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知らない間にメンバーから激重感情を抱かれて帰れないダンジョン探索録  作者: Schuld


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3-6

 列島にダンジョンは涌かないが、異世界産の怪物が寄ってこないとは限らない。


 特に、ダイアウルフのような〝泳げる怪物〟は生息地を追われた個体が、小さな小島伝いに追われて追われて流れ込み、土着化した歴史がある。


 だから、我々はその厄介さと面倒さを知っている。


 特にコイツら頭良いから嫌いなんだ。かつて列島から駆逐された狼と違って、無味無臭の毒を仕込もうが、毒餌で駆逐できないんだ。


 まぁ、そりゃ〝人間並みの思考力がある〟なんて研究データがあるんだから、自分が倒した覚えのない動物の死体なんぞ、何が仕込んであるか分からんし漁らんわな。


 だから地道に散らすしかなくてタルいんだわこれが。


「ワンダウン」


 私は単発に設定したバトルライフルの狙いを変えながら呟いた。外骨格が耐えられる木を探すのには苦労したが、ベストな狙撃ポジションだ。


 有り難いことにコイツらは常軌を逸した硬さをしていない。お巡りさんが警察署に置いてあるような、獣害用7.62mmじゃバイタルパートに当たってもしばらく動いてくるのだが、バトルライフルであれば即死させられる。


 といっても、それも頭や胸に良い角度で、爆裂徹甲弾が突き刺さればの問題だから、難易度がエグいんだけども。


「ツーダウン」


 その上、引き際を弁えているのが何ともね。近くにいた個体を狙って二体始末したが、森を徘徊していたダイアウルフたちは散らばってしまった。


 そして、その速度は凄まじく、50km毎時で巡航しやがる。挙げ句、飛び道具だと理解した瞬間に蛇行軌道と来た。


 最大時速じゃないぞ、巡航速度だ。しかも規則的なジグザグ移動ではなく、乱数回避に近い。


「リズ、駄目だ、追い込めそうにない」


『分かりました、森の出口を塞ぎます』


 しかも頭が良いから、撃たれたら絶対に敵が複数いることを考慮して動いてくるんだよな。


 今のところ、私の生体センサーが捕捉した個体数は雌雄合わせて十体。


 ただ、連中は列島の〝爆撃機〟という恐ろしさを知ってやがるから、群れが一所に集まることを避ける。こっちの戦術に対応してきているのだ。


 文字通りのウルフパックに分かれて、緩い陣形を敷いて動いているとみるのが妥当だろう。


『追います、他を、お願いします』


「了解、スリーダウン」


 とはいえ仕方がない。ダイアウルフ相手ってのはチマチマやるしかないと相場が決まっている。


 基本は根比べだ。相手が〝部が悪い〟と遠くまでひたすら逃げるまでケツを突っつき回すしかないのだ。あるいは、圧倒的な殲滅力で一気に叩き潰すか。


『リリム、捕捉は』


『……全て、終えて、います……』


 お、有り難いと思っていると、光の柱が幾本も森の中に立った。


 フェアルリリムの生体探査干渉式だ。


 私が倒した個体の血を縁に使い、一気に引っ張り出したな。これでどこまで逃げても追っていける。


 しかし、多いな。三十……いや、四十を軽く超えてる。こりゃ地元の猟師さんじゃ歯が立たんわけだ。


 多分、他の強大な怪物に追われた末に、こんな人間の生存域に来たって風情だな。


「フォーダウン」


 これで四体目。まぁ、対怪異用バトルライフルと呼ぶには頼りない代物だが、ダイアウルフを狩るのに過ぎたるはなくとも不足はない。


「っと、流石に全部有効射程から逃げられたな」


 射程内の個体を取りあえず射線が通った端から撃っていたが、散けていく範囲が広すぎて遂に追い切れなくなった。


 さて、どうなるかな。森の外に向かう光はないから、蓋をする役割を与えられたリズは、釣果なしで終わりそうだ。あとで文句を言うだろうから、ビールの一本でも分けてやろう。


 さて、追討と行こうか。私は狙撃ポイントに打ち込んでいた、靴底のアンカーを抜いて固定を解いてから、ナイフを突き立て、そのまま木の表面を浅く裂くようにして一気に滑り降りた。


 本来は痕跡を残しすぎるので使わない手法だが、今は追われている訳ではないので速度重視だ。木には悪いけど、領民のためと思って我慢してくれ。


「おっ、やるな」


 対地計が十mを示したところで刃を抜き、そのまま無音で着地。静音ダンパーとM2の安全落下高度を用い、衝撃を器用に受け流す操作の〝慣れ〟があってこその技だ。


 そして、着地する頃には光が次々消えていき、半数を割っていた。


 狩りを担当しているのは私とアゼリアだが、彼女は機動力が違う。ベリアリューズがタフネスとパワーに振っているとしたら、彼女は素早さ寄りの前衛。本気で駆け抜ける速度はダイアウルフを追い抜くことなど容易く、卓越した技量と神威に輝く剣で全てを撫で斬りにしていく。


