第二百十四話 結婚式本番です
ガチャ。
「ケン様、そろそろお時間となります」
控室に入ってきたシスターさんに話しかけられ、僕は思わずビクッとしてしまった。
それと共に、ドキドキしてかなり緊張してきた。
僕は、頬を軽く叩いて気持ちを引き締めた。
そして、控室を後にして僕が入る扉の前に移動した。
すると、先客が僕に声をかけた。
「あっ、ケンだ」
「「「「「「「ほんとーだ!」」」」」」」
「「ウォン!」」
「ピィ!」
純白のウェデングドレス姿のクリスに加えて、ちびっ子達がスラちゃん達と一緒にいた。
ユキちゃん、シルバ、ピーちゃんも一緒におり、それぞれが僕に声をかけた。
ちびっ子達が手にしている籠は、今はスルーした方がいいだろう。
クリスのウェディングドレス姿は試着の際に何度も見たが、今日はロングヘアの髪の毛も綺麗に編み込まれていた。
髪型が変わるだけで、いつもの印象とだいぶ違った。
そして、僕はここにいないといけない人がいないことに気がついた。
「クリス、ビーズリーさんは?」
「緊張して、トイレに行ったわ。お父様が、まさかここまでボロボロだとは思わなかったわ」
クリスも付き添いのシスターさんも、思わず苦笑していた。
でも、さっきまで号泣していたビーズリーさんよりかはいいかもしれない。
「すまん、待たせた」
「全くもう……」
程なくして、ビーズリーさんはお手洗いから戻ってきた。
クリスも、父親のちょっと間抜けな姿に再び苦笑していた。
そして、クリスはしょうがないなとビーズリーさんの服を整えていた。
「それでは、新郎の入場です。拍手で迎えて下さい」
あっ、遂に僕の番がきた。
僕は、急いで扉の前に移動し深呼吸をした。
すると、大教会のドアがゆっくりと開き、来賓が僕に向けて大きな拍手をしていた。
「「「「「わー! ぱちぱちー」」」」」
僕の横で、ちびっ子達やクリスも拍手をしていた。
僕は、ペコリと一礼してからゆっくりと赤い絨毯を歩き始めた。
「わあ、とってもカッコいい!」
「ははは、緊張しているな」
「緊張して、ヘマするなよ!」
知り合いから様々な声がかけられたが、男性が多い分若干冷やかす内容が多いような。
でも、今の僕には緊張で周囲を気にする余裕はなかった。
エレンお祖父様もフリージアお祖母様も、ハンカチで目尻に浮かんだ涙を押さえていた。
王太后様もニコリとしているが、同じく目尻に涙を浮かべていた。
そして、ニコニコとしているサイオン枢機卿様の前に到着した。
ふう、もう一回深呼吸をして気持ち……
「それでは、これより新婦の入場です。大きな拍手で出迎えて下さい」
物凄く微妙なタイミングで、司会のアナウンスがあった。
僕は急いで気持ちを整え、クリスが入ってくる扉を見るために振り返った。
ゆっくりと扉が開くと、最初に入ってきたのは元気の良いちびっ子達とスラちゃん達だった。
「「「「「わーい!」」」」」
ちびっ子達は、籠の中に入っている白い花びらを元気よく宙に放っていた。
スラちゃんとリーフちゃんが風魔法で花びらが良い感じに舞うように調整しており、中々幻想的な雰囲気だった。
ユキちゃんとシルバもちびっ子達と一緒に入場しており、来賓も微笑ましい光景に思わず笑みが溢れていた。
ルーカス様の結婚式をアレンジした内容で、更に結婚式を盛り上げてくれた。
ちびっ子達に続いて、父親のビーズリーさんと腕を組む新婦のクリスが一礼して入場してきた。
綺麗な純白のウェディングドレス姿のクリスに、多くの人から感嘆の声が上がった。
クリスは普段から剣の訓練を重ねているので、スタイルも抜群だ。
「うぅ、うぅ……」
そんなクリスを差し置いて、来賓の注目を集めていたのは嗚咽が止まらないビーズリーさんだった。
一回僕が鎮静魔法で落ち着いたかと思ったら、再び号泣が止まらなくなったみたいだ。
クリスも父親の号泣する姿に、ちょっと苦笑気味だ。
「あの、ビーズリーさん、クリスは幸せにしますから……」
「うっぐ、うぐ……」
僕がクリスを受け取る為に向かうと、ビーズリーさんは嗚咽しながら僕とギュッと握手をした。
そっと鎮静化の魔法をかけたが、残念ながらビーズリーさんに効果はなかった。
そして、僕はクリスの手を取って祭壇へと向かった。
「「「「「頑張ったよー!」」」」」
「ええ、良い演出だったわ」
「うぅ……」
その間に、ちびっ子達とビーズリーさんは自席へと移動した。
ニコリとしている王妃様に褒められ、ちびっ子達はご満悦な表情だ。
ビーズリーさんは、その、ケーラさんもナッシュさんもお手上げ状態だ。
「これより、新たな夫婦が誕生する事を神に報告する」
サイオン枢機卿様の厳かな声に、僕とクリスだけでなく来賓も姿勢を正した。
サイオン枢機卿様は、一呼吸置いてから再び話し始めた。
「それでは、汝ケン・アスターはクリス・ダイナーを妻とし、終生愛する事を誓うか」
「誓います」
「汝クリス・ダイナーは、ケン・アスターを夫とし、終生愛する事を誓うか」
「誓います」
「それでは、指輪の交換を行うように」
サイオン枢機卿様に夫婦の宣誓を行い、僕はクリスの指に、クリスは僕の指に結婚指輪をはめた。
そして、僕とクリスはサイオン枢機卿様に向き直った。
「それでは、神の前で誓いの口付けを」
「「はい」」
僕とクリスは再び向き合い、僕はクリスのヴェールを後頭部へと流した。
そして、お互い一瞬見つめあってから軽く口付けをした。
よく考えると、これがお互いのファーストキスだった。
「おお、ここに新しい夫婦が誕生した。大きな拍手で祝福を授けるように」
「「「「「わー!」」」」」
僕とクリスは、ちょっと照れながら来賓に一礼した。
ちびっ子達は満面の笑みで拍手をし、号泣しているビーズリーさんも一生懸命拍手をしていた。
フリージアお祖母様とケーラさんも、良かったとニコリと涙目で拍手をしていた。
「ケン君、クリスちゃん、お幸せにね」
「この、美人な奥さんを貰いやがって」
来賓も、祝福を言う人や冷やかす人など様々だ。
しかし、全員が笑顔で拍手をしてくれた。
そんな中を、僕とクリスは腕を組みながらゆっくりと歩いていった。
きっと僕とクリスも笑顔なのだろうが、今は幸福感の方が強かった。
そして扉の前で振り向き、僕とクリスは再び一礼した。
ゆっくりと開いた扉を進み、再び扉がしまった。
こうして、僕とクリスは晴れて夫婦となったのだった。
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