第二百八十五話 帝国へ出発する日の朝
いよいよ帝国へ向かう日の朝となった。
前日のうちに様々なものの準備を整えているので、今日はキチンとした服に着替えて王城に向かうだけだ。
「一週間くらいで戻ってくるからね。ハンナおばさんや他の人の言うことをよく聞くんだよ」
「「「はーい」」」
「ガルッ」
朝食時に、僕はアイちゃん達に色々話をした。
チビスライム達やピーちゃん、それにトラちゃんも残るし安全は大丈夫。
ただ、離れ離れになって寂しくなっちゃうのは避けられない。
ハンナおばさん達が対応してくれるというし、日中は安息日を除いて王城で勉強だ。
ある意味、忙しい方が寂しくないのかもしれない。
早く帰ってこれるようにと思いながら、僕とクリス、それにスラちゃん達は馬車に乗り込んで王城へと向かった。
アイちゃん達は、もう少ししたら王城に向かう予定だ。
「えっと、打ち合わせ時間前まで処理可能な書類を確認しますね」
「ケンは、本当に律儀ね……」
いつもの執務室で簡単に仕事をしていると、ソファーに座っているクリスが苦笑しながら僕を眺めていた。
アーサー様も職員も苦笑しているが、何もしないって何だか落ち着かないんだよなあ。
僕の側にいるスラちゃんも、しょうがないって表情だ。
とはいえ、三十分もしないうちに僕とクリスは、アーサー様と共に応接室に呼ばれた。
「真面目なケンらしいが、道中も程々にするように。本来の目的は、皇女の結婚式を通じた王国と帝国との親善友好なのだからな」
陛下は、執務室での僕の様子を聞いて思わず苦笑した。
そんな陛下の目の前に、豪華な装飾品が二点置かれていた。
「シェイク子爵領は宝石の産地でもある。たまたま大粒のルビーが採れたので、帝国と皇女への贈り物として加工した」
大粒のルビーがあしらわれたブローチとネックレスで、ルビーの周りにも数多くの宝石があしらわれていた。
誰が見ても、一級品だと分かった。
僕は、豪華な装飾品を魔法袋に入れて大切にしまった。
「あと、ヘルナンデスに帝国への書簡を預けている。帝国到着後に、謁見が行われる予定だ。そこで、皇帝に到着の挨拶をする。装飾品なども、そこで渡す予定だ」
到着の挨拶などは、ヘルナンデス様が対応する。
この辺りは、偉い人にお任せだ。
「到着後に、歓迎の夜会などが行われる。会談なども行われるが、ケンとクリスも参加だ」
クリス、陛下の話を聞いてあからさまに嫌そうにしないの。
表面上はほんの僅かな表情の変化だけど、僕やスラちゃんには直ぐに分かるよ。
「担当者が側にいる予定だが、ある程度自分の身は自分で守るように。スラちゃん達もいるが、何が起こるか分からないからな」
スラちゃん達は、護衛は任せてとふるふると震えた。
見た目はただのスライムだけど、スラちゃん達は本当に強い。
勿論、僕達も十分に気を付けよう。
その後も事務的な話をし、いよいよ辺境伯領へ出発する時間となった。
「では、行って参ります」
「うむ、気をつけるように」
僕達は、陛下に見送られながら応接室を後にした。
王城から軍の施設へと移動し、魔導船のところへと向かった。
魔導船は最新式で、小型だけど速度が向上しているという。
既に整備は完了し、いつでも出発可能だ。
「ヘルナンデス様、いつでも出航可能です」
「うむ。では、直ぐに出発する」
「はっ」
ヘルナンデス様は、出迎えの兵に短く指示を出した。
僕達は、そのまま搭乗口から船内へと入った。
「わあ、待機室も少し変わっていますね。椅子なども、座り心地が良くなっています」
「ケン君はさっそく気が付いたか。居住性も良くなるようにと、色々手を加えた。勿論操縦性の向上にも腐心している」
ルーカス様が色々と教えてくれたが、魔導具の改良は日々凄いスピードだ。
僕が初めて乗った魔導船も凄かったけど、その頃と比較すると何もかもが雲泥の差だ。
更に、今までに無かったシートベルトみたいなものまでついていた。
出発の際の対応も、色々と向上しているぞ。
「間もなく出発します。椅子に座り、ベルトを締めて下さい」
船内アナウンスも、今までと少し変わった。
勿論、僕達も椅子に座ってベルトを締めた。
そして、ゆっくりと魔導船は浮上した。
さあ、辺境伯領へ一直線だ。
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