 更に、一気に光が消えた。


「ちっ、飛ばすなフェアルリリムも」


 大きな爆発や揺れはなかった。恐らく彼女が得手とする〝存在否定〟の追尾型光条を弾幕ゲーの如くばら撒いたのだろう。だとすれば多少散けていたところで一網打尽にされたとしても無理はない。


 本人曰く〝燃費が悪い〟だそうだが、ああも派手にブッ放しておいてよくいうよ。


 私が必死こいて狙撃ポジションを確保したのに、撃破できたのはたった四体。


 雑魚散らしが仕事の斥候なのに、これだとお荷物だ。せめてもうちっと掃除しておかんと。


 私は右足で踏み切り、一歩、二歩、三歩と少しずつ力を込める。


 強化外骨格の高速走法のコツは、慎重さと欲張らないことだ。


 言うまでもなく時速60kmを出そうとしたら、普通の走り方でやっては強化外骨格の出力に追いつけず股関節か膝がイカれる。


 故に、外骨格の疾走とは跳ねることなのだ。


 大事なのは跳躍の幅を最初は小さく取って助走を付ける。理想は三歩でトップスピードに乗ることであり、地面への接地は最低限。足跡をできるだけ深く残さないよう、つま先で一瞬だけ蹴るのだ。


 これが軍用のスラスター付きの正規装備なら、一瞬スラスターを噴かして足跡を付けないこともできるんだけどね。如何せん、このM2で速力を重視すると、ある程度は仕方がないのだ。


 ああ、低反発カバーがありゃもっと痕跡なく動けるんだけど。


「ファイブダウン」


 外骨格での行進間射撃のコツは、自分が跳躍の頂点に達し、上昇から落下に達する瞬きの刹那。それを逃せば、銃弾に変な慣性がかかって着弾点が微妙にズレる。ある程度はFCSがカバーしてくれるが、繊細に釘の頭をぶん殴るような狙いを出すなら、この一瞬が最適。


「シックスダウン」


 フルオートで遠慮なくブッ放して弾幕に巻き込むという手もあるのだが、それは美しくない。


 費用対効果が悪いのは勿論……。


 弾代がかかる!


 いやね、軍人時代は確実性を重視して撃ってたんだけど、これが民間だと馬鹿にならんのよ。特に対怪異用の50口径はお高い。一番安い徹甲弾でも一発あたり800円! 爆裂徹甲弾などの特種弾頭だと2,000円越えが普通!


 こんなもん現役時代と同じ感覚でばら撒いてたら経理から怒鳴られる!


「セブン、エイトダウン」


 だから一発一発に魂を込める。具体的に言うと自分で自分を縛るのだ。


 外す度に一日禁煙とか。


「ナインダウン」


 ただ、今日は調子が良いな、ワンショット・ワンキルが達成できている上、バラバラに逃げる連中を追う動きも良い感じだ。適当な木を踏み台にして、ほぼ直角に曲がるのも葉を揺らす程度の軽やかさでやれているのが心地良い。


 さぁて、ラストのお相手は……。


 生体センサーの範囲ギリ、こっから約800m。.50BMGの有効射程内。


 ただ、FCSは赤シグナルを出している。命中可能性ナシの表記だ。


 とはいえ、私は実際のところ〝殆どFCSに頼っていない〟から関係ない。コイツはあくまでセンサーとヘルメットのHUDを繋ぐ仲介だ。むしろ、ある程度の遠距離射撃を得手とする人間ならば、マニュアルエイムが当たり前。


 黙って見てろっての。


 私は一瞬だが、梢の重なり合う隙間に空を見た。そして、弾丸が届く僅かな誤差の後に頭部が通ることを。


 引き金を引く。そして、拡大した光景の向こうでダイアウルフの頭部が弾けた。


 そして、送れて響く銃声。


「ラストワン」


 よし、最低限の仕事は熟した。私はちょっとした満足感と共に、良い金になるダイアウルフの皮と世界晶を剥ぎに行ったのだが……。


 ちょっとした達成感は、無邪気に大物を狩ったと〝体高3m〟はあろうかという個体の前で笑っているアゼリアに粉砕されるのであった…………。

コウヅキくん「これくらいできないと一等射撃章もらえないから普通ですが……」

オメーがおかしいんだよ!!


というわけで初戦です。これが海渡ってやってくるとか最北州の猟友会は対物ライフルとか持てるようになってそう。


コメントなどいただけると大変うれしく存じます。

観葉植物にちょろっと水をやる感覚でくださると嬉しく存じます。

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― 新着の感想 ―
熊(ダイアウルフが狼基準)
こんなん日本に来るとか最初期とかめっちゃ混乱起きてそう
 なんか今回のダイアウルフの説明見てると、新人ちゃんの経歴に書かれてた父親と祖父の負傷原因である熊狩りがそのまま書かれずに『“”』で強調されて書かれていたのがなんか引っ掛かりますね…もしかして熊じゃな…
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