23.ジルの手紙
武闘大会が終わって一か月ほどたったある日、シェリーに手紙が届いた。
「シェリー様宛のお手紙です」
「……? ありがとう、サンディ」
封筒の裏を見ると、ジルのサインがあった。
「まあ、ジル様が手紙を私に? 一体なにかしら?」
シェリーはドキドキしながら手紙を開けると、便箋を開いた。
『親愛なるシェリー様へ ギアチ国へ視察に行くことが決まりました。無事帰れるよう私のために祈って下さいませ。なお、このことは他言無用でお願いいたします。 ジルより』
シェリーはそれを読んで驚いた。
「まあ、ジル様がギアチ国に行くのですか!? あそこは魔物が沢山いるという噂ですのに……」
シェリーは手紙を自室の机の上に置いた後、父親のカルロス辺境伯の部屋のドアをノックした。
「誰だ?」
「シェリーです。お伺いしたいことがあって……」
「なんだい? シェリー」
カルロスの返事を聞いて、シェリーは思い切ってジルのことを尋ねた。
「あの、ジル様がギアチ国の視察に行くというのは本当ですか?」
「どこでその話を聞いた?」
シェリーは動揺していたとはいえ、カルロスに尋ねたことを後悔し、白状した。
「……ジル様から直接お手紙をいただきました」
「そうか……。実は、武闘大会はギアチ国に行けるくらい強いものを選別するために行われたのだ。その結果、アルバートとジル様の二人でギアチ国の様子を見に行くことになった」
「まあ!! そんな危険なところに二人だけで!?」
カルロス辺境伯は少し沈黙してから、言った。
「人が多いと目立つからな。今回は視察のみだから危険な状況になったら、すぐに帰還するよう厳命されているはずだ」
シェリーはカルロスの話を聞いても、不安に駆られていた。
「教えてくださってありがとうございます。お父様」
シェリーは自室に戻ると、窓から月を見ながらつぶやいた。
「……ジル様、無事に帰ってきてくださいませ」




