第百五話 王家の双子ちゃんの様子と軍の巡回の勉強
アリアちゃんとブライトちゃんの誕生は、その日のうちに国中に周知された。
貴族向けにも臨時の謁見が行われ、その場で陛下は華美な贈り物は結構だと釘を刺しておいた。
なのだが……
「兄上は、かなり変な贈り物が贈られていると嘆いていた。私も実物を見たが、何でこんなものを贈ってくるのかと理解できなかった」
双子ちゃんの出産から十日経ち、僕とクリスはルーカス様から上級官僚の勉強の一環だと言われて軍の街道警備と害獣駆除に同行していた。
出発する前に、ルーカス様が珍しく愚痴をこぼしていた。
実は、僕も王城に行った際に双子ちゃんへの出産祝いを見に行った。
殆どの貴族は問題ないものを贈っていたのだが、中には木彫りの熊だったり、オオカミの剥製を贈ってくる貴族がいた。
強さの象徴として贈ったらしいが、流石に素直に受け取る訳にはいかず直ぐに倉庫行きとなった。
更に盗聴用の魔導具を仕込んだ置き時計が贈られ、スラちゃんが直ぐに見つけ出した。
置き時計を贈った貴族当主は、直ぐに尋問を受けて全てを吐いた。
有利な情報を得ようとして、置き時計に盗聴用の魔導具を仕込んだという。
もちろん貴族当主は捕まり、この後正式に裁判にかけられるという。
そのために、スラちゃんたちの派遣を二週間延期することになった。
「双子ちゃんは、とても元気に育っていますね。贈り物の件はあるにしても、今は元気に育つのが一番ですね」
「ケンは、ズバッと贈り物の件を切り捨てたな。そうそう、シーリアの出産の際にもスラちゃんたちの派遣を頼むことにした」
今日僕たちと一緒についてきているアクアちゃんが、ルーカス様に触手をフリフリとしていた。
出産のサポートもだが、贈り物対策も含んでいそうだ。
シーリアさんの出産はあと三ヶ月くらいなのだけど、今日も普通に軍の施設で働いていた。
シーリアさん曰く、調整業務だから問題ないらしい。
流石に、臨月前には産休に入るという。
こんなことを話しながら、僕たちは馬に乗って軍の基地を出発した。
「軍の巡回は、だいたいどのくらいの頻度で行っているんですか?」
「毎日必ずどこかの街道を巡回している。警備の関係で細かいことは教えられないが、軍にとっても重要な任務だ」
治安維持業務なので、巡回ルートは兵も家族にも教えない情報だという。
僕もクリスももちろん詳しく聞かないし、ルーカス様もそこは分かっていた。
そして、ただ集団で馬を走らせるのではなく、常に周囲の状況に目を光らせていた。
「街道を行く人を見ると、サッと視線を外したり警戒する目で見るものがいる。そういうものは、特に要注意人物としてその場で聴取を行ったりする」
ルーカス様は、幾つかのポイントを挙げてくれた。
どれも、後ろめたさや警戒心からくるリアクションだ。
でも、馬上から一瞬で見抜くのはスゴ技と言えよう。
そして、馬を走らせること一時間、害獣駆除を行うポイントに到着した。
街道の片側が森で覆われており、如何にも何かがいそうな雰囲気があった。
「ここは、毎年オオカミによる襲撃の被害が出ている。気をつけないといけないポイントだ」
ルーカス様も警戒する場所で、探索魔法を使っても何かの反応が僕たちを伺っていた。
兵は森の中から聞こえる音を聞き分けており、直ぐに臨戦態勢に入った。
ガサッ、ガサガサ。
「「「「「ガルル!」」」」」
「迎撃開始!」
程なくして森の中から複数のオオカミが飛び出してきたが、既に行動を予測していた兵によって撃退され始めた。
僕とクリスも身体能力強化と魔法剣を使ってオオカミを撃退し、アクアちゃんは馬を守りつつ水魔法で支援していた。
「「えい、やあ!」」
ザシュ、ズバッ。
「「ギャン!」」
僕も、敢えて放出系魔法を使わずに剣でオオカミを倒した。
拘束魔法を使ってオオカミを動けなくすることも可能だが、今日は拘束魔法無しでオオカミを倒す訓練なので使用しなかった。
それに、オオカミの動きを予想して剣を振るうのはとても勉強になった。
こうして十分間で二十頭のオオカミを倒し、アクアちゃんがスライムの特性を生かして倒したオオカミの血抜きをしていた。
「結構な数のオオカミがいましたね。でも、皆さん怪我もなく凄いです」
「このくらいなら、多少多い位で済むだろう。腕試しにはちょうど良い」
顔見知りの兵は、僕たちにニカッとして余裕綽々だ。
僕とクリスも、このくらいならまだまだ疲れはなかった。
「だが、血の匂いに気がついたオオカミが来ることも……おっ、やってきたぞ」
「「「「「ガルルル!」」」」
こうして、第二弾のオオカミとの戦闘が始まった。
お腹を空かせた群れなのか、かなり攻撃的で気をつけないといけなかった。
それでも、僕たちは誰も怪我することなく全てのオオカミを倒しきった。
シュイン、もわーん。
「周辺に、特に反応は無さそうです」
「まあ、順当な結果だな。あんちゃんと嬢ちゃんも、魔法を使ったとはいえよくやったぞ」
探索魔法でもこちらを伺っている反応しかなく、兵も少し緊張から解放されていた。
アクアちゃんがみんなに水魔法で飲水を出してくれ、兵は喉を潤していた。
そして、血抜きを終えたオオカミは全て僕の魔法袋に入れて一時保存することになった。
軍の施設に戻ったらオオカミを提出し、今日出動した兵への報酬になるという。
「ケン君もクリスも、とてもいい腕だった。これからも、定期的に巡回に同行させてもいいだろう」
「「はい!」」
元々体を動かすのが大好きなクリスは、ルーカス様の提案にとても喜んでいた。
僕もとても良い訓練になったし、馬に乗る訓練にもなった。
こうして、僕たちは軍の施設に帰った。
ところが、ここでちょっとしたトラブルが起きてしまった。
「おお、血抜きも完璧だな。これなら、査定額アップだ」
「「「「「うおー!」」」」」
解体担当からひと言で、今日巡回に行った面々が物凄く盛り上がったのだ。
毛皮も肉も使えるので、軍としてもアクアちゃんの血抜きはとても助かったという。
また、僕が直ぐに魔法袋に収納したのでとても状態が良かった。
「お前らだけズルいぞ!」
「「「そーだ、そーだ!」」」
もちろん他の兵もブーイングをするが、こればかりはどうしようもない。
「うーん、魔法兵が一緒にいれば魔法袋に倒した獲物を収納できるけど、流石にスラちゃんたちを毎回貸し出すのは。しかも、今は毎日贈り物の確認と双子ちゃんの体調確認に出ています」
「「「「「そんな……」」」」」
兵は、ガックリと崩れ落ちてしまった。
だが、相手が王家なのでそう簡単に文句は言えなかった。
とはいえ、スライムの手配はそう簡単には……
ちょんちょん。
「うん? なになに、そろそろ独り立ちできそうなスライムがいる?」
「「「「「おおー!」」」」」
僕の頭の上にいるアクアが伝えた内容に、兵は一気に息を吹き返した。
このままだと、新しいスライムの行き先は間違いなく軍の施設になりそうだね。
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