第二百八十六話 ガルフォース辺境伯家に到着
ポチポチ、ポチポチ。
魔導船が王都を出発して、大体一時間が経過した。
安定飛行に入ったのもあり、僕達は一斉に通信用魔導具で仕事をしていた。
クリスも今年通信用魔導具を支給され、スラちゃんと一緒にあれこれ作業をしていた。
フリフリ。
「皆さん、お茶が入りました」
「もう一時間経ったか。休憩にするか」
料理上手なアクアちゃんが、火を使わない魔導コンロでお湯を沸かしてお茶を入れてくれた。
リーフちゃんも給仕を手伝っており、料理をするスライムに魔導船に乗船してる軍の兵は驚愕の表情をしていた。
シロちゃんは、船内を移動して兵に怪我人や病人がいないか確認をしていた。
「相変わらず、スラちゃん達は万能だ。フルメンバーが揃ったら、とんでもない魔法部隊が生まれるだろう」
紅茶を口にしながら、ヘルナンデス様が少し呆れ気味に話した。
頭もとても良いし、スラちゃんなら学園で学園生に勉強を教える事も可能だ。
それでも、僕の大事なお友達なのは間違いない。
「予定では、おやつの時間頃に辺境伯領に到着しそうですね」
「安定速度で航行しているが、やはり新造艦は速い。このまま順調に進めば、予定時刻に到着する」
ルーカス様も、順調な航行に満足そうにしていた。
この世界では、意外と時間通りに物事がいかないことが多い。
だからこそ、こうして順調なのはいいことだ。
「クリス、新兵への指導内容は出来た?」
「スラちゃんに見てもらいながらだけど、だいたいできたよ」
クリスも、軍の新兵対応で大忙しだ。
クリスが不在の間は、シーリアさんが対応してくれる。
当面は、新兵は厳しい基礎訓練を受ける事になっていた。
僕も、新しい職員への対応をたまにしていた。
帝国から帰ってきたら、合同の奉仕活動を行って町の人と直接接する予定だ。
「ケン君も、暫くは経験を積むことが優先される。二十歳を超えれば、いよいよ幹部として動く事になるだろう」
ヘルナンデス様、そんなに満足そうに頷かなくても。
それに、僕は色々な事を覚えようとまだ勉強の真っ最中だ。
幹部になるのは、まだ当分先ですよ。
こんな事を話しながら、仕事をしてたまに休んだ。
そして、僕達を乗せた魔導船は、予定通りの時間に辺境伯領の軍の基地に到着した。
馬車に乗り、辺境伯家の屋敷へと向かった。
すると、屋敷の玄関前で一年前と同じく可愛らしいお出迎えが待っていた。
「いらっしゃーい!」
「いー!」
大きくなったランディちゃんが、満面の笑みを浮かべながら元気よく僕達を出迎えてくれた。
ランディちゃんの妹のマミちゃんも、お兄ちゃんに負けじと元気よく挨拶をしてくれた。
これには僕達も思わず笑みになり、ヘルナンデス様とルーカス様も出迎えてくれた兄妹の頭を優しく撫でていた。
「お祖父様が待っているよ。こっちだよ」
「ちー」
ランディちゃんは、僕の手を引っ張りながら応接室に案内した。
マミちゃんは、クリスと手を繋いでトコトコと可愛らしく歩いていた。
小さい子が好きなクリスは、マミちゃんの可愛らしさにニコニコとしていた。
コンコン。
「お祖父様、ケンお兄ちゃんが来たよ!」
「おお、そうか。入ってくれ」
ハーデス様の声が応接室の中から聞こえてきて、僕達は部屋の中に通された。
ハーデス様は、笑顔で僕達を出迎えてくれた。
「皆さん、久々ですな。お元気そうで何よりだ。ケンの逸話の話は、私も聞いているぞ」
ボーガン様は、握手をしながら何か言ってきた。
えっと、逸話になるような事って何かしたっけ?
ソファーに座ると、ハーデス様が苦笑しながら教えてくれた。
「違反を犯した貴族主義勢力の逮捕、シェイク子爵領の災害対応、そして学園で教師をして卒園生を送り届けた。それだけの事を講和会議後の一年でやっている」
ハーデス様は、指折り数を数えた。
いやいや、他の人達の力もあったからこそですよ。
すると、ハーデス様の隣に寄り添うように座った兄妹が祖父に質問をした」
「お祖父様、学園ってなあに?」
「なーに?」
どうやら、学園というワードが気になったみたいだ。
ハーデス様は、孫に優しく教えていた。
「ランディよりも少し年上の人を、ケンや他の先生が色々と教えている。ランディもマミも、大きくなったらケンに勉強を教わるといい」
「おー、僕楽しみだよ!」
「よー!」
話を聞いたランディちゃんは、とっても楽しそうに盛り上がっていた。
マミちゃんは、お兄ちゃんのマネっこだね。
「【蒼の治癒師】様の教え子が国を動かすのも、あと数年後の事だろう。私も、本当に期待している。国のため、そして人々の為に動く政治がもう間もなく開始される。暫くは反発も起こるだろうが、大したことはないだろう」
国の政治が良くなると、各領地にも良い影響が波及する。
貴族主義勢力の領地はまだあるから、どんなことが起きるのか十分に気をつけないと。
「さて、難しい話は休憩を取ってからにしよう。客室で休まれるとよい」
「ガルフォース辺境伯、お言葉に甘えさせて頂きます」
ヘルナンデス様が返事をし、僕達は使用人の案内で客室へと案内された。
案内されたのが……
「あそぼー!」
「ぼー!」
元気な兄妹が、僕とクリスのいる客室に突撃してきたのだ。
という事で、スラちゃん達も含めて一緒に遊んで時間を潰したのだった。
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