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15.ヴァルドの事について話してみました

 ギルドに到着した僕達は早速掲示板に張られている紙を見る。

 昨日Eランクに昇格したので、Eランクの依頼が受けられる分、少し受けられる依頼が増えた。

 さて、その中でゴンを育成するのにちょうど良さそうな依頼は――



「……うーん、どれもいまいちだな」

「この時間になると美味しい依頼は残っていないのかもしれないニャ」



 レクの言う通り、掲示板にはいくつもの紙を引きちぎられた跡があるし、多くの依頼は既に受注されているのだろう。

 仕方ない。

 ゴンの育成は依頼関係なく行う事にしようか。



「ごめん、育成は依頼関係なく行う事にするよ」

「まあそれがええやろな。せやけどせっかくギルドに来たんやし、納品依頼だけささっとやっていかへん? 依頼の達成はできる限りしておいた方がええやろ?」

「うん、できるならそうしたいけど、お願いしてもいいかな?」

「任せとき! えっと、これとこれとこれ……あと、これもいけそうやな……。メモメモっと。それじゃアークはん、用意してくるから、受注だけいつものように頼むわ!」



 そう言うと颯爽とギルドを出て行くメル。

 本当、メルって活発に動くよな。

 その活動力は商魂から来ているんだろうか?


 ……とにかく、僕は僕のやるべき事をやろう。




 僕が依頼を受注し、そしてギルドに戻ってきたメルと金銭と物の交換を行い、依頼達成報告をする。

 うん、いつもの流れだ。

 ちなみに依頼を報告し終えたら、Dランク昇格試験の権利が得られる事を受付の人から伝えられた。

 そしてその内容とは、オーガ二体の討伐とのこと。

 オーガはこの付近にはおらず、確か首都デコラーダの東にある平原に生息していたはずだから、首都についたらちょうど試験を受けると良さそうだね。



「報告終わったよ。あと、Dランク昇格試験を受ける権利も手に入った。内容はオーガの討伐だって」

「オーガの討伐……ですか。Dランク魔物の討伐、何だか恐ろしいです……」

「Dランク昇格試験なんだから仕方ないよ。それにその依頼を受けられるのは首都に着いてからだ。それまでにゆっくりと強くなっておけばいい」

「……そ、そうですよね。わたし、頑張ります!」



 そう言って張り切るテイニー。

 まあテイニー達はサポートしかできないから、結局戦うのは僕とメルになる訳だけど。

 その事はあえて突っ込まない事にする。


 さて、テイニーにそうは言ったけど、僕自身は早急にDランク魔物に対抗できるようにしないとな。

 でないとエルフの髪が手に入らない。


 エルフは知性のある魔物で、集団で生活していることから、コボルトの時と同じような危険性を持っている。

 であればレクの技で平衡感覚を乱そうとする作戦を使えば良いのかと思ってしまいがちだが、必ずしもそれが良いとは限らない。

 森には様々な魔物が生息していて、その中でマンドラゴラは大きな音を聞くと襲ってくる習性がある。

 マンドラゴラはEランク魔物ではあるが、それが何体、何十体も襲ってきたら、さすがに手に負えなくなるだろう。

 そんな危険性があるから、エルフの髪を入手する安全策などなく、それ故、エルフ何体かと対峙しても、ある程度大丈夫な力をつける必要があると思ったのだ。




 依頼の報告を終えたので、僕達はギルドから出る。

 そしてゴンを育成する為に、ゴブリンが出現するという北東の草原地帯へと向かった。



「……うん、いるね。ゴブリン。ヴァルド、あのゴブリンの必要カリスマはどれ位?」

「そうだな……。ざっと見た感じだと、10~20といったところか」



 なるほど。

 ということは、ゴンを仲間にした地域よりも少し強いゴブリンが生息しているという訳か。

 これはゴンの成長に期待ができそうだな。




「……アークはん。さっき、ヴァルドと呼ぶ声が聞こえたんやけど? もしかしてアークはんの言っていた魔王ヴァルド似の妖精の事かいな?」

