第二百三十話 シェイク子爵領へ復旧作業で向かうことに
「場所は、魔導船で一日かかる場所にあるシェイク子爵領だ。山岳地帯にあり、鉱業が盛んな地域だ。だが、山地という性質上土砂崩れが発生しやすい。そして、たまたまだが昨日大雨があり、土砂崩れに加えて主要街道の道も影響を受けた。幸いにして死者はいないが、一領地で復旧するには無理があるという判断が下された。鉱石の産出が止まれば、王都のみならず王国の工業全体に影響が出る」
陛下が説明した内容に、僕はかなりビックリしてしまった。
何でも、シェイク子爵領は王国の中でも有数規模の鉱山を所有しているという。
既に仮復旧に向けて近隣駐留の軍の部隊が動いているが、それでは足らないだろう。
「しかも、鉱山の中に取り残された坑夫もいるそうだ。食料はあるらしいが、長くは持たないだろう。人命救助も兼ねて、ケンと軍の部隊を魔導船で派遣する」
「はい!」
正式にシェイク子爵領から救援依頼が来たので、国としても堂々と動けるという。
でも、チビスライムたち全てを連れていくわけにはいかない。
現在臨時監査の真っ最中で、チビスライム達も手分けして手伝っていた。
そこで、こういう布陣で行く事に。
スラちゃん、アクアちゃん、リーフちゃん、シロちゃん、そしてカレーちゃんとピーちゃんが僕と一緒に行く事になった。
カレーちゃんは土魔法が得意だし、ピーちゃんが上空から動けば土砂崩れ現場を確認できるはずだ。
「この後、準備が整い次第魔導船に乗って出発する。今夜は途中の町にある軍事基地で一泊し、翌日の日中に現地に到着する予定だ。ケンも、業務を切り上げて準備をするように」
「あと、ミュウに言ってサンダーホークをもう何羽か貸し出して貰う。本人には話をしており、既に準備をしている」
陛下とアーサー様は、既に各所に指示を出していた。
僕も、スラちゃん達と共に一旦屋敷に戻ることになった。
すると、この人の姿が屋敷にあったのだ。
「あれ? クリスもシェイク子爵領に向かうの?」
「私なら、スラちゃん達とも話ができるってね。あと、現地の軍事基地に出向経験もあるからって、お兄様も一緒に行くことになったわ」
まさか、こんなところで各地に出向していたナッシュさんの経験が生きるとは思わなかった。
でも、今の僕達にとってはとても心強い援軍だ。
「じゃあ、行ってくるね」
「「「いってらっしゃーい!」」」
こうして手際よく荷物を纏め、僕とクリス達は軍の施設へ向かう馬車に乗り込んだ。
アイちゃん達には急に出張が決まったと話したが、多分間違ってはない。
数日間屋敷を空けるのだから、時間が空いたらみんなの分のお土産を買ってこないと。
「ハンナおばさん、みんなを宜しくお願いします」
「ケン様とクリス様も、無事の帰りをお祈りいたします」
見送りに来たハンナおばさんにアイちゃん達の事をお願いし、僕達を乗せた馬車は出発した。
そして、程なくして軍の施設へと到着した。
「おっ、来たな。こっちだ」
軍の施設に到着すると、準備万端なナッシュさんが僕達を出迎えてくれた。
だが、僕達はナッシュさんの足元にいたものの方が気になった。
「「「ピィ!」」」
「グルル」
何故か、一頭のフォレストタイガーが三羽のサンダーホークを背中に乗せながら寝そべっていたのだ。
多分ミュウさんの屋敷にいるフォレストタイガーだと思うが、念の為に聞いてみよう。
「ケンの言う通り、こいつはミュウの屋敷にいるフォレストタイガーだ。今回向うシェイク子爵領は山がちな土地だが、フォレストタイガーなら山地でも岩場でも森の中でも関係なく進んで行くぞ」
「ガウッ」
おお、フォレストタイガーがナッシュさんの話を聞くや任せろとひと鳴きしたよ。
確かに、こういう非常事態だと機動力が物を言うはずだ。
更にナッシュさんの部下も同行することになり、魔導船の中で話をする事になった。
救援物資は、僕の魔法袋やスラちゃん達のアイテムボックスに収納した。
魔導船の魔石も魔力満タンだし、何かあったら僕達が魔力を補填すればいい。
魔導船も、もう間もなく出発準備が整う。
「しかし、遂に貴族当主ではなく上級官僚として命令が下るようになったのか。月日が経つのは早いな」
ルーカス様が僕達の見送りに来てくれたが、別の意味で感慨深そうにしていた。
そういえば、地震の被害を受けた直轄領へと向かった時は、陛下は貴族当主として僕に命令していたっけ。
僕も成人したし、普通に陛下とアーサー様の部下として働いている。
そういう意味では、陛下も僕に命令しやすくなったのかもしれない。
「ルーカス様、出発の準備が完了しました」
ここで、ナッシュさんがルーカス様に魔導船を含む部隊準備完了を報告した。
僕達も、ルーカス様の前に並び直した。
「今回の救出作戦は、鉱山の復旧を伴うとても重要なものだ。厳しい作戦になるかと思うが、諸君らの活躍により民の生活が戻る事を祈る」
「「「「「はっ」」」」」
「ガウッ」
「「「「ピィ」」」」
ルーカス様の訓示に、僕達だけでなくフォレストタイガーとサンダーホークもビシッと敬礼した。
そして、僕達は足早に魔導船に乗り込んだ。
「間もなく、本船は出発します。皆さん、席に着くか手すりを握って下さい」
「グルル......」
ふわっ魔導船が浮かび上がる感覚に、フォレストタイガーが伏せの状態で少しビビっていた。
普通に生活していれば感じる事のない感覚だから、こればかりは仕方ないね。
さあ、シェイク子爵領へ出発です。
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