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13.魔物の素材の使い道について聞いてみました

 コボルドがいるのは町の西側にある荒野地帯である。

 僕達はその荒野地帯にまで足を踏み入れている状態だ。

 すると早速あちこちにコボルドの姿が見受けられた。

 コボルドに見つからないよう、僕達はとりあえず岩陰に隠れている。



「テイニー、準備はいいかい?」

「……はっ、はい、大丈夫です!」

「それじゃ、頼んだよ。僕とメルで素早く三体コボルドを討伐する。そうしたら素早く町に帰る予定だ。いいね?」

「はい、分かりました!」



 そう言うとテイニーは少し僕達から離れ、レクと何か話している。



「味方の指定は忘れないようにしないとですね……。レク、早速いきますよ!」

「うんニャ。力を存分に発揮するニャ!」

「それじゃレク……平衡異常の奏!」



 テイニーがそう叫ぶと、レクは手に突然ラッパを出現させ、その音色を辺りに伝える。

 するとコボルド達は辺りをキョロキョロと見渡して、何か落ち着かない様子になっているようだ。

 これで技の効果はあったという事だろうか。



「それじゃ、メル。よろしく頼むよ!」

「ウチに任せとき! さっそくいくで……アイスニードル!」



 メルの放った氷の柱はコボルドを貫き、そして早速一体のコボルドを葬り去る。

 こりゃ僕も負けていられないな。



「ラス、分裂して頭と足に吸着! ゴンはその後すぐに腹部にゴブリンクラッシュだ!」

「りょーかいだよー!」



 ラスは二つ分身体を作り、素早くコボルドに近付き、そして僕が指定したコボルドの部位に吸着した。

 身動きがとれずコボルドが戸惑っている間に、すかさずゴンがとどめを刺す。

 よし、これで二体目か。


 あと一体……と思ったのだが、メルが既に三体目を倒して、倒したコボルドの剥ぎ取りを終えていた。

 あれっ、いつの間に!?



「アークはん、これでええんやろ? 討伐証明は?」

「……うん、ばっちりだ。それじゃ、早速町に戻るとしようか」

「せやな。もたもたしてると面倒な事になるからな。引き際は肝心や」



 僕は急いで自分が討伐したコボルドの剥ぎ取りを終える。

 こうしてあっという間に三体の討伐を終えた僕達は、素早く荒野地帯から抜け出した。





 しばらく歩いて、ようやく町に到着すると、今まで緊張で顔がこわばっていたテイニーとレクがぐったりとしてへたり込む。



「あー、疲れたニャ! 本当、緊張で頭がおかしくなる所だったニャ!?」

「で、でもわたし達、やったんですよ、レク! そうですよねっ、アークさん!?」

「うん、間違いなくやってくれたよ。頑張ったね二人とも。ありがとう」



 僕がそう言うと、二人とも照れたような表情を浮かべる。

 まあ、いつもダメダメと言われ続けた二人の事だ。

 褒められる事なんてそうそうないんだろう、きっと。



「そういえばアークはん。一応確認しておくけど、討伐証明以外の部位はウチがそのままもらっておくけど構わへんな?」



 そう言って袋づめにされた他のコボルドの部位を見せるメル。

 というか僕がもたもたしているうちに、メルはそこまでやっていたのか。

 どんだけ解体上手いんだよ、メルは。



「うん、もちろん構わないよ。というか、メルってどうしてそんなに解体上手いの? まるでプロのような手際の良さじゃなかった?」

「せやな……まあウチは商人やしな。魔物の部位を取り扱う事もあるんや。魔物の解体位はできないと話にならない時もあるんよ」

「なるほど……仕事の一環で魔物の解体を行っているのか、なるほどね」

「せや。商売上、自然と上手くならざるを得ないんやな。でもこの特技、結構役立つで? 参考までに、ウチが今回剥ぎ取りした部分だけでも1000F位にはなるしなぁ。儲かりますねん」

「せ……1000Fもっ!? 報酬金と同じ額じゃないか!?」

「まあこれはウチほどの熟練者が綺麗に剥ぎ取るからこの額というだけで、一般人が剥ぎ取ったらその半値位にはなってしまうやろな。せやけど、それでも結構大きいやろ? 稼ぎたいのなら、ただ魔物を討伐するだけでなく、金になる部位も持ち帰ることやな」

