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辺境伯令嬢の私に、君のためなら死ねると言った魔法騎士様は婚約破棄をしたいそうです  作者: 茜カナコ


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68.来訪まで

 二週間が飛ぶように過ぎて、婚約予定日となった。

「お母様。私、なにか準備を忘れていないかしら? ドレスを新調して、家の仕事をお母さまに教えていただいて……ほかにするべきことはないかしら?」

 シェリーがグレイスに尋ねると、グレイスは優しく微笑んだ。


「シェリー、落ち着きなさい。書類仕事はお父様がしてくださるし、家のことは執事が取り仕切ってくれるし、私たちはゲストをおもてなしするだけですよ? 緊張しているのかしら?」


 シェリーは困ったような笑顔で答えた。

「ええ、実はとっても緊張しています。あ、お父様はアシュトン様にフロックコートの採寸の予定も伝えてくださったかしら?」


「大丈夫よ、シェリー。ちゃんと手紙に書いてくださったわ。気分転換に中庭でも散歩してきたらいかが? クラーク家の方々がいらっしゃるのは夕方の予定だから今からそんなに気を張っていたら疲れてしまいますよ?」

「そうですね。私、外の空気を吸ってきます」


 シェリーは中庭に出ると、花々や草の香りを楽しみ、ゆっくりと歩いた。

「体中、固くなっているようだわ。思った以上に緊張していたのね」

 シェリーは一人で苦笑すると、中庭に置いてあるベンチに腰かけた。


「今日もいい天気。雨が降らなくて良かった」

 シェリーはアシュトンの両親とアシュトンの姿を思い浮かべて、ふう、と息をついた。


「シェリー様、そろそろ昼食の時間です」

 メイドがシェリーに声をかけた。

「わかりました。今行きます」

 シェリーは立ち上がり、食堂に向かった。


 食堂ではカルロスとグレイスが談笑していた。

「遅くなりました」

 シェリーが席に着くとカルロスが聞いた。

「シェリー、緊張しているんだって?」

「ええ、お父様」

「無理はない。私もすこし神経が張り詰めているところがある」

「でも、微笑みは忘れないようにしないとね、シェリー。少し表情が怖いわよ」

「あら、恥ずかしいですわ」

 シェリーは飲み物を一口飲み、こわばる頬を両手で包んだ。


 昼食を食べながら、グレイスがカルロスに尋ねた。

「クラーク家からいらっしゃるのは、ご両親とアシュトン様だけかしら? どのくらいの期間、滞在していただく予定ですか?」

「二三日、といったところかな。あちらも忙しいようなのでね」

 シェリーがカルロスに質問した。

「滞在中のご予定は?」


「婚約に必要な書類を書いて、後は……グレイスから聞いたがフロックコートの採寸を行うのだろう? 時間があって天気が良ければ、狩猟に行くのも悪くないな」

「危険なことはやめてくださいね、お父様」

 シェリーが眉を顰めると、カルロスは笑った。

「シェリー、心配することはない。アシュトン殿は若いし、私もシリル様もまだ老いぼれてはいない」


 食事を終えると、グレイスがシェリーに言った。

「シェリー、新しいドレスに着替えてもいいのではないかしら? それに、メイドに髪を結ってもらうといいわ」

 シェリーは頷いた。

「はい、お母様」


 シェリーはメイドに衣裳部屋から新しいドレスを部屋に持ってきてほしいことと、髪を結ってほしいことを伝え、自室に戻った。

「シェリー様、ドレスをお持ちいたしました」

「ありがとう」

 シェリーがドアを開けると、メイドが薄紅色のドレスを持って立っていた。


 メイドが手伝い、シェリーは新しいドレスに着替えた。そして、シェリーは鏡台の前の椅子に腰かける。メイドがシェリーの髪を梳き、結い上げる。シェリーの細いうなじがあらわになる。ドレスの首元が空いていることもあってシェリーの胸元はいつになく目を引いた。

「シェリー様、いかがでしょうか」

「とっても、素敵だわ。ありがとう」


 シェリーは部屋を出てグレイスを探した。執事と話しているグレイスを見つけると、二人の会話が終わるまでおとなしく待っていた。


「お母様」

「あら、素敵ね、シェリー」

「でも、胸元が……」

「そうね、何かあったほうがよさそうね。……ちょうど似合いそうなガーネットの首飾りがあるわ。着けてみる?」

「貸していただけるのですか?」

「ええ、もちろん。きっと似合うわ。少し待っていて」


 グレイスは執事に、連なった花を思わせるデザインの、ガーネットの首飾りを持ってくるように言った。

 少し待つと、華やかな赤い宝石で彩られた首飾りを執事が持ってきた。

「さあ、着けてみましょう」

 グレイスがシェリーの首にガーネットの首飾りを当てて、首筋で留め金を留めた。

 赤い石が金の鎖に縁どられていて、美しい。


「とても似合っているわ」

 グレイスは鏡の前にシェリーを連れていく。

 鏡に映ったシェリーの胸元で、ガーネットは赤く輝き、薄紅色のドレスとシェリーの白い肌を引き立たせている。


「素敵な首飾り……」

「良かった。シェリーに似合うわ。私には少し派手過ぎたから使う機会がなくて、しまったままだったのよ」

 グレイスは、喜ぶシェリーを見て目を細めた。


「お客様がいらっしゃるまでまだ時間があるわ。お茶でも飲んで、ゆっくり待ちましょう」

「ええ」


 シェリーとグレイスはお茶をのみながら、アシュトン達の到着を待った。


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