊張とかではなく、部内で上の人への振る舞いがこうだったから、自然と出てくるのだろうな。


「まず、ちゃんと眠れてる?」


「えっ、あ、それは……」


「職務に関わることだから素直に、偽りなく答えるように」


 そういうと彼女は、元気よく二日寝てませんと白状した。


 それから、現着するまでの間も殆ど安定して睡眠がとれていないと。


 事情を聞けば無理もない。ほんの先月まで高校生だったのだ。タンカーの雑な船室にブチ込まれて常に波の音と揺れを叩き込まれ、更には陸運トラックのおっかねぇし、腕っ節の強いあんちゃん達に囲まれて、ほぼ昼夜なく動き続ける車体に乗っていたとあれば、碌に眠れもするまい。


「食事は」


「その……自分、車酔いが酷いッス……じゃなくて、酷いです!」


「オーケー、色々分かった。では、最初の任務だ」


「はいっ! 何でもします!!」


 私は右手をこめかみに添えて軽いめまいを誤魔化した後、私のトレーラーの横にびた付けされたトレーラーの扉を開く。


 それから、断固として宣言した。


「飯食って寝ろ」


「はいっ! …………え?」


「そんなザマで使いモンになるか!! 飯食ってシャワー浴びて寝ろ! 復唱の要なし! 駆け足!!」


「はっ、はい!!」


「翌ヒトフタマルマルまで何があっても休めっ!! 以上!!」


 勢いよく扉を閉じて、中でドタバタしている音が奥に去って行くのを確認してから、私は大きく溜息を吐いた。


 本当にウチの上層部は人の心とやらがないらしい。


 なんつー日程のキャラバンにブチ込むかね。そりゃ疲弊もするわ。波も揺れも子守歌、寝ようと思ったら外骨格の関節をロックして突っ立ったまま眠る、四年間軍隊に漬けといた人間じゃないんだぞ。


 明日からが色々と思い遣られる。


 本当は到着したコンテナの物資をチェックして、色々仕度したかったし、報告書も上げにゃならんのだが、一日くらいズレても誤差だな。うん。


 流石に課長ともなったら、カンパニーに一回くらい怒鳴ったって許されるだろ。


 ……多分。


「あ、あのー……」


「……休めと言ったけど?」


「すっ、すんま……すみません! 分からないことがあったら直ぐ聞けと教わっていて!」


「そりゃ大事だなことだ。で、何が分からないんだい」


「ひとふたまるまる……って、なんですか?」


 あ、うん、そっからかぁ……と思いつつ、一二時までだよと言って扉を閉めさせた。


 こりゃ先が思いやられるぞ。


 とはいえ、この事態は想定していたので問題ない。正直、海兵隊で色々麻痺していたが、四年も大学に行けば「あれ? この旅程結構過酷では?」と気付くくらいの常識は戻ってくるもんだ。


 そんでもって、夏期自衛軍体験訓練では〝はい、いいえ式〟の応答やら、数字の読み方までは教えないのは、参加したことがあるから知っている。あくまで兵隊体験みたいなもんで、自衛軍を就職先に考えている若人達にかっちょえー装備を見せてやり、引き摺り込むのが目的みたいなもんだ。


 ただ、あの疲弊度合いならもう一日二日は休ませた方が良さそうだな。


 よし、予定通り、明日はOJTという名目で街中の散策だけして、その後は仲間と顔合わせしたあと、適当に感想文でも書かせよう。


 とりあえず折れかけた心を補修するべく煙草を一服つけてから、私はバイクでギルドハウスに向かった。


 そして、また数日前から社交で家を空けると出て行ったアゼリアがいないため、暇をしていたリズに出迎えられた。フェアルリリムも気配からして不在であるようで、手慰みにトランプをイジっている様は、極限まで暇を持て余していたと見える。


『新人さんはどうでしたか? ※酷いスラングにより平易に翻訳しております』


「まぁ、根っからの体育会系だから、鍛えたら使い物にはなるかな」


 強化外骨格のいいところは、練兵が簡単なところだ。


 クソ貧弱モヤシ野郎でも、世界記録を出すアスリートとは比べものにならないスペックを出せる。あとは基礎体力と根性さえ付ければ良いので、歩卒の教育は昔と比べて随分簡単になったそうだ。


 銃だってFCSのおかげで、500m離れたマンターゲットに初日から命中くらいは可能になっている。


 それが元から生身でクロスカントリーなんて、軍人でもしんどい競技をやっていた子なのだから、センスも磨かれていただろうから順応は早かろう。全国大会上位入賞の腕前を見せて貰おうじゃないの。


『どんな、顔を、していましたか?』


「んー、どっちかっていうと、可愛い系? 小動物っぽさがあるというか」


『コウヅキ、から、して、どうでしたか? ※酷いスラングにより平易に翻訳しております』


 変なコトを聞いてくる娘だな。


 部下は部下だ。そういう目で見る相手ではない。予備役軍人云々以前の問題で、コンプライアンスってもんがあるだろ。


『そうですか、そうですか』


 素直に答えると何処か満足そうに言ったリズは、立ち上がって隣に座り、妙に絡んできた。肩に手を添えて顎を乗せ、にぃっと笑っていると猫のようで愛らしい。


『まぁ、自分達も、可愛がって、上げる、ので、安心して、ください ※酷いスラングにより平易に翻訳しております』


「本物の素人なんだ、お手柔らかに頼むぜ」


 仲間達が育成に前向きなのはありがたいが、やりすぎるとパワハラとかで上に告発されたらエラいことだ。


 こういうのは加減がある。私は新兵教育担当ではなかったけれど、兵卒の王ではあったのだ。兵隊をどう扱うべきかは、指揮される側としても、指揮する側としても嫌というほど知っている。


 その上、ブートキャンプにもちゃんと行ったのだ。あの時の経験があれば、なんとでもなるさ。


 大事なのは匙加減なんだけどね。


『前祝いに、お酒、でも、いきませんか? 今日は、懐が、温かい、です』


「誰を祝う気だ誰を」


 私は何につけても飲みたがる戦友に呆れつつ、ただの食事なら付き合うと言った…………。

フェリーの一泊、車中泊三日で心が折れた私には辛い旅程過ぎるとしか思えませんでした。


ということで新人着任! 褐色肌部活後輩系女子です!!

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― 新着の感想 ―
ええ~ほとんど睡眠取れてなくて食事もまともに取れてないって普通なら到着前に死んでるじゃん。会社に血も涙もないんか。そもそも未来世紀の船舶なのにそんなにうるさくて揺れるの??
元気でよろしい 分からんことを聞けるのは好印象やな
上司がバケモンなことには勲章見ても気づけないっぽいな? 伝聞か実戦でどうせバレるのは確定ではありますが。
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