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N.O.AH  作者: トマト


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9/9

沈む都市、別れる道

「最初は密航だったんだがな」


ガルドの一言で、

全員が数秒黙った。



海底都市ネレイア


現在進行形で半壊中。


宿は水浸し。


特殊部隊襲来。


国家機密。


兄妹喧嘩。


もう何が普通なのか分からない。



「……帰りたい」


リオが呟く。



「どこに?」


エナが聞く。



リオは考える。


軌道都市。


整備工場。


ボロいアパート。


普通の日常。



でも。



「……あれ?」



もう戻れる気がしなかった。



その時。


都市全域へ緊急放送。



《外壁損傷率17%》


《全市民は避難準備を開始してください》



ネレイスたちが慌ただしく動き始める。



ガルドが立ち上がる。


「船へ戻る」



その時だった。



昼間に助けたネレイスの少女が走ってくる。



「お願い!」



息を切らしている。



「お母さんがまだ外壁区画にいるの!」



リオは顔をしかめた。



嫌な予感。



めちゃくちゃ嫌な予感。



エナも同じ顔だった。



「リオ」



「なんだ」



「絶対助けるって言う顔してる」



「言う」



「知ってた」



ガルドが盛大にため息をつく。



「船を失ったら終わりだ」



正論だった。



でも。



少女の目を見る。



泣きそうだった。



リオは昔からこういうのに弱い。



「……行く」



ガルドが目を閉じる。



「チッ」



これは了承の意味だった。



エナが笑う。



「はいはい」



「善人御一行様出発〜」



ミラは何も言わず付いてくる。



こういう所だった。



この船の連中は。



全員面倒臭い。



なのに見捨てられない。



外壁区画



海水侵入。


崩落。


警報。



完全に地獄だった。



ネレイス救助隊が動いている。



リオたちは少女の母親を探す。



その途中。



エナがふと立ち止まる。



「……おかしい」



「何が?」



「爆破跡」



義眼でスキャン。



エナの顔色が変わる。



「これ排斥派じゃない」



全員が見る。



爆発の痕跡。



異常に正確。



軍事レベル。



「どういうことだ」


ガルドが聞く。



エナは嫌そうな顔をする。



「誰かが排斥派に偽装した」



空気が変わる。



つまり。



今回の事件そのものが、

誰かの作戦。



リオが嫌な予感を覚える。



最近ずっとだ。



事件の裏にN.O.AH。



全部繋がっている気がする。



その時。



ミラが崩れた壁の向こうを見る。



「いた」



少女の母親。



瓦礫に挟まれている。



まだ生きている。



リオが駆け寄る。



「大丈夫か!?」



だが。



瓦礫が重い。



びくともしない。



ガルドも加わる。



それでも厳しい。



その時。



エナが笑った。



「どいて」



六本の義腕展開。



最大出力。



「こういう時のための機械です」



バキバキバキ!!



瓦礫が持ち上がる。



リオが引く。



「お前人間か?」



「たぶん」



「たぶん!?」



少女の母親を救出。



間に合った。



少女が泣きながら抱きつく。



その光景を見て。



ガルドは少しだけ目を逸らした。



燃える村。



泣く子供。



助けられなかった人たち。



今でも夢に出る。



だから。



こういう光景を見ると苦しい。



その時だった。



都市全域停電。



真っ暗。



「またかよ!」


リオが叫ぶ。



だが。



今回は違った。



都市中央から光が上がる。



青白い光柱。



ネレイスたちがざわめく。



ミラの顔色が消える。



「……嘘」



「何だ?」



ミラは震える声で言う。



「N.O.AHの信号」



全員が固まる。



エナも。



ガルドも。



「なんで海底都市にある」



ミラの声がかすれる。



それは本来、

ユニオン最高機密のはずだった。



なのに。



ネレイアの中心から発信されている。



その頃。



都市最深部。



封鎖研究区画。



誰もいないはずの施設。



暗闇。



古い実験装置。



そして。



巨大なカプセル。



表面には番号。



《R-01》



機械音声が響く。



《接続率上昇》


《N.O.AH起動シーケンス開始》



長い眠りについていた何かが、



ゆっくりと目を開いた。

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