「えっ? 妖精……ですか?」

「んニャ? 話がよく分からないのニャ?」



 ……あっ。

 どうやらメルにヴァルドとの会話を聞かれていたみたいだ。

 これから一緒に旅していく中でずっと誤魔化し続けるっていうのはさすがに無理だよね。

 誤魔化し続けるのもどうかと思うし、ここは本当の事を言おう。

 長い付き合いになる訳だしさ。

 まあ最初は信じてもらえないだろうけど。



「えっと実はね――僕は魔王ヴァルドを使役しているんだ」

「……はっ、はぇぇ!? 何を言うかと思えば、そんな事を言うなんて、アークはんらしくないで? 冗談にも程があるがな!?」

「そ、そうですよ! 魔王さんが使役されるなんて話、聞いた事がありません! それにもし魔王さんが近くにいたら、きっとわたしなんて一歩も動けなくなりますよ!?」

「そ、そうだニャ! テイニーが魔王の近くで普通に行動できる訳ないニャ! それに魔王が近くにいたら威圧感で誰でも気付くはずだニャ!」



 うーん、やっぱり信じてもらえないよね。

 ここは一から話した方が良さそうだ。



「いきなりそんな事を言ってもって感じだよね。分かった、一から話すよ。信じてくれるかどうかはともかく、きっと話を聞いてくれれば、僕が何者で、どうして旅をしているのかが分かると思う」

「その言い方、ただの冗談って訳やないようやな。……分かった、聞いたる。テイニーはんもレクはんもそれでええな?」

「あっ、はい、もちろんです」

「アークの身の上話……実に興味あるニャ」



 僕はそれからしばらく自分語りをする事にした。

 僕がAランク魔物使いを父に持つ事。

 僕はその父に憧れて、幼い頃から魔物使いを夢見て、日々勉強に励んでいた事。

 だけど15歳の時にカリスマ力が全くないと言い渡された事……。



「か、カリスマ力が全くないやて!? 確かにそういう人もいるとは聞いた事があるけど、でもそれだったらアークはんが今カリスマ力持っとる事につながらへんで!?」

「そ、そうです! 15歳になってもカリスマ力がない人は、一生カリスマ力を手に入れる事がない。わたし、そう聞いた事がありますよ?」

「もしかして、その事が魔王ヴァルドと関わりがあるって事かニャ……?」

「うん、レクの言う通りなんだ。僕はヴァルドのおかげでカリスマ力を手に入れる事ができたんだ」



 僕は見えない状態のヴァルドと出会った。

 ヴァルドは姿が見えなくなる呪いにかかっていて、何故かその姿は僕だけが見る事ができた。

 ヴァルドから呪いを解いてほしいと言われるけど、その知識を得る為の力がないから無理だと僕は断った。

 するとヴァルドは僕が呪いを解く事に協力すれば、力を貸してやってもいいと言った。

 カリスマ力がないから僕には無理だと伝えると、ヴァルドは自身を使役するのにカリスマ力は全く必要ないから問題ないという。

 半信半疑だったけど、試しにヴァルドを使役する儀式を行ってみたら、その儀式は成功した。

 そしてヴァルドを使役し続けるうちに、僕にはカリスマ力が1増えた。

 それからラスやゴンを使役し続けて、今に至るという事を伝えたのだった。



「なるほど……そんな事情があったのかいな、アークはんには」

「そうなんだ。とは言っても、信じてはもらえないよね? だって見えない魔物というのも現実味がないし、それにその魔物が魔王ヴァルドだなんて言ってもね……」

「……確かに信じがたいのは事実やな。でもそれを踏まえて考えれば、あの奇妙な現象には納得がいくわ。アークはんとウチが戦った時の突風の事や」

「そうだね。実はあの突風は、僕がヴァルドに頼んで発生させてもらったものだったんだ。だから当然吹く風の予想がついた」

「せやろな。アークはんはまるで突風が吹くのが分かっていたかのように行動しておった。ウチは最初、アークはんが魔法を使っていると思っとったが、その割には発動が早すぎるし、威力の規模も大きすぎるしで違和感があったんや。そんな事が可能なのか正直信じられへんかったからな」