「なるほど……今度から気を付ける事にするよ」



 今まで僕は自分の従魔と同じ種族としかほとんど戦ってこなかったし、そしてその魔物はラスとゴンに合成してしまっていた。

 だから剥ぎ取りなんてする機会はあまりなかったんだよね。

 ランクが上がれば討伐依頼も増えるだろうし、その時は剥ぎ取りにも気を付ける事にしよう。



「そういえば剥ぎ取った魔物の部位ってお金になるみたいだけど、何か商品になるものなの?」

「せやな……例えばコボルドの毛皮とか、後は食用に使えるんやで?」

「食用って……美味しいの?」

「いや、そのままでは食べられへん。コボルドの肉は結構臭みがあるから、匂い抜きは必須やな。後は焼いて調味料で味付けすればそこそこ美味いで?」



 ふーん、そうなんだ……。

 あまり食料としては聞いた事がなかったけど、そういう用途があるもんなんだね。



「まあほとんどは毛皮や防具としての用途として使うんやけどな! 手間の割にはそんなに美味くなくて割に合わんし、面倒やから! 実際ウチは食用の部位は剥ぎ取ってへんよ?」

「そ、そうなんだ……。防具としては性能は良いの?」

「まあぼちぼちやな。頑丈さはいまいちやけど防寒性に優れとるから冬物の服として価値があるんや」



 なるほど……。

 防具として価値がなくても、普段着として価値があるといった所か。

 そういえば僕が住んでいた町でもコボルドの服が非常に高値で売られている時を見た気がする。

 確か冬の時だったかな?

 やっぱり防寒用に価値があるという事なんだろうな。



「そういえばアークはんは頑丈な防具は買わないんかいな? 魔物使いって魔物の素材を使った結構頑丈な防具を装着しているイメージがあるんやけど」

「うーん……正直まだそこまでお金に余裕がないというか。そんな事を言っているメルも一般人と変わらない服を着ているようだけど、それでいいの?」

「ウチはこれでええのや。あまり高い服を着ていたりすると、商売の時にお客さんが寄り付かなくなるねん。高い服を着て、いかにも儲かってますというようなアピールをしても良い事なんてあらへんで。謙虚さが大事なんや、謙虚さが!」



 ははは……。

 ぐいぐいと話を引っ張るメルが謙虚さ、か。

 何かすごく説得力がないんですけど。

 それに格式の高い店だったらそれなりの身なりは求められるだろうし。

 まあ、メルのお客さんは町の一般人がほとんどだから、そういう身なりの方が良いのかもしれないけどさ。



「防具があれば安心やけど、防具がなくても攻撃が被弾しないように立ち回ればええ。せやろ、アークはん?」

「それはそうだけど……」



 アイスニードルに被弾しそうになったメルの言葉じゃ正直信頼性はない。

 でも言っている事はもっともだと思う。

 僕もそういう考えだったから今まで防具の購入は後回しにしていた訳だし。



「一般人の服と見た目が似た良い性能の服とかはないの?」

「ない事はないで? ……せやな。確かにこれからアークはんと一緒に出かける事が増えるし、性能の良い服を着ておく必要性は増すわな」

「まあ性能が良いに越したことはないよね」

「せや! 素材集めを適当な魔物使いに依頼したろ。そしたらそれを使ってウチ用の防具を作ってもらえばええんや!」



 フフッと笑みを浮かべるメル。

 冒険者に頼んでまたトラブルにならないといいんだけど……。

 さっきはギルドで恨み節を言われていたからね。



「僕達が手伝おうか?」

「いや、アークはんは自分の防具を用意するとええよ。ウチはあんさんに迷惑はかけたくないしなぁ。もし素材が揃ったらウチに言ってくれれば知り合いの防具屋に頼んでおくから、遠慮なく言ってや!」

「うん、助かるよ。ありがとう、メル。その時はそうさせてもらうかもしれない」



 自分用の防具か……。

 確かにランクが上がるにつれて、強い魔物と戦う機会も増えるだろう。

 そしてその魔物の攻撃が自分に来ないとも限らない。

 そろそろ考え始めた方が良いのかもしれないな、防具については。

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