24.ジルの帰還
ジル達、調査団がギアチ国から帰ってきたのは二か月後だった。
「シェリー様、セリシア王女からお手紙です」
「まあ、何かしら?」
シェリーはメイド長から手紙を受け取ると、急いで封を開けた。
『親愛なるシェリー様 ジルが怪我をして戻ってきました。かわいそうなジルのためにお見舞いに来てくださいませんか? セリシア』
「大変! ジル様が怪我をされた!?」
シェリーはあわてて父親に声をかけた。
「お父様、ジル様が怪我をされたそうです。お見舞いに行ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、それなら……」
父親がうなづいたのを見て、シェリーはお見舞いの準備を始めた。
「ありがとうございます。ええと、お見舞いに持っていけるものは……町でお菓子とお花を買って……トラモンタ国へ行けば……夕方にはトラモンタ国の王宮に着けますわね」
「おちつきなさい、シェリー。今日のところは、明日お見舞いに行くと手紙を返すだけにしなさい」
「……はい、お父様」
シェリーは自分が思った以上に動揺していることに気づき、ハッとした。
シェリーは自室にもどり、セリシア王女への手紙を書いた。
『明日、ジル様のお見舞いにお伺いしたいと思います』
シェリーはメイド長に手紙を託すと、お見舞いの品のことを考えた。
「ジル様の好きなもの……。あら? 私、ジル様のこと……何も知らない……」
シェリーはいたずらっぽく笑うジルの顔しか思い出せなかった。
「……とりあえず、チョコレートとクッキーを持っていきましょう」
シェリーは母親にたずねた。
「お母様、チョコレートとクッキーはありますか?」
「チョコレートならありますよ。クッキーは……あなたが作ってもよいのではないかしら?」
「そうですわね」
シェリーは厨房に入り、クッキーを焼いた。
出来上がったのは、すこし焦げ気味のクッキーだった。
「……いまいちですね……焼きなおすには……材料が足りませんわ」
仕方なく、シェリーは端が茶色いクッキーを袋に詰めてリボンをかけた。
「シェリー様、そろそろ夕食の準備をしたいので……」
「あら、申し訳ありません。すぐに片づけますわ」
「そのままで結構です」
料理係がクッキー作りの後始末をして、夕食を作り始めた。
シェリーは落ち着かない気持ちを抑えながら、図書室に行き、ぼんやりと本を眺めていた。
「シェリー様、夕食の準備ができました」
「今行きます」
夕食の場で、父親がシェリーに尋ねた。
「シェリー、お前はジル様と深い付き合いなのか?」
シェリーは飲みかけのスープを吹き出しそうになった。
「何故そんなことを聞くのですか? お父様」
父親のカルロスは言いにくそうに口元をゆがめたが、一息ついてから話し始めた。
「ジル様には婚約者がいるという噂だ。むやみに近づいてはシェリーのためにならないだろう」
「まあ、初めて聞きました。婚約者がいるだなんて」
シェリーは微笑んだが、その表情は不自然だった。
「ジル様にあったとき、直接聞いてみればいいだろう」
カルロスはそれだけ言うと、カモのローストを一口食べた。
「……そうしますわ」
シェリーは動揺を抑えるように、スープをゴクリと飲み込んだ。




