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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第百三十二話 僕の屋敷に保護された使用人と魔物

 思った以上の大捕物になり、幹部クラスの軍人がマネー伯爵家にやってくることになった。

 各貴族家での強制捜査の様子も伝わってきたが、他の貴族家でも違法な魔物が保護されたという。

 ただ、マネー伯爵家みたいに健康状態が悪いわけではなく、この分なら直ぐに野生に戻せるらしい。


「しかし、この状況だと無理に使用人と魔物を引き離すことはできない」

「「「「「グルル……」」」」」


 マネー伯爵家にやってきたのは、何とヘルナンデス様だった。

 ヘルナンデス様は、魔物が担架に寝かされている使用人の周囲にいる様子を見て、かなり悩ましく思っていた。

 せっかく魔獣が大人しくしているのに、一歩対応を間違えると大暴れする可能性があった。

 勿論、軍や教会の治療施設でも下手にあずかれない。

 そこで、この後の対応はこうなった。


「使用人の状態がまだ良くないから、ケン君の屋敷で一旦預かって治療をした方がいいだろう。スラちゃん達なら、魔獣も言う事を聞くみたいだからな」


 スラちゃんは魔獣と会話が可能だし、今日一日使用人の側にいて必要に応じて治療をした方がいいと言うことになった。

 僕もその方がいいと思うし、僕の屋敷の使用人なら事情を話せば大丈夫だ。

 直ぐに兵に僕の屋敷に行ってもらい、その後使用人の女性を馬車に乗せてスラちゃんと魔獣と共に向かってもらった。

 ふう、これで大丈夫だ。


「でも、あの使用人の姿をしていた女性はマネー伯爵家の名前がありました。家族関係は、中々難しいことになりそうですね」

「ケン君は自分の出生の関係で、直ぐにそっちにも気が回る。確実に、年内には決着しないだろう」


 ヘルナンデス様も、出生に関する法律が絡むので判断できないと言っていた。

 嫡男が使用人の女性の事を妾の子どもって言ったのが、大きなヒントになりそうだ。


「さて、後は軍に任せればいいだろう。ケン君は、教会に戻って奉仕活動を再開するといい」


 ということで、僕はヘルナンデス様とナッシュさんに後を任せてマネー伯爵家の屋敷から貴族街にある教会へと戻った。

 こんな貴族の犯罪があるのだと、僕は改めて考えさせられたのだった。


「すみません、遅くなりました」

「「「「「ケン君、お帰りなさい」」」」」


 教会に戻ると、王太后様たちが僕を出迎えてくれた。

 どうやら、ちびっ子たちは教会の中でぐっすりと寝ているみたいだ。

 僕は、簡単に何があったかを説明した。


「それはかなり酷いわね。魔物だけでなく、使用人まで地下牢に入れるなんて普通ではないわ」


 僕の話を聞くなり、優しい王太后様もかなり憤慨した。

 他の人達も、王太后様と共にとても酷いと頷いていた。

 僕の屋敷で使用人を保護するのは、現状だとベターな案だという。

 シロちゃん達も、使用人と魔物を頑張って治療すると意気込んでいた。

 そして、奉仕活動も終わったそうなので、ちびっ子たちを客室で寝かせる兼使用人と魔物の様子を見に行くという事になった。

 後片付けをして、みんなで馬車に乗って僕の屋敷に向かった。


「アクアちゃん、みんなの見守り宜しくね」

「「「「すー、すー」」」」


 ちびっ子たちを客室のベッドに寝かせ、頑張るぞと意気込むアクアちゃんと使用人に見守って貰った。

 そして、みんなで客室から治療した使用人を寝かせている部屋に向かった。


「あっ……」

「「「「「グルル……」」」」」


 すると、使用人の女性は意識を取り戻していて、ベッドから体を起こしていた。

 魔物も一瞬警戒していたが、僕の顔を見て直ぐに落ち着きを取り戻した。

 やはり、魔物はこの女性の使用人をとても信頼しているのだろう。

 スラちゃんも、魔物にフリフリと話をしていた。

 女性の使用人と話す前に、僕は再度治療を行った。


 シュイン、ぴかー!


