12.テイニーに作戦があるようです
ギルドに到着した僕は早速受付の所まで行って、解毒草を納品してきた。
報酬を受け取ってから、僕はテイニー達が待っている所に移動する。
「依頼達成の報告が終わったよ」
「ご苦労さん。それで他にも依頼はあるんかいな? 物の納品なら、またウチが手助け出来るかもしれへんで?」
「そうだよね。ちょっと見てくるよ」
僕は依頼掲示板の所へ行き、Fランクの納品依頼の紙を何枚かとってきて、メルに見せた。
すると……
「先程と同じような仕組みでいけばええんやろ? となれば……ふむふむ、これはいける、これもいける、というか全部いけるわ!」
「ぜ、全部いけるのっ!?」
「まあウチは天下のアツメル総合店やしな! 並大抵の物のだったら一通り揃えとるわな!」
そう言うとえっへんと威張った格好をするメル。
そしてその様子を見た周りの人達がひそひそと噂話をしている声が聞こえてきた。
「お、おい、あそこにいるのは鬼畜のメルじゃねえか?」
「おっ、本当だ。関わらないようにしねえと、また酷い事をされるぞ……」
そんな事を言っている男二人組だったが、その声はメルに聞こえたようで、ギロッとしたメルの鋭い視線がその二人に突き刺さった。
するとビクッと体を震わせたその二人はそそくさと遠くの方へ去っていくのだった……。
「メル、酷い事をされるってどういう事……?」
「いややなぁ、聞こえてしもうたか。実はあいつらはこの前ウチの依頼を受けた奴らなんやけど、約束期日に遅れてきおってな。ウチは訳あってその期日を設定しているのに、あいつらは期日に遅れても何食わぬ顔して報酬を要求してきたんよ。腹が立ったウチはあいつらに今回の報酬を渡す代わりに報酬の少ない依頼を追加で受けさせる事にしたんや。それを逆恨みしとるんやろな」
な、なるほど……。
時間に遅れた分は他で補填してもらうっていう考え方をしたって事か。
でもそれだったら、依頼を受けても受けっぱなしのまま逃げればいいんじゃ?
「メル、それだと依頼を受けて逃げられたりしない?」
「ああ、その心配はあらへんで。万が一そんな事をしようもんなら、全国のアツメル総合店を一生使えなくするからな。もちろんウチの店との連携店にも声かけは忘れへんよ。これはなかなか効くでー?」
な、なるほど。
つまりは一度メルの依頼を受けたら、決して投げ出す事は許されないという事か。
それは確かに効くだろうな。
というか恐ろし過ぎるだろう、メル……。
そしてその事を逆恨みしたあの人達はメルを見て、鬼畜のメルと呼んだと。
時間にルーズすぎるあの人達も、時間に遅れられてもただでは済まさないメルもどっちもどっちという所かな。
……うん、そういう事にしておこう。
「話がそれてしもうたな。それじゃウチはその依頼の物を用意しておくから、アークはんは依頼を受注しいや。そんでその後ウチから物を受け取ったらすぐに依頼を報告すればええよ!」
「うん、分かった。ありがとう、メル!」
メルはそう言うとギルドの外へと出て行った。
さて、僕はまず受付を済ませないとな……。
僕が受付を待つ人の列に並んで、受付を完了するまでに、メルはもう戻ってきていた。
その為、僕は受付を終えたらすぐにメルと金銭と物の交換を行い、すぐに受付に並び直す事に。
こうして依頼を受注して報告するまでに三分弱。
まさに商店チートといった所か。
そして依頼を受付に報告した時の事。
「……はい、確かに指定の物は揃っていますね。依頼の報酬はこちらになります。お受け取り下さい」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「今回の依頼達成によって、あなた様のギルドポイントが一定の水準に達しましたので、昇格試験を受ける事が出来ますが、いかが致しますか?」
昇格試験……。
つまりはその試験に合格すれば、僕はランクが一つ上がってEランクになる事が出来るという事である。
さて、どうしたものかな。
僕は一旦回答を保留にし、テイニー達の所へ戻る。
そして話し合った結果、試験を受ける事に。
ちなみにテイニーも試験を受ける資格があるとの事なので、一緒に試験を受ける事になっている。
受付にて昇格試験の手続きを済ませた僕達。
その後、メルと再び合流する。
「アークはん、昇格試験の内容は何や? また納品依頼か?」
「いや、残念ながらそうじゃないみたいだ。これを見てもらうと分かるよ」
そう言うと僕は昇格試験の内容が書かれた紙をメルに見せた。
するとふむふむとメルは納得したようにうなづいている。
ちなみに昇格試験の内容とは、コボルド三体の討伐である。
コボルドはスライムやゴブリンと同じ危険度のEランクに分類されてはいるが、だからといって簡単だとは言い切れない。
コボルドは集団で行動する事が多い魔物だ。
コボルドがEランク程度の脅威なのは単体での話。
そのコボルドを複数体相手するとなると、その実質的な危険度はDランクに達するだろう。
コボルド一体の討伐なら、はぐれコボルドを倒せば良い話だが、三体討伐が必要な事を考えると、少なくとも一回は集団コボルドの相手をしないといけなさそうだ。
「なるほど。コボルドの討伐やな」
「そういう事。今回ばかりは外に出ないといけなさそうだね」
「せやな。何か作戦はあるんか、アークはんは? いや、アークはんなら作戦立てるまでもないか」
「いや、そんなに侮れない相手だよ、コボルドは。そうだな……作戦か。コボルドは単体では強くないけど、集団での連携が厄介な魔物だ。その連携を断ち切る事が出来れば良いんだけど……」
コボルドをもし単体で相手する事が出来れば、正直ラスやゴンの相手ではない。
さて、後はどのようにその状況に持っていくかだが……。
「あ、あのぉ……」
「ん、どうしたんだい、テイニー?」
「わたし、ちょっと考えがあるんです。上手くいくかどうかは自信ないんですけど……」
テイニーが意見を言うなんて珍しいな。
何か良い案でもあるんだろうか?
「自信なくてもいいから、内容を言ってみて」
「はっ……はいっ! えっとですね――」
テイニーはコボルド分断する作戦について僕達に伝えた。
……うん、なるほど。
確かにその案はいいかもしれない。
ただ本当に出来るかどうかは不安だけど、やってみない事には始まらないだろう。
「分かった。その案でいこう」
「えっ、本当ですか!? で、でももっと考えた方が――」
「提案したテイニーがそんな事を言ってどうするんだよ? ……まあ、正直不安はあるけど、もし失敗してもきっと何とかなるさ。それにその作戦でテイニーとレクの本領が発揮される所が見れるのなら、これ以上の事はないからね」
今回の作戦はレクの技によってコボルドの認識を阻害し、連携を断ち切るという作戦である。
認識を阻害出来ている間に、僕やメルがコボルドを倒していくという作戦だ。
そんな内容だから、別に失敗しても普通にコボルドと戦う事になるだけだし、あまりやる事に対するリスクはないのだ。
「そ、そうなんですか?」
「うん、頼りにしてる。一緒に頑張ろうね、テイニー、レク!」
「……は、はいっ! わたし、頑張ります! レク、一緒に頑張りましょうね!」
「ふふ、ついにあっしが活躍する時がきたようだニャ。その活躍、とくとご覧あれ、だニャ!」
二人ともどうやらやる気十分なようだ。
もう出かける準備も整っている事だし、早速コボルドを討伐しに行くとしますか!




