38.ブレイブ・ディスターの建物の中に入ってみました
「もちろんアークのお仲間さん達も大歓迎だ。一緒に中に入って来てくれ!」
「それじゃ遠慮なくそうさせてもらいましょか。テイニーはんも行くやろ?」
「……あっ、はい、もちろんです!」
「おっ、そこの子もアークの仲間なのか。お名前は?」
「て、テイニーと申します。よ、よろしくお願いしますぅ!?」
テイニーは緊張の余り、最後の方の声が裏返っていた。
……本当、テイニーって人見知りだよなぁ、うん。
「あっしはレクと申しますニャ。以後、お見知りおきをニャ」
「おっ!? 喋るケットシーとは珍しいな!」
「ふふ、あっしの価値を分かるとはお主、なかなかお目が高いニャ?」
「あったり前よ! 喋る魔物自体の数が少ないし、いくら知能の高い魔物の種族とはいってもその価値は非常に高えんだ。……さあ、それじゃみんな中に入ってくれ!」
そう言うと兄がみんなをぐいぐいと押してくる。
そういう形で僕達はブレイブ・ディスターの建物の中に入る事になった。
建物の中は想像通り、中にいる人の声で騒々しかった。
こんな中にずっといる事を考えると何か気が狂いそうになるなぁ……。
ただ、少しこの中にいるうちに、この環境に慣れてきたみたいで、あまり辛さを感じない上に、一人一人の声を聞き分けられるようになった。
これは慣れたという事なんだろうか?
そう考えると慣れって怖いなぁ……。
「アーク、それにお仲間さん、この辺りに座ってくれ。飲み物でも持ってくる」
そう言うと兄はどこかへ行ってしまった。
僕達は兄が指定した場所に座って待つ事に。
そして座って待っていると、誰かが話しかけてきた。
「おや? 何のリボンもつけていない……という事は、お前さん、新入りかい!?」
話しかけてきたのは赤いリボンを腕につけた、金髪ロングヘアーの男。
まあ、ここにいるどの人も赤いリボンをつけているんだけど。
「そういう事になるかもしれないですね? まだどこのギルドに所属するか迷っている所なんですけど」
「おう、そうかい! お前さんみたいな強そうな奴は大歓迎だよ! それにしてもこのリザードマン、すごく強そうだ。ランドリザードにしては少し体格がしっかりし過ぎているし、もしかして、グランドリザードか、こいつは!?」
リザの体をじーっと興味津々で見てくる男。
やはり先程の兄といい、この男といい、僕達を見たらまずリザに目がいくらしいな。
「どうなんでしょうね? あと、このリザードマンは僕の従魔じゃなくて、この子の従魔ですよ」
「おぉ、それは失礼した! お前さんの魔物はどいつになるんだい?」
「僕の魔物はこの子とこの子です」
僕はそう言ってラスとゴンをポンと触った。
すると男は――
「スライムにゴブリン……? あ、あぁ……随分と個性的なメンバーだ……」
「おーい、みんな待たせたな! 飲み物持って来たぞー!」
いまいちな反応を男が見せた所で、兄がこの場に戻ってきたようだ。
「おぉ! もしかしてこいつらはザンの知り合いなのか!?」
「ああ、そうだ。コイツがオレの弟のアーク。そしてこの人がその仲間のメルにテイニーだ」
「ほう、なるほどなぁ! おれはビージャというんだ。よろしくな、新入り達!」
「いや、ビージャ、アーク達はまだうちに入ると決まった訳ではないんだ」
「そ、そうだったな。つい、気持ちが先走っちまったぜ……」
そう言って頭をかくビージャ。
それから兄は席についてみんなに飲み物を配る。
「これで少しは落ち着いたか。それじゃアーク、これまでの話を聞かせてくれよ。どうやって魔物を従えられるようになったんだ!?」
「あっ、うん。それはね――」
僕は今までの事をかいつまんで話した。
ただ、ここでは人があまりにたくさんいる場所でもあるので、ヴァルド関係の話だけは適当に誤魔化す事にはしたけど。
ごめんね、兄さん。
「なるほど、つまりアークはそのスライムとゴブリンを使役しているという事か! きっとアークなりの考えがあるんだろうな!」
「考えってほどではないけど……でも二人とも頼りになるよ。今まで何度も窮地を助けてくれてきた」
「……なあ、失礼で承知で言うんだが、本当にお前さんがザンの弟なんだよな?」
「……はい、そうですけど?」
ビージャがそう言って、じーっと僕の事を見てくる。
一体何を考えているんだろうか、この人は?
「ザンから色々話は聞いているんだ。知識量が豊富で、とてもすごい奴だって。もし魔物使いになれたらとんでもない力を持つ事になるだろうと口々に言っているのを聞いていた」
「そ、そんな事を話していたの、兄さん!?」
「……ハハハ、だってアークの知識量が豊富だっていうのは本当の事じゃないか。それにきっとアークの事なんだから、そのスライムとゴブリンは只者ではないんだろう?」
「よく考えれば、確かにそうだな。いくら強そうなリザードマンが仲間にいるとはいえ、ただのスライムとゴブリンではここに来るまで生き残るのは至難の業だろうしな……」
そう言ってまじまじと今度はラスとゴンの方を見つめるビージャ。
スライムやゴブリンはEランクの魔物であり、さらに同ランクの中でも最弱の部類に入る種族だ。
ここ、首都デコラーダに来る為には、どの道を通ってもDランク以上の強さの魔物が生息する道を通らないといけない。
その事を考えると、確かにここまでラスとゴンが無事にやって来れているのは不思議なのかもしれないな。
スライムだけはどこにでもいるのだが、それはただ元の数が多いから少数が生き残れているだけで、単体では全く強くない。
だから普通にスライム一体を従えて生き残らせるというのは非常に困難だろう。
やはりこの町では珍しいのか、僕が連れているラスとゴンには複数人の視線が集まっている。
そしてその魔物使いである僕にもそれなりの視線が集まってくる。
どうしてスライムがこんな所にとか、きっと連れのリザードマンに守ってもらってここまで来たんだとか、そういう噂話をする人が多くいた。
やはりラスを見ても、普通の人はスライムがここに来れる程の強さを持つとは思えないよな。
それが常識なんだし、仕方がないんだけど。
まあ、いい。
このギルドの雰囲気は大体分かった。
兄には悪いけど、そろそろお暇させてもらおう。
僕は兄やビージャに対して、ここにこれたのはリザのおかげで、カリスマ力に乏しい僕はリザに守ってもらったと説明する。
するとビージャは納得した様子だったが、兄は納得がいっていないような表情を浮かべていた。
「兄さん、そろそろ僕は失礼するよ。他のギルドも見て回りたいしさ」
「……そうか。もっとアークと話したかったんだが、残念だ」
「僕もそうなんだけど……まあ、この雰囲気じゃ、ね……」
「それもそうだよな……分かった。それなら今日の15時位に東門の辺りに来てくれないか? その時にアークと二人でゆっくりと話をしたい」
「……うん、分かった。必ずそこに行くよ」
僕達はこうしてブレイブ・ディスターの建物を後にした。
……さて、ここの大体の雰囲気は分かった。
他の三つのギルドはどんな感じなんだろうか?
僕が気に入る所があれば良いんだけど……。




