第百十五話 直轄領に到着
飛行船に乗っている道中は、何もトラブルなく進んでいた。
僕たちも、客室でくつろぎながら話をしていた。
「ビーズリーさん、ナッシュさんの婚約は上手くいったみたいですね」
「本当に、ようやくだがな。本人も今まで独り身を謳歌していたが、流石に年貢の納め時だと感じたみたいだ」
クリスの兄で嫡男のナッシュさんは、独り身だからこそ派遣先で美味しいものを食べていたという。
軍の制度を上手く使っているなあ。
でも幹部候補生だし、そろそろ専門的な教育も受けないといけないらしい。
というのもあり、今年の秋から正式に王都に戻ることが決定した。
「しかし、先にクリスとケン君が婚約し、兄の婚約の心配をするとは思っていなかった。父親としては、複雑な思いだよ」
ビーズリーさんは、苦笑しながら話していた。
でも、ダイナー男爵家としてはナッシュさんに身を固めて欲しいはず。
特に、ケーラさんは今まで婚約を纏めようと必死に動いていたはずだ。
「そういう意味だと、シンシアの婿探しも中々大変でしたぞ。上手く纏まることになり、私も安心している」
エレンお祖父様も、ようやく末の娘の結婚先が決まってホッとしていた。
僕の存在がシンシアお姉様の結婚相手探しに影響していたのは申し訳無いけど、それでも良い相手を選べて僕もホッとしていた。
この直轄領遠征が終われば、両家顔合わせをする予定だ。
僕も、ノーム準男爵家の縁者としてクリスと共に顔合わせに参加することが決まっていた。
クリスもスラちゃん達も、両家の顔合わせをとても楽しみにしていた。
「ケンは、年上と良く話すよね。あんまり同世代と話さないかも」
クリス、ジュースを飲みながらズバッと言ってこないの。
スラちゃんも、思わずそうだねとうなずかない。
僕は、同年代と接する機会がなかっただけです。
六歳の頃なんか、年上としか話してないんですよ。
「でも、ケン君は年下にも好かれる。王家のお子様もそうだし、我が家のルートもそうだ」
「うーん、確かにケンは赤ちゃんに凄く好かれるよね。うーん」
クリス、スラちゃん、エレンお祖父様のナイスフォローにもそんなに悩まないの。
ビーズリーさんも、思わず苦笑していたのだった。
こんな身内話を中心に、みんなで仲良く談笑していた。
「あっ、町が見えてきたよ!」
そして、予定通り夕方前に直轄領の町並みが見えてきた。
クリスとスラちゃん達は、魔導船の窓から見える町並みに釘付けだった。
着陸態勢に入るので、僕たちは再び席に着いた。
「着陸完了しました。これより、順に下船いたします」
機内アナウンスがあり、僕たちも無事に着陸できてホッとしていた。
身支度を整えて、出迎えの兵と共に魔導船から降りた。
予定だと代官邸に行って挨拶をするのだが、船外で僕たちを待っていた直轄領駐留軍の兵が至急を知らせた。
「ダイナー男爵様、ほ、報告いたします。先程、軍の巡回中に街道沿いからオオカミの群れが兵を襲いました。現在、軍の治療施設に負傷兵を搬送しております」
「何ということだ。オオカミの群れはどうなっているのか?」
「現在、迎撃中と聞いております」
これは、完全に予想外の事態だ。
僕たちは、直ぐに治療に向かわないといけないと思った。
しかし、ビーズリーさんの判断は違った。
「ある程度の怪我なら、スラちゃん、シロちゃん、レモンちゃんでできるはずだ。今は、オオカミの群れをどうにかしないとならない。ケン君とクリスは、私と共にオオカミを迎撃に行くぞ」
「「はい!」」
手薄になった兵に、更にオオカミの群れが襲いかかっているかもしれない。
下手をすると町にオオカミの群れがなだれ込む可能性がある為、先ずはオオカミを倒す事に専念する。
「では、私が代官邸に向かおう。代官邸がどのような対応をしているのか、ちょっと気になる」
エレンお祖父様も、顎をしゃくりながら何か考えていた。
これ程オオカミの襲撃が続くのなら、軍だけでなく代官も何か手を打っているのが普通だ。
念のために、エレンお祖父様にアクアちゃん、ビーズリーさんにリーフちゃんが護衛に着くことになった。
もちろん、エレンお祖父様には兵の護衛もつく。
こうして、直轄領に到着して早々に特殊作戦が決行される事になった。
町の人のために、僕も頑張らないとと気合を入れた。
読んでいただき、誠にありがとうございます
ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
作者のモチベーションも上がります!




