第百六十一話 まさかの赤ちゃんの名前と兄の獄死
ドタバタの出産劇から、一週間が経過した。
シーリアさんの赤ちゃんはスーザンちゃんと名付けられたのだが、メアリーさんの赤ちゃんはなんとイリスと名付けられた。
この話を聞いた時、僕だけでなくクリスもかなり驚いていた。
「ケン君のお母様はまさに聖女だと、幼い頃から私は思っているのです。その名前を頂けるのは、とても光栄な事だと思っておりますわ」
「あうー」
赤ちゃんと側にいるスラちゃんの様子を見に来た際に、メアリーさんがニコリとしながら話していた。
因みに事前にエレンお祖父様にも話が言っており、周囲に話をしても問題ないと許可を貰っていた。
僕も問題ないと思っているし、大丈夫だと思った。
「シーリアさんは、先ほど赤ちゃんと一緒に屋敷に戻ったんですね」
「陛下はもう少し王城で様子を見ても良いと言っておられたのですが、私たちに気を使われた様です」
赤ちゃんが生まれたてというのもあり、シーリアさんは一週間王城で過ごしていた。
スラちゃん達も一緒にいたので健康面は全く問題なく、今もシロちゃんとアクアちゃんがシーリアさんについていった。
一ヶ月は、健康と贈り物チェックをスラちゃん達みんなでやる予定だ。
「でも、女の子が生まれたと周知したのに男の子向けの贈り物を用意していた人がいましたね。あとは、またまた訳の分からない贈り物もありました」
「今回は、中身も全部調べると通知しているわ。お祝いしてくれるのは嬉しいけど、もう少し考えて欲しいものもありますわね」
「ぶー」
メアリーさんは、赤ちゃんをあやしながらチョット苦笑していた。
予想通り、貴族や豪商からの出産祝いの攻勢が凄かった。
殆どの贈り物は問題ないのだが、中には何でこれをって贈り物を持ってきた者がいた。
男の子が生まれると予想してプレゼントを用意していた者もいたが、またまた訳の分からない剥製を贈ってきた貴族もいた。
流石に口酸っぱく注意したのもあり、盗聴魔導具などを仕込んだ物を贈ってくる貴族はいなかった。
それでも、スラちゃんたちが念入りに贈り物をチェックしていた。
僕たちは、前回と同じく赤ちゃんのお世話セットを贈っていた。
ガチャ。
「「イリスちゃーん!」」
「あうー」
「ガウッ」
すると、ここで王家のちびっ子三人がニコニコしながら育児部屋に入ってきた。
どうやら、クリスとピーちゃんも一緒だから絵本を読む勉強は終わったみたいだ。
そして、ちびっ子たちと一緒に真っ白な狼が部屋に入ってきた。
ミュウさんの所にいる魔物を一匹王家に贈ることになっており、この度めでたく雌のフォレストウルフがやってきた。
ユキちゃんと名付けられたフォレストウルフは、元々王家のちびっ子たちと仲良く、イリスちゃんにも直ぐに懐いた。
今も、ユキちゃんは直ぐにメアリーさんにすり寄って赤ちゃんを興味深そうに眺めていた。
「クリス、ピーちゃん、先生役お疲れ様」
「そんなに大変じゃなかったわ。みんな、赤ちゃんに会いたいと真剣に絵本を読んでいたわ」
「ピィ」
幼いながら、妹に会いたいパワーは凄かったみたいだ。
言葉を覚える勉強も始めており、勉強が進むのはとても良いことだった。
当面は、僕たちが先生役として王家のちびっ子に勉強を教える事にした。
「ケン君の提案した言葉カードは、早速実用化する事にしたわ。文字を覚えるのに、とってもいいわね」
実は、カルタみたいなものをメアリーさんや王妃様に提案していた。
試しに作ってみたら王家のちびっ子たちが楽しいと言ってくれたので、専門家に色々お願いする事にした。
勿論、お金は孤児院対策などに使ってもらう事にした。
「絵を描く勉強とかも、とても良いと思うわ。色々な事を考えるイリスさんの血を、レオ君は継いでいると実感したわ」
「あぶー」
メアリーさんは、集まってきたちびっ子達に囲まれながらニコリとしながら話していた。
こうして和やかな雰囲気でいたのだが、この人の登場で雰囲気が変わった。
ガチャ。
「ケン君、ここにいたのか。悪いが、話があるから来てくれ」
ルーカス様が育児部屋に入って来て、僕に声をかけたのだ。
何だろうなと思って、僕はルーカス様の後をついて育児部屋を出た。
小さな会議室に着くと、この人も僕たちをまっていた。
「あっ、エレンお祖父様」
「おお、ケン君か」
仕事中のエレンお祖父様までいたので、僕はますますはてな状態だった。
しかし、席についてルーカス様からの話を聞いた途端、僕とエレンお祖父様がこの場に呼ばれた理由が直ぐに分かった。
「二人とも忙しいところすまない。簡潔に話をしよう。強制労働刑になっていたベンスが獄死した」
何と、あの強制労働刑になっていた兄が死んだという。
刑に服して、あっという間に亡くなってしまった。
エレンお祖父様は、ある程度予想できた結果だったという表情だった。
「ベンスは、自分が刑につくはずがないと大暴れしていた。だから、刑務官や周りの者から厳しい指導が入ったという。だが、それでもベンスの考えは変わることは無かった。そのために、ベンスは同じ受刑者からかなりのかわいがりを受けたみたいだ」
ルーカス様は、言葉に気をつけながら話をしてくれた。
まあ、そういう事なのだろう。
「ある意味自業自得と言えましょう。最期まで、自分が偉いと思っていた結果です」
「そうか、分かった。ベンスの遺髪は、ギャイン騎士爵家の墓に入れるように手配する」
「わざわざお手続き頂き、本当にありがとうございます」
エレンお祖父様が代表して対応し、僕も頷いた。
これで父親と兄が死んで、名実ともにギャイン騎士爵家は滅亡した事になった。
僕や母親を虐待し、僕が独立しても周囲に散々迷惑をかけた。
正直言うと感傷的な気持ちは全くなく、寧ろホッとした気持ちが強かった。
屋敷は既に国に接収され、将来僕とクリスの子どもが新たな騎士爵家を打ち立てる事になっている。
「二人は難しいかもしれないが、少しは気持ちが楽になったはずだ。これからは、業務に勉強に邁進してくれ」
「「はい」」
これで、ルーカス様からの僕とエレンお祖父様への話は終わった。
何というか、本当に複雑な気持ちだった。
ガチャ。
「ケン、おかえり」
「「おかえりー!」」
「りー!」
それでも、クリスや小さい子を見るととても気持ちが落ち着いた。
後で、スラちゃんやクリスにも改めて話さないとね。
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