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毒父に物資として戦地に送られた転生治癒師、無自覚チートで何でも癒しちゃいます  作者: 藤なごみ


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第百三十一話 違法な魔物の飼育

 ナッシュさんと共にとある貴族家の屋敷前に到着すると、既に捜索対象の貴族家の屋敷の庭には沢山の兵が配置されていた。

 ところが、軍はまだ屋敷の中には入れていないみたいだ。

 しかし、僕達にはスラちゃんがいる。


「スラちゃん、やってくれ」


 スラちゃんは、ナッシュさんに綺麗な敬礼をした。

 勝手に玄関ドアを開ける訳にはいかないので、現場責任者のナッシュさんが指示を出す形を取った。


 ガチャガチャ、ガチャ!


「流石はスラちゃんだ。さあ、ここからが正念場だぞ!」

「「「はっ!」」」


 流石スラちゃん、十秒もかからずに玄関ドアを開けた。

 ナッシュさんの指示に兵がこたえ、一気に屋敷の中に兵がなだれ込んだ。


 ドタドタドタ。


「王国軍だ。違法動物の飼育また違法な資金流入の件で、国からマネー伯爵家に強制捜査の指示が出た!」

「「「「「えっ……」」」」」


 ナッシュさんの宣言を聞いた使用人は、思わずその場で固まってしまった。

 そんな困惑気味な使用人の一人に、ナッシュさんが歩み寄った。


「マネー伯爵は何処にいる?」

「ち、地下室に……」


 使用人は、怯えながらも指を指しながらナッシュさんに場所を伝えた。

 話を聞いた僕は、ナッシュさんに確認してから床に手をついて探索魔法を発動した。


 シュイン、もわーん。


「えっと、執務室みたいなところから地下に入れる階段があるみたいです」

「ケン君は、本当に凄い魔法使いだな。各員は、当初の予定通り所定の場所について作戦を始めるように」

「「「「「はっ」」」」」


 ナッシュさんは、表情を引き締めて兵に指示を出した。

 僕とスラちゃんは、ナッシュさんと共に執務室へと向かった。


 ガチャガチャ、ガチャ!


「ナッシュさん、執務室の鍵も開きました!」

「スラちゃんに開けられない鍵はないな。よし、突入だ」


 ナッシュさんの指示を受け、スラちゃんはササッと執務室のドアの鍵を開けた。

 スラちゃんの早業にナッシュさんは一瞬呆れた表情をして、直ぐにまた気を引き締めた。

 兵が先に執務室に入り、僕達も後に続いた。


「な、何でお前らがここにいるのだ? や、やっちまえ!」

「「「「「おう!」」」」」


 執務室には横に大きなマネー伯爵がならず者を護衛としており、程なくしてならず者との戦いが起きた。

 何故、正規の護衛ではなくならず者を護衛としているかは後で確認しよう。

 ならず者は屈強な兵には勝てるはずもなく、僕とスラちゃんが兵の手助けをする必要もなくあっという間に制圧された。


「マネー伯爵、違法ブリーダーの元締めとして動いていたのは明白だ。更に、資金流入の状況も把握している。素直に縄につくことを勧めるぞ」

「う、うるせー! 下級貴族如きが口出しするな!」

「はあ、警告はしたからな」


 ナイフを構えて突っ込んできたマネー伯爵に、ナッシュさんは思わず溜息をついた。

 ナッシュさんは魔法を放とうとした僕とスラちゃんを手で制し、突っ込んできたマネー伯爵をヒラリと交わしつつ足払いをした。


「と、とと、うわぁー!」


 ずてーん。


 マネー伯爵は、ものの見事にすっ転んだ。

 即座に兵が床にダイブしたマネー伯爵を拘束するが、当のマネー伯爵は膝や肘を打ったのかかなり痛そうな表情だった。

 もちろん、僕やスラちゃんがマネー伯爵を治療する事はなかった。


「ナッシュさん、凄いです!」

「ああいう奴らと正面切って無理に戦う必要はないよ。ケン君も、今度軍で護身術を教えてもらうといい。さて、ここからが本番だ」


 ナッシュさんの視線の先には、左右に大きく開いた本棚があった。

 隠し扉の下に隠し階段があったのだけど、これだと普通にバレバレだ。

 もしかしたら、常に本棚を開けっ放しにしていたのかもしれない。

 僕達は、兵を先頭に急いで階段を降りた。


「くそっ、ここが何故分かっ……ぐはっ」


 地下室にも複数のならずものがいたが、直ぐに兵によって拘束された。

 それよりも、僕達は地下室にある檻が気になっていた。


「キングレオに、フォレストタイガー、それにサンダーホークまで。白毛の狼までいます! みんな痩せ細っていて、とても可哀想です」

「これは……かなり生育状況が良くない。ケン君、スラちゃん、直ぐに治療してくれ」


 スラちゃんが魔獣に危害を加えないと話をしてくれたので、すんなりと治療が出来た。

 すると、なんと一人の使用人も檻に閉じ込められていたのです。


「うぅ……」

「わあ、全身がアザだらけです! 直ぐに治療しますね」


 緑髪の使用人は、かなり酷い暴行を受けていた。

 僕が使用人を治療して兵が担架に乗せて地上へ運ぼうとすると、急に魔獣たちがソワソワとし始めた。


「このお姉さんが、みんなを世話してくれたんだね。だから、とっても心配しているみたいです」

「言わば、魔獣たちの母親がわりだったのだろう。この使用人は、マネー伯爵とは別に保護しないとならない」


 スラちゃんがナッシュさんの話を通訳してくれ、何とか魔獣は落ち着きを取り戻した。

 ところが、全ての魔獣と治療した使用人を庭に運んだ際に、マネー伯爵家の家の者がとんでもない行動に出たのです。


「おい、何であの女が丁寧な対応を受けているのザマスか!」

「そうだそうだ! 妾の娘が上等な扱いで、何で俺たちが拘束されているんだ!」


 マネー伯爵夫人と嫡男らしき拘束された人物が、担架に乗せられている使用人の女性を糾弾した。

 急いで鑑定魔法を使うと、何とこの使用人の女性はマネー伯爵家の苗字が表示されていたのだ。

 僕もスラちゃんもナッシュさんも、流石にこの展開は予想していなかった。


「「「「「ガルルルル……」」」」」

「「ひぃ!? く、喰われる!」」


 そして、使用人を取り囲んでいた魔獣が、一斉に唸り声を上げた。

 どうやら、この二人は使用人と魔物の件で何かをしていた可能性が高そうだ。

 二人は、マネー伯爵と共に重要参考人として連行されていった。


「「「「「ハグハグハグ」」」」」


 一方、助け出された魔獣はというと僕が魔法袋から取り出したお肉を夢中で食べていた。

 どうやらかなり空腹だったみたいで、マネー伯爵家の厨房から追加肉が運ばれた。

 魔獣はかなりの量を食べ切ったが、この屋敷で一番肉を消費しそうな者は連行されているし問題ないでしょう。

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