第二百二十八話 授業開始です
カーン、カーン。
「はい、それでは皆さん席に着いて下さい。これから、ホームルームを始めます」
「「「「「はい!」」」」」
時間を知らせる鐘がなり、ミッシェル先生が学園生に声をかけた。
学園生も、全員揃っていますね。
スラちゃんも、黒板に書いた内容を黒板消しで綺麗に消していた。
「それでは、全員揃っていますが出席確認の為に名前を呼びます。これからは、毎日出席確認をしますので元気よく返事をしましょう」
「「「「「はい」」」」」
「それでは、早速名前を呼びますね……」
ミッシェル先生が学園生の名前を呼んでいるが、実はこれは僕が前世の学校を参考に提案した。
前世では返事をするのは当たり前なのだが、実は貴族の中にはキチンと返事をしない人がいるという。
自分が偉いと思っている影響らしく、アーサー様も是非導入しようと言っていた。
やはり、挨拶は何においても基本です。
「はい、皆さん全員揃っていますね。本日から早速授業が行われますが、どんな事をやるのかというオリエンテーションが中心となります。本格的に授業が始まるのは来週以降ですが、重要な話などもあるかと思いますのでキチンと話を聴きましょう」
「「「「「はい!」」」」」
ミッシェル先生が注意をし、ホームルームは終了した。
休憩時間になるが、その間に僕は説明する事をもう一度復習する。
すると、数人の学園生が僕に話しかけてきた。
「【蒼の治癒師】様でも、予習復習はするんですね」
「僕は、皆さんよりも一つ上なだけですから。成人したばかりですし、常に勉強しないと駄目なんです。仕事でも、どんどんと新しい事を覚えていきますよ。その辺も、合わせて話をしますね」
「うん、やっぱりケン先生は凄いや。一つ年上とは思えないくらい、凄く落ち着いています」
話しかけてきた学園生だけでなく、ミッシェル先生も物凄く納得していた。
うん、その辺りの話もしないといけませんね。
カーン、カーン。
ということで、さっそくみんなに話をしないと。
僕は、スラちゃんと共に教卓の所へと移動した。
全員が僕に期待の込めた視線を送っているが、ここは集中しないと。
「皆さん、改めましておはようございます。ケン・アスターです。若輩者ですが、教師に任ぜられました。皆さんと共に成長していきたいと思います。どうぞ、宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いします」」」」」
僕がペコリと頭を下げると、学園生もペコリと頭を下げた。
さてさて、ここからが本番だ。
「私の授業では、単に上級官僚試験の内容を解説するだけではありません。知識を得るということはとても大切ですが、知識だけでは仕事はできません。判断力や決断力、コミュニケーション能力など多岐に渡ります。時々校外授業を行って、その道のスペシャリストから話を聞くこともします。色々な手を使ってでも、皆さんを少しでも大きくしていきたいと思います」
「「「「「はい!」」」」」
僕が授業の方針を伝えると、学園生は少し期待の込めた目で僕を見たのです。
やっぱり、勉強は苦しんでやるものではないもんね。
「私は六歳で親に物資として国に送られて戦場に立ち、そして多くの命が奪われたのを目の当たりにしました。目の前の命を一つでも救いたいと頑張ったのですが、それでも救えなかった命は沢山ありました。また、スラム街での奉仕活動では何も知らない子ども達が悪人に利用される現実を目の当たりにしました」
「「「「「先生……」」」」」
僕の今までの経験を話すと、学園生は思わず息を飲んだ。
小さな子どもに話すには早いけど、目の前にいるのは来年から王城や各所で働く人達だ。
だからこそ、少しでも現実を知って欲しい。
「どんなに声高に良いことを言っても、自分に都合が悪ければ聞くことはありません。悪人なら特にです。だからこそ、皆さんの様に若く才能溢れる人達に国をより良くするにはどうすれば良いかを考えてもらいたいのです。勿論、僕も皆さんに負けじと頑張ります」
「「「「「はい!」」」」」
学園生だけでなく、ミッシェル先生もとても満足して頷いていた。
こうして始まった僕のオリエンテーションは続き、無事に終了の時間を迎えたのだった。
「それでは、今日の授業はこれで終わりにします。来週、また会いましょう」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
何とか今日の授業を終え、学園生は自然と礼を言った。
一時間前と比べ、少し成長したようにも思えた。
さてさて、次はクリスの行う剣技訓練だ。
僕も気になるから、少し様子を見に行こう。
僕とスラちゃんとミッシェル先生は、一旦職員室に戻ってから訓練場が整備された庭に移動した。
すると、軍服を身に纏ったクリス、それにシロちゃんとピーちゃんの姿があった。
「ケン、ちょっといいかな?」
すると、クリスは僕の側に来て耳打ちをした。
僕は、クリスの話を聞きコクリと頷いた。
クリスも、学園生を教える為に色々考えていたんだ。
そして、今日は実際に訓練を行わないとあってか、先程と同じ服装の学園生が集まってきた。
学園生と共にミッシェル先生やイアン先生達もやってきたが、特に気にしなくてもいいかも。
「では、剣技の講習を担当しますクリス・アスターです。授業によっては軍から応援が来る時もありますが、基本的に私が指導します」
「「「「「宜しくお願いします」」」」」
クリスがニコリとしながら挨拶をし、シロちゃんとピーちゃんもフリフリと挨拶をした。
そして、クリスは学園生にこんな質問をした。
「皆さん、『力』とは何でしょうか? ここでいう力とは、単にケンの魔法や私の剣技の事ではありませんよ」
「「「「「えっ……」」」」」
学園生は、クリスの質問を聞き少し困惑した表情に変わった。
確かに、単純な力といえば魔法や剣の力だ。
でも、クリスの質問はもう少し深い所にある。
どうやら、イアン様はクリスの質問の意図に気がついたみたいだ。
「私は、自分自身を、周りの人を、そして弱い者を守る事こそが『力』だと思っています。手段は武力であれ、統治力であれ様々あります。だからこそ、最初に純粋な力を除外しました」
「「「「「あっ……」」」」」
察しの良い学園生も、直ぐにクリスの言わんとする事が分かったみたいだ。
クリスは、そのまま話を続けた。
「他人を意図的に傷つける事は、あってはならないと思っています。中には、生きていくために仕方なく犯罪を犯す人もいるでしょう。その様な人に手を差し伸べるのも、一種の力だと思います。しかしながら、人には純粋な力を手にした事により気が大きくなり周りを傷つける者もいます」
クリスの話を聞き、学園生は再び色々と考えていた。
考えるという事はとても大事だし、正解がないからこそ考える必要があった。
「私が初めて人を切ったのは、帝国との戦いの最中に重要作戦を行なっていたケンを攻撃した反逆兵でした。周囲の状況、目の前で起きている状況を判断すれば、誰を守らなければならないか必然と分かるはずです。皆さんも、ただ力を持つだけでなく、どうすれば大切な人を守れるかということも考えていきましょう」
「「「「「はい!」」」」」
僕の兄が僕を襲った事実は、知っている人は知っている。
恐らく、ブラッドリーさんも知っているだろう。
それでも、クリスはあの事を引き合いに出したんだ。
学園生も、力というものを考える良いきっかけになったはずだ。
その後もクリスの授業は進み、集まった多くの教師もとても納得していた。
「やはり、二人が教師でとても良かった」
イアン様も、クリスの話を聞き深く頷いていた。
こうして、クリスの授業も無事に終える事ができた。
きっと、学園生にとってもとてもタメになったはずだ。
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