「うん、打撲などはもう大丈夫ですね。暫くキチンと食事をして、体力を付けた方が良いですね」

「本当に、何から何までありがとうございます」


 女性の使用人は、僕に深々と頭を下げました。

 少し痩せているので、少なくとも年内は無理をさせない方がいいだろう。


「自己紹介がまだでしたね。僕は、ケン・アスター男爵です。あと、王太后様、王太子妃のメアリーさん、ルーカス様の奥さんのシーリアさん、僕の母方の実家のシンシア・ノーム準男爵令嬢、僕の婚約者のクリス・ダイナー男爵令嬢、クリスちゃんのお兄さんの婚約者のコリーナ・レイカー男爵令嬢です」

「【蒼の治癒師】様、王太后様、王太子妃様……」


 あっ、僕の説明を聞いて女性の使用人は思わず固まってしまった。

 どうやら、目の前に想像以上の人がいて状況を飲み込めないみたいだ。

 たっぷり五分程時間をかけて、何とか落ち着いてもらった。

 使用人は、胸に手を置いて落ち着いてから話し始めた。


「失礼しました。お気づきの方もいるかと思いますが、私はマネー伯爵家の血を継いでおりますミュウ・マネーと申します。実は、私の母親は屋敷の使用人でして、マネー伯爵様が母親を暴行して産まれたのが私になります。母親は、随分前に亡くなりました」


 つまり、マネー伯爵の血を継いでいるけど、いないものとして扱われたのか。

 だから、ミュウさんは母親と同じく使用人として扱われていたんだ。


「私は、この子たちが小さい頃から世話をしておりました。普通の魔物ではないと分かっておりましたが、私がマネー伯爵様に反論することはできません。そして、ご家族の方はこの子たちが私に懐いているのが気に食わなかったようです。先日、激しく叱責されて地下牢に入れられました。今日から、魔物と同じ扱いをすると……」


 何というか、聞くに堪えない話だ。

 そして、マネー伯爵一家は自分勝手な存在だと改めて分かった。

 王太后様は、手持ちの通信用魔導具でミュウさんから聞いた情報を各所へ伝えていた。


「そう、そんなに辛いことがあったのね。でも、ここはケン君の屋敷だから安心して療養できるわ。もちろん、その子たちもケン君のお友達のスライムが治療してくれるわ。屋敷の捜索は暫く時間がかかるし、貴方にも話を聞かせてもらうとおもうわね」

「先程から、この部屋にいたスライムが私たちのことをとても気にかけてくれました。それに、私で説明できることがあれば全てお話します」


 ミュウさんは、王太后様の話を全て理解した。

 何というか、ミュウさんはマネー伯爵家の血を継いでいるのにとても頭が良いと感じた。

 気配りもできるし、優しいからこそ魔物が懐いたのかもしれない。

 そして、ここから何故か僕の話題となった。


「【蒼の治癒師】様なら、王家の方と一緒にいても当然ですね。流石は国を救った英雄だと思いました」

「あの、僕のことはそんな風に思われているのですか?」

「もちろんです。たまたまですが、幼いケン様が王都に凱旋したのを見たことがございます」


 えっと、確か僕が七歳の時の王都凱旋のことだよね。

 他の人たちも、うんうんとミュウさんの話に頷いていた。

 取り敢えず、話はこれで終わりだ。

 ミュウさんの負担にならないように、僕たちも部屋を出ようとした時だった。


 コンコン、ガチャ。


「「まーま……わあ!」」

「なにかいる!」

「るー!」


 お昼寝をしていたちびっ子たちが、目を覚まして僕たちのいる客室に入ってきたのだ。

 そして、魔物を見るなり目を輝かせた。


「あのね、この子は今はちょっと元気がないんだよ。だから、元気になったらお話しようね」

「「「「あい!」」」」


 ちびっ子達は、僕の話に納得していた。

 そして、僕達もびっくりするこんな行動に出たのだ。


「「「なでなで」」」

「うー」

「「「「「グルル……」」」」」


 子ども達は、魔物の頭を優しく撫でていた。

 魔物も子ども達に敵意がないのか、目を細めて気持ち良さそうにしていた。

 そんなホッコリする光景に、僕達やミュウさんも思わず目を細めていたのだった。

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