44.ホークが話せるようになりました
僕はラスとゴンに作戦を伝えた。
すると二人とも問題なくやれるという事なので、早速作戦を実行に移す事に。
僕達はオーガとホークの動きをしばらく観察する。
そしてオーガが隙を見せた直後、僕は指示を出す。
「ラス、ホークに分体を飛ばして拘束!」
ラスの行動は速かった。
ホークがオーガの隙に気付き、攻撃を仕掛けようとして発生させた一瞬の硬直。
そのタイミングを利用し、ラスは分体をホークに命中させた。
ラスの分体が翼にくっついたホークはバランスを失い、地面に落ちた。
オーガはチャンスと思ったのか、地面に落ちたホークに襲いかかろうとする。
だが、そこに立ちはだかる者が。
「…………おれが相手」
オーガの前に立ちはだかったゴンは、オーガに一撃を食らわせる。
すると一瞬にしてオーガを気絶させる事となった。
「…………アーク」
「うん、ありがとう二人とも! それじゃ、早速始めるとしようか、従魔の儀式!」
こうして僕はラスの分体によって動けなくなっているホークに対し、従魔の儀式を始めた。
それから数分間、ホークが少し抵抗しようとすれば、ラスがさらに拘束部分を増やしてくれて手助けしてくれた。
オーガの方はまだ目覚める様子もないので安心だろう。
そしてついにホークがその場でおとなしくなった。
ホークとの絆を感じ、従魔の儀式が上手くいった事を感じ取った僕は、ラスに拘束を解くように指示する。
そして起き上がったホークは、じっとどこかの方向を見ていた。
その目線をたどってみると、その先には倒れたオーガが。
どうやらこのホーク、どうしてもオーガを倒したいらしい。
オーガは合成用に生かしておきたかったのだが、仕方ない。
僕はホークに、倒れているオーガへの止めを刺すように指示を出した。
そしてオーガはホークに止めを刺され、力尽きる事となる。
……キィィィ!
そう鳴くと喜んでオーガの肉をついばむホーク。
そうか、このホークは肉が食べたかったのか。
きっとお腹が空いていたんだろう。
でも、だからといって格上の相手に挑む事はないんじゃないかな……。
せっかく倒したオーガなので、オーガの討伐証明になる部分は保管しておく事にした。
兄とオーガを仕留めた時も剥ぎ取っておいたので、これでDランク昇格試験分に必要なオーガ二体の討伐証明は出来るだろう。
まあまだテイニー分が足りないんだけど。
キィキィ!
「えっと……何て言ってるの、ヴァルド?」
「アーク、俺様は翻訳機じゃねーんだぞ……鳥の鳴き声なんて分かる訳あるかっ!」
「それはそうだよね……聞いて悪かったよ。となれば、まずはホークの合成をある程度する必要がありそうだね」
兄から聞いた話もあるし、合成をすれば知能は上がるというのはほぼ間違いと考えて良さそうだ。
そしてその影響で、合成を相当数行えば、本来言語を発せないはずの種族の魔物でも、言語も発する事が出来ると。
恐らくそれはホークにも言える事だろう。
ということで、僕はホークを合成して強くするように準備を整える。
ちなみに僕は使役したホークをホクと名付ける事にした。
ホーク同士を合成する為には他のホークを弱らせなければならない。
そしてホークは基本的に空中や高い所にいるので、なかなかラスやゴンでは攻撃の手が届かないだろう。
という事で、ホークを弱らせる為にはホクを使う必要があるのだが、ここで問題がある。
ホクはたまたまではあるが、ホークの中では最弱の部類に入るのだ。
一般的にホークを使役する為に必要なカリスマ力は10~30なはず。
つまり、合成を一回もしていない状態のホクでは他のホークよりも能力的に劣る。
いくらこちらが指示するとはいっても、そんな中で真っ向からぶつかり合ったら芳しくない結果になる事は想像に難くない。
ここは一工夫する必要がありそうだ。
「ラス、悪いけどホクの強化に付き合ってくれる?」
「うん、いいよー。ぼくはどうすればいいのー?」
「ホクに乗って欲しいんだ。そして相手のホークの近くまで近付いたら、分体を飛ばして動きを封じてほしい」
「……なるほどねーわかった。だいじょうぶだよーまかせておいてー」
うん、ラスが分かってくれたようで何よりだ。
早速僕はホクにラスを乗せる事に。
ラスはそんなに重くないから、体がそこまで大きくないホクでも乗せる分には問題ないだろう。
「……あっ、アークはん、あそこにホークがおるで!」
「ありがとう、メル。それじゃホク、頑張って!」
ホクはこくりとうなづき、ラスを乗せて空を飛ぶ。
……さて、上手くいくだろうか。
ホクは空を飛んでいるホークの少し高い位置に近付く。
まだ相手のホークはこちらに気付いていないようで、動きは比較的安定しているようだ。
そんな状態の相手にラスが分体を素早く飛ばす。
すると相手のホークにラスの分体がヒット。
相手のホークが地面へと落ちていった!
うまくいったようで何よりだ。
さて、合成をするとしますか。
僕はホクを呼び出し、ホクにホークを合成した。
合成は特に問題なく成功。
さあ、こんな感じでどんどんやっていくとしよう。
ホークを見つけては同様の作戦で相手のホークを拘束し、合成をしていく事を繰り返す。
相手のホークに気付かれる場合もあったが、その時もラスが相手の隙を見計らって分体を飛ばし、命中させていたので問題なかった。
さすがはラスだ。
実に頼りになるね。
こうして合成を繰り返す事、数十回。
ついにこの時がやってきた。
「……ラスを乗せていると、背中がヒヤヒヤするよ」
僕がラスを乗せる時に発したホクの言葉。
って、初めての言葉がまさかの文句だとはね。
まあラスの体はひんやりしているから、そう思うのも無理はないとは思ってはいたけど。
「ホク、喋れるようになったんだ?」
「うん、まあね。少し前からアーク達の言葉は分かってきてはいたんだけど、うまく言葉にならなくて。でも、もう大丈夫。アタイ、しっかり喋れるよ!」
ペラペラと話すホク。
ラスとリザがちょっとカタコトめいた言い方をしているし、ゴンに至ってはつぶやくようにしか喋らないから、こんなに話す魔物は新鮮だな。
この様子だと、滑舌の良さはレクに匹敵するんじゃないか?
「レク並みに饒舌なんだね、ホクは」
「レク? ああ、そこのネコの事か。まあ、アタイ程になればそれ位は話せるのは当然だね。それにアタイはレクとは違って戦えるしさ」
「んニャ? 今、ホク、あっしにケンカを売ったかニャ?」
「そうさ。なんなら今ここで戦ってみるかい? アタイ、負けないから」
「むむむ……そ、それは、やめとくニャ。仲間同士で争うなんてみっともない奴がやる事だニャ」
「何さ、逃げるのかい、レク? 負けを認めるってのならそれでもいいけど」
「ま、負けてなんかないのニャ! それならトークで勝負だニャ!」
ホクが何気なくレクにケンカを売っていく。
……出会った時から格上のオーガに挑んでいた事といい、ホクはどうやら相当好戦的な性格をしているようだ。
これは色々と賑やかになりそうだね……。




