22.アルラウネとの決着が着きました
アルラウネは分身体のラスをツタで攻撃しようとする。
だが、ラスはするりとツタをかわし、そして逆に自らツタに吸着した。
「ラス、ゴンを拘束しているツタを溶かして!」
「うん、わかったよー」
ラスは吸着しているツタを踏み台にぴょんと飛び上がり、また別のツタへと飛び移る。
それを何回か繰り返し、ゴンを拘束しているツタへとたどり着く。
するとラスが吸着しているツタのあたりから白い煙が出てきていて……。
ギャァァァ!?
ツタを溶かされ、悲鳴をあげるアルラウネ。
そしてそれと同時にゴンはツタの拘束から解放された!
「…………助かった。…………感謝する」
「うん、がんばったよー、ぼくー」
ラスとゴンが言葉を交わしている。
というか、従魔同士って会話するんだ。
初めて見たかもしれない。
「…………おれも負けない。…………頑張る」
「うん、がんばってー」
そうラスが言うと、ゴンの体についた傷がみるみるうちに塞がっていく!?
えっ、何でそんな事に!?
あっ、どうやらラスがレクの自然治癒力アップ技の効果をゴンに分けているようだ。
というのも、ラスがゴンの体に吸着して、その周囲の傷からみるみるうちに治っていっているのだから、そうとしか思えない。
ラス、万能過ぎるだろ……。
ラスのおかげで元気を取り戻したゴンは、僕の元へ駆け寄ってくる。
「…………おれ、頑張る」
「うん、分かった。それじゃゴンを中心に頑張るよ! ラスはサポートをお願い!」
「りょーかいだよー」
そう言葉を交わすと、ゴンとラスはそれぞれ別方向に駆け出す。
さて、どうしたものかな。
「ゴン、アルラウネに向かって一直線に走って! ラスは近くのツタを溶かして!」
こくりとうなづいたゴンは、アルラウネに向かって真っ直ぐ駆け出す。
するとアルラウネはもちろんただでは近付かせるはずもなく、ゴンをツタで攻撃しようとする。
だが、ゴンはそのツタをサッと避ける。
アルラウネはさらに追撃しようと他のツタを使おうとするのだが。
ギッ……ギャァァァ!?
「よし、良いぞラス! 効いてる!」
「まずまずのあじだなー。あっ、ありがと、あーく。どんどんいくよー」
ラスは一つのツタの一部を溶かすと、また別の近くのツタを溶かし始める。
その度にアルラウネは苦しみ、そしてラスを標的にしようとツタを振るう。
だが、ラスは攻撃を素早く避けたり、持ち前の弾力性を活かして攻撃を受け流し続ける。
そうしているうちに、ゴンがアルラウネのすぐそばまでたどり着く。
「いけっ、ゴン! ゴブリンクラッシュだ!」
「…………必殺の一撃」
ゴンは持っている棍棒を思いっきりアルラウネの顔に叩きつける。
その攻撃を防御なしに受ける事になったアルラウネは、そのまま息絶える事となった!
ドサリと地面に落ちるアルラウネのツタ。
その様子を見て、ラスはバリア状態を解除し、分体と合体をした。
「あ、アーク……アルラウネを倒したのかニャ?」
「うん、どうやらもう大丈夫みたいだね」
「良かったニャ……本当に、良かったニャ!」
「レク、喜ぶのはまだ早いよ。ここは森の中だ。周囲に魔物がうようよいる。早い所、ここから脱出しよう」
「うんニャ。分かったニャ」
確かにシルフとアルラウネに勝ったのは嬉しい。
だが、こんな状態で他の魔物と戦うことになっては流石に気持ちが持たないだろう。
早い所、この森から脱出しなくては。
僕は疲れ切っているメルを背負って、森をゆっくりと歩いていく。
途中でゴンとラスがメルを運ぶのを手伝ってくれたので、だいぶ楽ができて良かった。
僕もだいぶこの戦いで疲れたからね。
しばらく歩いてようやく町に着いた僕達。
ここまで来ればもう安心だな。
「アークはん、ありがとう。もう自分で歩けるで」
僕はメルをおろす。
ちなみにテイニーが運ぶのを手伝おうとしていたけど、それは断っておいた。
だってテイニー、足がブルブル震えていて、人の事を心配していられる状態じゃなかったんだもの。
結局テイニーはレクに支えてもらいながら町まで歩いていた。
「すまへんな、アークはん。上級魔法使うの、思った以上にしんどかったわ。まさかこんなに迷惑かける事になるとは思わへんかった」
「過ぎた事は良いんだよ、メル。結局エルフの髪は手に入った訳だし」
「……そ、そやな。うん、過ぎた事は気にしても意味あらへんな! よし、それじゃアークはん、エルフの髪を寄越すんや。迷惑かけた分、今回は無料で大きさを変える道具を作ってくるで!」
「い、いいの、メル?」
「かまへんかまへん! むしろ今のウチに出来るのはこれ位や。今度、また何か別の形で恩返ししようと思っとるから、楽しみにしててな!」
そう言って笑みを浮かべるメル。
別にそんな恩を着せるような事をしたとは思えないんだけどな。
メルはメルの仕事をしっかりとこなしてくれた訳だし。
まさかアルラウネが乱入してくるとは思わなかったけど……。
僕はメルにエルフの髪を渡す。
するとメルはそれを持って店の方に駆け出していった。
僕達もゆっくりとメルの店の方へと向かっていく。
僕達がメルの店のすぐそばまで着いた時には、店にメルの姿はなかった。
どこかに出かけたんだろうか?
少しその場で待っていると、遠くから走ってくるメルの姿が見えた。
「アークはん、道具の作成にはあと二十分ほどかかりそうや。堪忍してな」
「かかりそうって事は、メルが自分で作る訳ではないんだ?」
「そりゃ当たり前やろ? ウチは商人や。自分で調合できる程の詳しい知識なんて持ってへん。持ってるのは商売に必要そうな基本知識だけや。専門的な事は専門家に任せればええ!」
まあ確かにメルの言う通りだろう。
調合の本をちょっと読んでみた事があるけど、あれをしっかりと理解するには相当な期間がかかるだろうと思ったからね。
自分で覚えるのは骨が折れるから、そこは専門家に任せた方がいいって訳だ。
「調合屋みたいな人と知り合いなんだ、メルは?」
「うん、そうやで! なんならちょっと会いに行ってみるか、アークはん?」
「……そうだね。しばらく待つだけっていうのも退屈だし、ちょっと会いに行ってもいいかな?」
「よっしゃ、それじゃ決まりやな! 早速行こか!」
そう言ってどこかへ進み出すメル。
ちなみにテイニーは少し休みたいという事で、この場でレクと一緒に待っているそうだ。
という訳で、僕はテイニー達をその場に残し、メルについていく事にした。




