第二百七話 ユータに慶事?
僕は、普段の業務に加えて学園の講師としての準備も行うようになった。
結婚式の準備は任せてとフリージアお祖母様とケーラさんが張り切っていたので、ありがたくお願いする事にした。
宮廷魔導師としての仕事も、軍ではなく王城に魔法兵を派遣してもらって教えていた。
クリスとチビスライム達が軍の業務の合間に頑張って魔法兵に教えてくれたので、非常に助かっていた。
そんな中、今日はいつもと違った内容の仕事をする事になった。
「サイオン枢機卿様、本日は宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いします」」」」」
「うむ、こちらこそ宜しく頼むぞ」
僕達は、早朝から大教会に集まってサイオン枢機卿様に挨拶をしていた。
実は、今年王城で働き始めた職員や官僚試験に合格してまだ間もない人を対象に、奉仕活動を兼ねて町の人から意見を聞く事になった。
町の人の生の声を聞くことにより、今後の仕事に生かす事を目的としている。
勿論、集められた意見は集計されて各部署へ届けられるが、その集計分析作業も新人職員で行う事になった。
僕もクリスも、今日は新人職員として奉仕活動に参加している。
「「「「「がんばるぞー!」」」」」
王家のちびっ子達とアイちゃん達も、治療班として奉仕活動に参加する。
やる気満々なのは良いことなのだが、キチンと護衛をつけないとならない。
そこで、チビスライムと共にこの子達が護衛につくことになった。
「「「「「グルル」」」」」
「大きいネコちゃんと、カッコいいネコちゃんなんだよ!」
「「「わあ、すごーい!」」」
ミュウさんのところのキングレオとフォレストタイガー、更にフォレストウルフも王家のちびっ子のところにやってきた。
アイちゃん達も、目の前に現れた猛獣に大興奮だ。
実は、ミュウさんも上級官僚試験に合格した者として奉仕活動に参加していた。
王太后様がちびっ子達の引率をしていたが、こちらにはミカンちゃんと王家のフォレストタイガーのユキちゃんがぴったりと護衛していた。
新兵も交代で王太后様とちびっ子達の護衛につくことになっており、貴重な実践訓練の場となっていた。
シュイン、スパパパパパ!
ジュージュー。
もう料理名人のリーフちゃんとアクアちゃんが、炊き出しの仕込みを行なっていた。
シスターさんもスライムの料理にもう慣れており、リーフちゃんとアクアちゃんにあれこれ指示をしながら会話をしていた。
時間のある貴族令嬢も手伝いに来ており、盛り付けに使う器などを準備していた。
サッ。
「ブルル」
「うおっ!? 何だなんだ?」
スラちゃんは馬に乗って犯罪者を捕まえており、別の馬に乗っているミカンちゃんにあれこれ教えていた。
付き添いで来ている軍のベテラン兵とも意見交換しており、こちらもお任せで大丈夫だろう。
「もしかしたら、批判的な話が出るかもしれません。しかし、駄目だと言う貴重な意見です。相手の意見を上手く引き出せるように、僕達も頑張りましょう」
「「「「「はい!」」」」」
意見を集める職員に、僕があれこれ指示を出していた。
そして、早速治療に並んでいる人から意見を聞き始めた。
クリスやミュウさんは町の人から意見を聞く経験があるから、少し戸惑っている新人職員にあれこれ話をしていた。
「サイオン枢機卿様、王太后様、こんな感じでいいでしょうか?」
「うむ、全く問題ない。ケン君は、幼い頃から奉仕活動を経験しているから周囲の事がよく分かっておる」
「指示も的確だわ。子ども達も新人職員も張り切っているし、これなら問題なく進むだろう」
サイオン枢機卿様と王太后様からもオッケーをもらい、ホッと胸を撫で下ろした。
僕がみんなの指揮を執っていいのかと思ったが、逆に僕じゃないとって言われた。
なので、今日は治療をせずに周囲の指揮を執っていた。
「【蒼の治癒師】様も、こうして指揮する立場になったのか」
「あの小さかった【蒼の治癒師】も、本当に大きくなったわね」
治療を終えた町の人が僕に話しかけてきたが、孫を見るような感じだった。
とてもほのぼのとした感じに、サイオン枢機卿様も王太后様も和やかに見ていた。
シュイン、ぴかー!
「え、えっと、どうですか?」
「おやまあ、膝の痛みがよくなったわ。ありがとうね」
「「おおー!」」
治療班では、アイちゃんがシロちゃんから指導を受けながら少し慎重になりながら治療を行っていた。
ケイトちゃんとリュウちゃんもアイちゃんを凄いと褒めていたし、シロちゃんもバッチリだと褒めていた。
勿論住民への聞き込みもとても順調に進み、逆に頑張れよと町の人から声を返される場面もあった。
こうして無事に奉仕活動が終わろうと来た時、何と予想外の人が大教会に姿を現したのだ。
「おう、ケンじゃねーか」
「久し振りね。こんな所で会うなんて」
「うん? あっ、ユータ!?」
僕に声をかけて来たのは、何とあのユータとスィーパーだったのだ。
予想外の展開に僕もかなり驚いたのだが、どうやら何か事情があるらしい。
「ケン、丁度いい所にいた。スィーパーを治療してやってくれ。最近、よく吐き気をもよおしてやがるんだ」
「だから、私は大丈夫だって……」
スィーパーはかなり遠慮気味だったが、目の前に病人がいるのなら治療しないといけない。
僕は、直ぐにスィーパーの治療を始めた。
シュイン、ぴかー。
あれ?
確かに胃炎も起きているけど、この反応ってもしかして……
「ユータ、念の為にスィーパーに鑑定魔法を使ってもいいですか?」
「おう、やってくれ」
「えっ、ええ?」
スィーパーはかなり慌てていたが、ユータは何故か冷静だった。
僕は、直ぐにスィーパーに鑑定魔法を使った。
僕達の周りで、多くの人が興味深そうに見守っていた。
シュイン、もわーん。
「うん、やっぱりです。まず、スィーパーの胃炎は治療で良くなりました。あと、スィーパーは妊娠しています」
「ほえ?」
スィーパーは、僕の発言を聞きキョトンとしてしまった。
対して、ユータは何となく察していた。
「ふむ、つまり赤ちゃんができて悪阻が起きていたのだな」
「そうね、新しい命を宿しているのね」
「えっ!?」
サイオン枢機卿様と王太后様の話を聞き、スィーパーはようやく状況を把握した。
ユータは、スィーパーの肩をポンポンと優しく叩いた。
そして、コクリと頷いた。
思いがけない慶事に、周囲にいた貴族令嬢も盛り上がっていた。
そんな中、王太后様はユータにある質問をした。
「ユータ、貴方は今キチンとした仕事についているの? 生まれてくる子どもを養えるのかしら」
「そこは、大丈夫だ。この前も、どこかの馬鹿工務店がやらかした後始末をしていた。当面は力仕事だな」
あっ、ユータは僕を見てニヤリとした。
どうやら、僕がキケン伯爵が起こした事件対応をしていたのを知っていたんだ。
でも、こうしてキチンと仕事をしているのならと、僕は一安心だった。
「わあ、赤ちゃんがいるんだ!」
「おかーさまみたいなんだね」
「え、ええ……」
そして、スィーパーの周りにはちびっ子達が興味深そうに集まってきた。
こうして、研修を兼ねた奉仕活動は無事に終了した。
なお、各方面に通信用魔導具で終了の連絡とスィーパーの妊娠を報告したら、ゴードン様がユータにお祝いを持っていくとの返信があったのだった。
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