28.メイリーン
「メイリーン、なんであんなことを言ったんだい?」
ジルは優しく、しかし困った様子でメイリーンに尋ねた。
「ジル様が……私だけのジル様でなくなってしまうのが嫌なんです」
メイリーンは涙をポロリとこぼしていった。
「……メイリーンはユリアス王子が好きなのだろう?」
「!!」
メイリーンの表情がこわばった。
「謁見の時に、うっとりとしてる表情やユリアス王子について話すときの表情を見てればわかるよ。長い付き合いだからね」
ジルはしかたないという代わりにため息をついた。
「私はただ、ユリアス王子は美しいと思っているだけで……」
「メイリーン、僕には僕の気持ちがあるんだ。子供のころの約束は、君が16歳になったときに『もう、約束の時間は終わりだ』って言っただろう?」
メイリーンは甘えるような眼でジルを見つめた。
「君はかわいい。確かにそうだ。僕にとっても大事な人だ。でも、恋愛感情じゃない」
「ジル様……」
「いつまでも君の優しいお兄様でいたかったけど、そういうわけにもいかなくなってしまった」
メイリーンは自分の親指の爪をかりりとかんだ。
「僕は、誰かに恋をすることはないと思っていた。だから、君の恋愛ごっこにも付き合っていた。今はそれは間違いだったと思っている。君にも悪いことをしてしまった」
メイリーンは、ジルをにらみつけていった。
「そう思わせたのが、あのシェリー様なのですか?」
ジルは窓の外を眺めた。
シェリーの乗った馬車が小さく見えた。
「……どうやら僕にとって、シェリー様は特別らしい」
「……私は許しません」
メイリーンは小さくつぶやくと、乱暴にドアを開け、ジルの部屋を出て行った。