 魔法使いが使う魔法には詠唱がいる。

 特に強力な魔法を使う為にはそれだけの難しい詠唱が必要だし、無詠唱で放てる魔法には限りがある。

 だからこそ、メルは僕が突風を操っている事に違和感を覚えたのだろう。



「わ、わたしもそれならあのグリフォン事件の事は納得いきます!」

「グリフォン事件? 何やそれは?」

「実はわたしがレクとアークさんと一緒に森から出てきた時、グリフォンの死骸が空から降ってきた事があったんです。この近くにグリフォンなんている訳ないですし、そのグリフォンが死んでいるというのもあって、とても怖かったんですけど……」

「そのグリフォンは魔王ヴァルドが狩ったグリフォンというのなら話は辻褄が合うニャ。あそこにグリフォンが生息している訳がないからニャ」



 そういえばそんな事もあったね。

 その時は僕がみんな疲れているせいで変な光景を見ているだけだと誤魔化したけど。



「そういえばアークはん。この話が本当なら、ヴァルドはんは今もこの近くにおるんやろ? 試しに何かを攻撃する位の事はできるんちゃう?」

「あっ、確かにそうだね。それじゃあどうしようかな……」



 ヴァルドに指示をして、ヴァルドが何かしらの行動を起こす。

 そして言った通りの現象が起きれば、確かに見えなくても僕が言ったことの信憑性は高まるのかもしれない。



「ヴァルド、話は聞いてた?」

「ああ、聞いていたぞ。とりあえず、俺様が俺様であるという事を証明すればいいんだな?」

「そうだね。……でも、あまり変な事はしないでほしいんだ。できるだけ穏便に。でもヴァルドだと分かるような感じにできないかな?」

「……そうだな。なら、あの辺りに大きな穴を開けるとかどうだ? あの辺りからは生命の反応は感じねえから、誰にも迷惑かけないだろ?」



 ヴァルドが指差した方向をみると、そこには何も植物も生えていない、ただの茶色い大地が広がっていた。

 確かにあそこに穴を開けても、誰にも迷惑をかけそうにないな。



「それじゃ、みんな。あそこに今から穴を開けてもらおうと思うんだけど……」

「あそこか? 確かに生物もおらんし、大丈夫やろ。でも、何かが引っかかるんよな……」

「いいんじゃないでしょうか? って、わたしが判断する事でもないですよね」

「あっしも問題ないと思うニャ。やっちゃうといいニャ!」

「うん、分かった。それじゃ、ヴァルド、思いっきりお願い」

「おう、任せとけっ!」



 ヴァルドは喜々として空を飛び、上空に移動する。

 そしてそこから何か黒いエネルギーの塊みたいなものを発生させ、それを大地に向かって放り投げる。

 すると大地にそのエネルギーの塊が衝突し、そしてその周囲の大地はえぐられていき、大きな穴を形作っていく!



「ほ、ほえぇぇ!? は、ハンパない威力やな!?」

「す、すごいです……」

「し、信じられない威力だニャ……」



 三人とも呆然としながらも、その破壊の様子を観察する。

 しばらくするとようやくその破壊はおさまった。


 するとむくっと何か巨大なものがその場に現れる。



「えっ、何だろうあれ?」

「破壊したはずなのに、どうしてむしろ何かが現れたんでしょう?」

「……動いているニャ。あれは生物なのかニャ?」

「……あっ、思いだしたで! あそこは何百年も前にこの周辺を荒らしまわった危険生物、ジャイアントを封じ込めている場所なんやった!」

「えっ!? ってことはあれは……」



 僕はその現れた巨大な何かを見上げる。

 するとその何かの先端には顔らしきものがあるので、それが生物なのであろうという事が推測された。

 メルの言っている事が正しければ、もしかしたら僕は大変な事をしでかしたのかもしれない……。

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