第百十二話 屋敷にやってきた実家の使用人
新年早々に実家であるギャイン騎士爵家が強制捜査を受けて以降、色々な事が起こっていた。
先ず、実家には罰金を一括で払うだけの金品があった。
特に、僕は一度も見たことがなかったのだが宝石類が多数出てきたという。
騎士爵家が持っているのは過剰とも思える量らしく、如何に父親や兄が贅沢に溺れていたのかが分かった。
そして強制捜査の過程で母親の遺品でもあるネックレスと指輪なども見つかった。
母親が身につけていたドレスは何と兄を産んだ父親の愛人の使用人が持っており、まとめて僕の屋敷に送られた。
こうして罰金分の金品が確保された事により、ギャイン騎士爵家は即爵位取り上げとはならなかった。
だが、次の当主が決まっていない以上その内爵位取り上げになるのは必至だった。
廃嫡となっている兄は、軍法会議にかけられた。
結果、給与が三割の減給となり地方の訓練場経由で国境に送られることになった。
更に国からの決定で、強制捜査を受けたのと罰金支払遅延のために貴族年金も五年間半額になった。
とても大きな処分となったが、実は父親と共に逃走罪として捕まった他の貴族家も似たような状況だった。
ところが父親と兄が贅沢をした反動が、別の所で僕に降りかかってきた。
「それで、この状況になっているんですね……」
「まあ、仕方ないといえよう。当面の資金確保に資産売却ができるのならともかく、それができないのなら様々な固定費を削るしかない」
今日はたまたま非番のゴードン様が僕の屋敷に顔を出したのだが、僕の屋敷には何とか採用して欲しいと解雇された使用人が詰めかけていた。
特に僕の実家であるギャイン騎士爵家に勤めていた使用人は、僕を虐待した事実もあり再就職が決まらないでいた。
「それでも、ケン様が以前屋敷におりましたので、もしかしたら採用してくれるのではないかと思っているのです。厳しいことですが、ケン様の口からハッキリと申された方がよいかと……」
ハンナおばさんも、こればかりはどうしようもないと言っていた。
というのも、僕に屋敷が与えられた際に、ギャイン騎士爵家からはハンナおばさんしか採用されなかった。
そして、元々心ある使用人もこれを期にギャイン騎士爵家から他の貴族家に移った。
後から採用された使用人も殆どおらず、現在ギャイン騎士爵家にいるのはほぼ僕に何かしらの問題行動を起こした使用人になる。
因みに、屋敷前に詰めかけた使用人の中に別の理由で来ている人もいるかもしれないので、先にスラちゃんたちが鑑定魔法で確認をした。
「何人か問題のない使用人がいますので、その使用人は別枠として面接を行いましょう」
ということで、問題のない使用人はハンナおばさんや他の使用人のところに案内されることになった。
僕は、元ギャイン騎士爵家に勤めていた使用人と面接をすることになった。
僕一人だったら上手く話せるか不安だったが、幸いなことにゴードン様も一緒にいてくれることになった。
人数が多いので、玄関ホールで話をすることにした。
「皆さん、お久しぶりです」
「「「「「!!!」」」」」
集まった元実家の使用人は、身なりのよい僕を見るなり驚愕の表情に代わった。
僕がギャイン騎士爵家にいる時は、使用人以下のボロボロの格好でいた。
常に使用人から暴行を受け、まともな食事すら与えられなかった。
そんな僕が、キチンとした貴族服を着て大きな屋敷に住んでいる。
しかも、綺麗に身支度を整えている使用人も複数控えていた。
この事実を、元実家の使用人は受け入れられなかったのだ。
「改めて自己紹介をします。ケン・アスター男爵です」
「「「「「あっ……」」」」」
僕がニコリとしながら自己紹介をしたのだけど、元実家の使用人は相変わらず驚愕の表情のまま言葉を発せないでいた。
僕は、そんな元実家の使用人の様子を気にせずに話し始めました。
「僕は、ずっと心の中で思っていることがありました。何故、僕が実家にいる時に皆さんがニヤニヤと僕を蔑んだ目でみながら暴行をしたのかと。確かに父親や兄からは最低限の養育という指示があったと思いますが、虐待をしろとは指示は出ていなかったはずです。それは、ハンナおばさんからも確認をしました」
「「「「「あっ……」」」」」
元実家の使用人は、虐待の事実よりもハンナおばさんからの情報にビックリしていた。
つまり、僕の目の前にいる元実家の使用人は、自分の意志で僕を虐待していたのだ。
驚愕の表情からヤバいと段々と青ざめていくが、それでも僕は言葉を続けた。
「僕のお母様が、病気で亡くなった時のことも聞いています。お母様が、屋敷でもあまり良くない扱いをされていたと知っています」
「「「「「……」」」」」
僕の母親の話にまで言及すると、元実家の使用人は顔を下に向けて完全に黙り込んでしまった。
今更ながら、元実家の使用人は自分たちの犯した罪の大きさを理解した。
使用人不採用の話をするのならここまででいいのだが、ここで別の話をしなければならなかった。
シュイン、バシッ。
「「「「「えっ!?」」」」」
ここで、僕は拘束魔法で元実家の使用人を拘束した。
突然のことで、元実家の使用人は何が何だか分からないでいた。
「皆さん、解雇されたギャイン騎士爵家にて横領などを行っていましたね? 皆さんを鑑定魔法で確認をしました。もう間もなく軍も到着しますが、下手に抵抗せずに素直に話した方がいいと思います」
「「「「「あ、あっ……」」」」」
拘束された元実家の使用人は、先に行ったスラちゃんたちの鑑定で全員罪ありと確認された。
僕への虐待は、この際スルーすることにした。
元実家の使用人は全員顔面蒼白でガクガクと震えており、この後訪れるだろう軍の尋問に怯えていた。
ダッ、ダッ、ダッ。
「アスター男爵様、国軍到着しました」
「すみませんが、宜しくお願いします。全員スラちゃんたちの鑑定魔法で罪ありとありましたが、改めて僕が鑑定して全員の罪状を整理しました」
「とても助かります。それでは、これより作業に移ります」
軍の兵は、手早く元実家の使用人を連行していった。
全員が絶望的な表情をしていて、言葉を発することはなかった。
「ゴードン様、これで良かったのでしょうか……」
「ケンの対応は、何も間違ってはいないぞ。それに、あの使用人たちはケンへの謝罪を一切口にしなかった。ケンの姿を見るまで、自分よりもケンのことを下に見ていた証拠だ」
兵に連行されていく元実家の使用人の後ろ姿を、僕とゴードン様はただ見守るしかなかった。
僕も、自分が感情的にならないように何とか気持ちを抑えていた。
でも、やはり元実家の使用人を見て、とても複雑な感情となったのだった。
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