第百四十八話 悩みながらの奉仕活動
兄への判決が出た数日後、僕は大教会での奉仕活動に参加していた。
流石にクリス、シンシアお姉様、ミュウさんも官僚試験勉強を休んで奉仕活動に来ていた。
とはいえ、屋敷に帰ったら各自勉強をする事になっていた。
「「「「わーい!」」」」
「グルル!」
「ピー」
そして、今日はミュウさんの魔物の内キングレオとサンダーホークのオスが一緒についてきた。
王家の双子ちゃん、ジョセフちゃん、ルートちゃんは、仲良しの魔物に会えてテンション高めだった。
実は、元々妊娠が分かっていたフォレストタイガーの番に加えて、白毛のフォレストウルフの番にも妊娠が発覚した。
サンダーホークのメスも卵を抱いているが、オスは邪魔だからとこちらに来たという。
「グルル……」
「うう、これでは王家の子どもたちに接近できませんわ」
「流石に、魔物の側には行きたくありませんわ」
特に、キングレオは子どもたちに接近してアーサー様やルーカス様の側室になろうとしてる貴族令嬢をブロックしていた。
ある意味、最強の護衛になっていた。
なお、キングレオはコリーナさんたちや元から奉仕活動を手伝っていた貴族令嬢には好意的だった。
その辺りは、スラちゃんたちが色々と情報を教えていた。
最強の護衛に守られながら、ちびっ子たちもシロちゃんとレモンちゃんを交代で抱いて町の人への治療をしていた。
「そうか、ケン君の兄はそこまで酷い状態だったのか。もはや、欲望に負けて人の心を失っていたのかもしれん」
「ケン君は、半分血が繋がっているからかなり気にしていたのね。でも、どんなに生育が悪くても良い心を持つ人もいるわ。生まれながらの、その人の資質ってのもあるのよ」
僕は、少し席を外して大教会の中でサイオン枢機卿様と王太后様にこの前の裁判の話を聞いてもらった。
既に兄の処分は公表されているが、それ以上に僕は兄の態度が信じられなかった。
サイオン枢機卿様も、王太后様も、もう兄は人ではなかったと言った。
僕も、法廷で見た兄は獣にしか見えなかった。
「殆どの人は、成長と共に社会性を学んで心も成長するわ。でも、中には心が成長せずに子どものままだったり、衝動的な行動が抑えられない人もいるのよ。ケン君の兄は、間違いなくそのパターンね。軍では、立場の低い人に強く当たっていたみたいね」
「自分よりも立場の低いものに強く当たって、自尊心を保っていたのじゃ。だからこそ、自分よりも立場が低いと信じているケン君が活躍するのを認めたくなかったのじゃ。ところが、世の中はそうではない。そこを、ケン君の兄は分かっていなかったのじゃ」
王太后様とサイオン枢機卿様は、少し難しい表情をしながら言葉を続けた。
父親も似たような性格だったからこそ、兄はやっていけたのかもしれない。
父親が脱走兵として自滅し、兄だけになると更に転落を止めることはできなかった。
「最も、六歳だったケン君を物資として前線に送った時点で、ケン君の父親と兄は破滅への道を転がり落ちていったのじゃよ」
サイオン枢機卿様の言葉が全てだったのかもしれない。
僕は、実家を追い出されてから父親と兄と会わない為に自由を欲した。
やっぱり、その考え方は合っていたのかもしれない。
トタトタトタ。
「「「「まーだ?」」」」
「ガウッ」
待ちきれなくなったのか、ちびっ子たちが僕を迎えに来た。
サイオン枢機卿様も王太后様も、不貞腐れているちびっ子たちに思わず苦笑していた。
「もう話はここまででいいじゃろう」
「そうね。ケン君の表情も少しスッキリしたわ」
ということで、僕はみんなと一緒に奉仕活動の所に戻った。
確かに、話をして話を聞いてくれてスッキリしたのかもしれない。
僕は、気持ちを切り替えて治療を再開した。
「ケン、ちょっとはスッキリした?」
「うん。やっぱり、サイオン枢機卿様と王太后様に話して良かったよ」
「そう、それは良かったわ。裁判の後から、ケンはずっと悩んでいたもんね」
クリスは、僕のことを良く見ていた。
僕は、無意識の内に普通のフリをしていたのかもしれない。
多分、ハンナおばさんなどの使用人も気がついていたのかも。
「まあ、あの兄はしょうがないよ。私も初めて会った時は、何だこいつって思っちゃったよ。それだけ、自分中心で他人の事を考えなかったのよ」
シンシアお姉様は、兄の事をバッサリと切り捨てた。
というか、シンシアお姉様の考え方が普通なのかもしれない。
相手に対して、どうこう思うということをするのが普通だろう。
「ケン様は、とても優しい方ですわ。相手の事を常に思って行動されていますわ」
「そんなケン様だからこそ、私も魔物も救われました。ケン様は、そのままで良いと思いますわ」
少し大人のコリーナさんとミュウさんが、上手い具合に纏めてくれた。
そして、王太后様はちびっ子たちにある質問をした。
「みんなは、ケン君の事が好きかな?」
「「「「すきー!」」」」
「グルル」
ちびっ子たちだけでなく、キングレオまで一緒になって答えていた。
これには、みんなも思わずニコリとしてしまった。
僕は、僕のままでいいと改めて思ったのだった。
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