第二百四十七話 オオクズ子爵領へ突撃!
翌朝、僕とクリスは身支度を整えて馬車に乗って軍の施設へと向かった。
朝が早いためかトラちゃんはだいぶ眠そうにしており、いつもは外を元気よく走るのに今日は馬車の中に入って甘えていた。
「やっぱり、トラちゃんは大きい猫みたいだね」
「グルグル……」
トラちゃんは、クリスの膝の上に顎を乗せて半分寝ていた。
これでは、流石に外を走るのは難しそうだ。
なお、僕達と同行しないちびスライム達はうちの馬に乗って後で軍の施設へと向かうという。
「おっ、来たな」
「待っていたぞ」
軍の施設に到着すると、ヘルナンデス様とエレンお祖父様が僕達を出迎えてくれた。
すると、トラちゃんは眠そうな様子でエレンお祖父様の足に顔をスリスリとしていた。
「グルグル……」
「まだ、眠そうだな。馬車の中で寝かせてやるか」
「ピィ」
エレンお祖父様も、苦笑しながらトラちゃんの頭を撫でていた。
エレンお祖父様の護衛についているアルファちゃんも、こればかりは仕方ないとひと鳴きした。
しかし、一緒に行く兵の数が多い気がする。
その理由は、ヘルナンデス様が教えてくれた。
「どうも、オオクズ子爵は私兵をだいぶ囲っているようだ。領兵は問題ないが、私兵はゴロツキが多いというスラちゃんからの報告だ」
何でゴロツキの私兵が多いのかは不明だが、そこはオオクズ子爵から聞けば分かりそうだ。
更に、ヘルナンデス様はこんなことも説明した。
「オオクズ子爵家には、まだ生後半年の赤子がいる。赤子を人質に取られないように、スラちゃんには別で指示を出している」
今までの相手が碌なことをしていないので、赤ちゃんを人質に取ることは躊躇しないでしょう。
本当に面倒くさい相手だ。
「なお、本件を乗り切れば、延期になった謁見を来週行う予定だ。そういう意味でも、今日は踏ん張りどころだぞ」
「「「はい」」」
シェイク子爵領の災害復旧だけでなく、今回の事件に関することも謁見では言及するという。
部隊もゴードン様が率い、準備が完了した模様だ。
ということで、僕達も馬車に乗って早速出発だ。
なお、トラちゃんはまだ眠そうにしながら馬車に乗り込んだのだった。
「そうそう、ケンとクリスも私兵をなるべく殺さないように。奴らから得られる情報も重要だ」
「分かりました。今回は木剣で相手をします」
ヘルナンデス様の方針に、クリスは自信満々に頷いた。
クリス、木剣でも魔法剣を発動できるのだから程々にしておくように。
僕も、木剣か雷魔法をメインに戦おう。
エレンお祖父様の肩に乗っているアルファちゃんも、頑張るぞと張り切っていた。
こうして、普通の馬車なら一時間かかるところ、軍勢は四十分でオオクズ子爵領へと到着した。
「皆様、本日はどのような御用でしょうか」
防壁の門で、領兵の上役っぽいものがヘルナンデス様に問いかけた。
というか、この領兵の上役は僕達がどんな用事でオオクズ子爵領にやってきたのか分かっている気がするけど。
「恐れ多くも、国王陛下の命によりオオクズ子爵領へ強制捜査に来た」
「畏まりました。屋敷までご案内します」
やはりというか、この領兵達はかなりまともな人たちなんだ。
そうなると、オオクズ子爵の側にいる私兵が問題になりそうだ。
ここは、僕も気を引き締めないとならない。
しかし、オオクズ子爵家の屋敷に到着すると、とんでもない光景が待っていたのだ。
ザッ、ザッ。
「おっ、来たな」
「へへ、叩き潰してやろうぜ」
何と、屋敷の庭に百人近くのゴロツキ私兵が待ち受けていたのです。
予想以上の人数だぞ。
「ははは、これはヘルナンデス様ではないでしょうか。わざわざ我が領に来て頂き、感謝するぞ」
更に、どう見てもオオクズ子爵と思わしき横に大きい中年男性が、タバコを手にしながらニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべていた。
幾ら兵が多いとはいえ、私兵で全て倒せると思っているのだろう。
「あー、一応通告する。陛下よりオオクズ子爵へ強制捜査の命令が出された。抵抗しないのなら、手荒な事はしない」
「これはこれは、大変お疲れ様です。ふふ、ならば私を取り押さえれば良いのですよ。ご自慢の国軍でね」
うん、オオクズ子爵は駄目だ。
自分よりも遥かに格上のヘルナンデス様を、思いっきり馬鹿にしている。
自分の方が立場が上だと思っているのか、はたまたゴロツキ私兵を倒せないのかと思っているみたいだ。
「ヘルナンデス様、僕も木剣を使います。ちょっと、ストレス発散をしたいです」
「奇遇だな、私も同じ事を思っていたぞ」
クリスは既に木剣を手にしており、僕もヘルナンデス様も木剣を手にした。
エレンお祖父様も木剣を手にしており、アルファちゃんとトラちゃんも、いつでも行ける準備を整えていた。
勿論、兵も臨戦態勢だ。
「門番よ、門を開けてやれ。お客様を招いてやるのだ」
「「はっ」」
ガチャ、ギギギギ。
門は、重厚な音を立てながらゆっくりと開いていった。
どうやら、門番はまともな人みたいだ。
そして、僕達はゆっくりと敷地内に入っていった。
「「「「「へへへ……」」」」」
ゴロツキ私兵は、ニタニタしながら真剣を抜いた。
それでも、僕達はゆっくりと歩みを進めた。
「では、作戦開始」
「「はい」」
ヘルナンデス様は、ゆっくりと木剣を振り下ろした。
僕とクリスも、短く返事をした。
シュッ、バキンバキン!
「がっ……」
「ごふっ……」
「「「「「なっ!?」」」」」
刹那、僕とクリスは身体能力強化魔法を使い一気にゴロツキ私兵を倒し始めた。
どうやら、ゴロツキ私兵は僕とクリスが目の前から消えた様に見えるらしい。
突然仲間が倒れていき、大パニックに陥った。
その間にも、僕とクリスはドンドンとゴロツキ私兵を倒していく。
「全軍突撃開始!」
「「「「「はっ」」」」」
ゴロツキ私兵が混乱したところに、軍の兵が一気に突っ込んでいった。
こうなれば、ゴロツキ私兵はどうしようもない。
僅か数分で、ゴロツキ私兵は全て倒された。
「何だ、随分と呆気ないな。もうこれで終わりか?」
「ぐっ、くそー!」
今度は、ヘルナンデス様がニヤニヤとしていた。
対して、オオクズ子爵は完全に予想外だと叫んでいますね。
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