第二百話 眼鏡をかけた悪魔による家宅捜索
昼食を食べ終えると、僕達は軍の施設に行くようにと命じられた。
直ぐに王城から王都内の軍の施設に向かい、そこで意外な人が僕を待っていた。
「ふふふ。あの業者、うちの屋根修理を適当にやって一層雨漏りしたのよ。急いでルーカス様の使っている業者に頼んだけど、結構な被害が出たのよ……」
不穏なオーラを放つローリー様に、僕達はある意味近づけなかった。
とはいえ、今回はローリー様の家の被害を捜索の名目にしている。
雨漏りによる家財買い替えの被害金額と、屋根の追加修理の請求書がある。
うん、これは怒ってもいい金額だ。
「私も、この貴族と業者はかなり怪しいと思っていた。追及できる良い機会だ」
ローリー様にキチンとした業者を紹介したルーカス様も、僕達と一緒についてきてくれる事になった。
なお、貴族の屋敷に偵察中のリーフちゃんとアクアちゃんはそのままで、シロちゃん、レモンちゃん、ミカンちゃんがついてきてくれる。
スラちゃんとピーちゃんは、現地で合流する。
リンゴちゃんとカレーちゃんは、僕の屋敷でちびっ子たちの面倒をみていた。
では、部隊も揃ったので早速業者の店舗に向かいましょう。
「おっ、ここが目的地ですね。業者にしては、随分と豪勢な店舗です」
「あの規模の業者にしては過剰といえよう」
馬車に乗って業者の店舗前に到着すると、目の前にはドーンと三階建ての大きな店舗がそびえ立っていた。
ルーカス様も思わず苦笑するレベルらしく、ローリー様の怒りの炎も更に燃え上がっていた。
パタパタパタ。
すると、スラちゃんを乗せたピーちゃんが僕達の所にやってきた。
どうやら何か分かったらしく、スラちゃんは自分が持っている通信用魔導具であれこれ教えてくれた。
「なになに、『この業者は、ワザと少ない材料で作業していた。更に、屋根を意図的に壊して追加修理などをしたり、高額請求をしている。得たお金は、問題の貴族に流れている』。コイツら、ただの悪徳業者じゃないのか」
ルーカス様は、通信用魔導具の文面を見てかなり頭が痛そうだった。
業者というか、マフィアみたいなやり方をしているんだ。
因みに、ローリー様の家の屋根にも人為的に壊した箇所があったらしい。
早速周囲に軍の兵を配置して逃げられないようにし、僕達は店舗の中に入った。
「らっしゃー……えっ?」
店頭にいたやる気のなさそうな店員は、僕達を見るなり固まってしまった。
そして、即座にマズイと思ったみたいだ。
「お、親分、親分来てくれー! 大変だー!」
店員は、血相を変えて店の奥に向かって大声を出した。
せっかくだから、その親分って人にも話を聞きましょう。
すると、これまたやる気のなさそうな頬に傷がある大男が僕達の前にやってきた。
「うっせーな、いったい何が……」
親分と言われた男は、僕達というかルーカス様とローリー様の顔を見るなりやべーって表情に変わった。
うん、この時点で人に言えない事をしていたと言っているようなものだ。
「ジル工務店だな。宮廷魔導師ローリー家の不正施工及び器物損壊、並びにキケン伯爵家への資金流入の件で強制捜査を行う」
「「げっ!?」」
実は、店頭で話を聞く予定だったが、ついさっき陛下より強制捜査の指示が下った。
スラちゃんの通信魔導具の連絡先には陛下とアーサー様も含まれており、即座に判断された。
店員と親分は驚きの表情だったが、直ぐに残念な行動に移った。
「やろーども、コイツラをやっちまえ!」
「「「「「おう!」」」」」
親分は、如何にもゴロツキと思わせる風貌の男を店内から呼び寄せた。
数で勝負すれば勝てると思ったのかもしれないが、残念ながらこちらには怒れる宮廷魔導師がいた。
シュイン、ブオン!
「よくも、我が家の屋根を壊したわね!」
バキン、ボカン!
「「「「「うぎゃー!」」」」」
ローリー様が素手でゴロツキ店員をぶん殴っていき、次々とノックアウトしていった。
身体能力強化魔法を使っているので、ゴロツキ程度では相手にならなかった。
「おい、書類を……」
「あっ、もう書類などは押さえてありますよ。キチンと、ルーカス様が強制執行の宣言をしてから動いていますので」
「はあ!?」
スラちゃん達にかかれば、あっという間に書類などの証拠品を押さえられる。
僕も、こっそりと受付にある書類などを回収していた。
すると、親分は最後の悪あがきに出たのだ。
すっ、シャキン。
「ぐっ、くそー!」
親分は、胸元からナイフを取り出して僕を目掛けて突っ込んできた。
とはいえ、僕も何も準備をしていない訳では無い。
身体能力強化魔法を使って、迎撃……
「とりゃー!」
「ぐはー!」
ビューン。
「えっ、ごふあ!」
ドサッ。
あっ、ローリー様が投げ飛ばしたゴロツキ店員が、僕を襲おうとした親分に直撃した。
予想外の方向からの直撃だった為、親分はそのままノックアウトされていた。
うう、折角迎撃の準備をしていたのに……
「取り敢えず、我々は証拠品の回収に専念しよう。この勢いだと、歯向かってきた店員は全てローリーが倒すだろう。拘束は、兵に任せればよい」
ルーカス様も、この状況に思わず苦笑していた。
結局、歯向かってきた店員は全て怒れるローリー様に撃退された。
その間、僕とルーカス様はスラちゃん達と共にせっせと証拠品を集めた。
そして、三階にある親分の部屋で決定的な証拠品を見つけた。
「これは、ジル工務店からキケン伯爵家への資金送金の履歴だ。しかも、キケン伯爵からの指示書もある。これだけあれば、キケン伯爵家への強制捜査を行うことができる」
ルーカス様は、ポチポチと通信用魔導具を操作した。
そして、これまた即座にキケン伯爵家への強制捜査が決まった。
ジル工務店はこのまま兵によって現場保存される事となり、僕達は別の部隊と共にキケン伯爵家へと向かう事になった。
「ローリー、ひと息ついたか? そろそろ、本命の所へ行くぞ」
「ええ、暴れたらだいぶスッキリとしました。お恥ずかしいところをお見せしましたわ」
ローリー様は、かなり良い笑顔でルーカス様に返事をした。
あれだけ大暴れしたのに、店内に傷一つない所はある意味流石だと思った。
因みに、ローリー様が殴り飛ばしたゴロツキ店員は、拘束された後シロちゃんとレモンちゃんの治療を受けた。
骨折などを負った者はいたが、全員命があって何よりだった。
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