60.帰り道
人々のざわめきは続いていた。
「アシュトン様、もう夕暮れですわね」
「そうですね」
シェリー達が赤く色づき始めた空を見上げていると、司会者のアナウンスが聞こえてきた。
「それでは、本日は皆さまお集まりくださいまして、誠にありがとうございました。これをもちましてパーティーは閉幕とさせていただきます」
あちらこちらから拍手が聞こえた。中庭の中央ではジルとメイリーンが頭を下げた後、笑いながらみんなに手を振った。
「シェリー、帰るぞ」
「はい、お父様」
「アシュトン様、本日はシェリーの相手をありがとうございました。また後日連絡いたしますが、シェリーとの婚約の手続きのため一度我が家にご両親とお越しください」
「わかりました。ホワイト辺境伯。ご連絡をお待ちいたします」
「アシュトン!そこにいたのか」
アシュトンの両親がアシュトンのもとに駆け寄ってきた。
「……ホワイト辺境伯、立派な式でしたね」
アシュトンの父シリルがカルロスに話しかけると、カルロスは頷いた。
「本当に。ところでアシュトン様にはお話したのですが、あらためてシリル様たちにも我が家へお越しいただきたいと考えております」
カルロスがシリルに言った。
「はい、いつ頃にいたしましょうか?」
「詳細については、追って手紙でご連絡いたします」
カルロスはそう言った後、シリルに右手を差し出した。
シリルはカルロスと固い握手をすると、にっこりと微笑んだ。
「それでは帰ろう」
カルロスがシェリーとグレイスに言った。
「はい」
グレイスとシェリーは頷いた。
パーティーに参加していた人々が、出口に向かって歩いて行く。
出口ではジルとメイリーンが感謝の言葉を添えて、お礼の品を配っていた。
「あら、シェリー様! アシュトン様!」
「メイリーン様、おめでとうございます」
「もう、ジル様は私の旦那様ですからね! ちょっかいをかけたら、許しませんよ?」
シェリーは困ったような笑みを浮かべて、メイリーンにお辞儀をした。
「ジル、おめでとう」
「ありがとう。アシュトン、シェリー様と幸せに」
「ジルにそんなことを言われるとは思わなかったな」
アシュトンは笑いながらジルと握手をした。
メイリーンはシェリーに、ジルはアシュトンにお礼の品を渡した。
ジルがシェリーに目礼をすると、シェリーも頷いた。ジルは穏やかに微笑んで、次のパーティー参加者に目を向けた。
「さあ、シェリー、こちらへ」
「はい、お父様」
カルロスはアシュトン達クラーク家に別れの挨拶をすると、馬車に乗り込んだ。
「豪華な式だったな。シェリー達の式も負けないようにしなくては」
「お父様、無理はなさらないで」
「シェリー、私はお前にできることをしてやりたいだけなんだよ」
「そうよ、シェリー」
両親は微笑んだままシェリーの手に手を重ねた。
馬車が走り出した。
人の群れがだんだん散っていく。
シェリーは華やかな式を思い出し、ため息をついた。
「素敵な式でしたわ」




