クローバーの約束
…
「すごーい! きみ、お絵かき上手だね。」
家族で旅行に来て絵を描いていると、女の子が話しかけてきた。
「これ、ひまわりでしょ?」
そう言ってスケッチブックを指さす笑顔は、ぼくが描いた向日葵のよう。
「ねえ、次はこれ描いて!次はこれ!」
と原っぱにいた鳥や花を描かせられた。
「すごーい! なんでそんなに上手なの?」
「…ぼく、絵を描くのが好きで、画家になりたいんだ」
「がか?」
「お絵かきさんってこと」
初めて自分の夢を言葉にして、恥ずかしくなってしまったぼくに、
女の子はクリクリの目を輝かせて、とびっきりの笑顔を向けてくれた。
「こんなに上手だもん!なれるよ! そうだ!」
その子は持っていた本をペラペラとめくると、中から四つ葉のクローバーを取り出した。
「これあげる!ふたつあるから、おねがいごとしよ!」
そう言ってぼくに四つ葉を渡した。
「わたしは歌手に、きみはお絵かきさんになれますように! 約束ね!」
―
(今思えば、あれが俺の初恋だったかもな…)
クスッ風月が笑うと、それに気付いた泉水が不思議そうな顔をして
「どうしたの?」と聞く。
「小さいときのことを思い出して」
泉水の顔を見て、ふわっと温かく優しい笑顔を浮かべる風月。
「それって…」
泉水が聞こうとすると、
「あっ、見つけた」
風月は四つ葉のクローバーを摘む。
「えっ、もう見つけたの?」
「私も見つけたよ!」
「うそ~ まだ見つけてないのママだけ?」
「ぼくが、いちばん!」
「じゃあ、ママのクローバーをみんなで探そうか」
「「はーい」」
「みんな、ありがとう!」
そう言って笑う彼女の顔は、あの時の女の子と同じ向日葵のような笑顔だった―




