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クローバーの約束~あなたのファンです~  作者: 阿衣真衣


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12/13

Sakura my love

朝の約束通り、一緒に公園へ向かう。

「桜樹くん、みんなからサインお願いされてたね」

「まあ、一言書いてって言われるよりは楽でよかった。」

「たしかに」


「さすがに誰もいないね…」

「寒いからな… 前野は大丈夫?」

「大丈夫! 防寒グッズ持ってるから」

「それで荷物多いのか。でも体冷えるといけないから、早めに切り上げよう……

 ―本当はずっと一緒にいたいけど…」

風月がボソッと呟いた最後の一言は、泉水の耳にしっかり届いていた。


「その…この前の返事なんだけど…」

「え?」

朝の泉水の反応から、あれが返事なのかと思っていたが、そういえば明確なことは言われていない…

(もしかして、歌手だから付き合えないとか? 友人としてがいいとか?)


「…私も桜樹くんが好きです。お付き合いお願いします」

「……ホントに?俺でいいの?」

風月の驚いた顔に、泉水はクスッといたずらっ子のように笑った。


「私はCloverの描く優しい絵が好きです。Haruにあたたかいコメントをくれる優しいところが好きです。

 そして、桜樹くんの穏やかな声が好きです。楽しそうに絵を描く姿が好きです。それから…」

「ストップ。 ありがとう… もういいから…」

朝と立場が逆転して、二人で顔を見合わせ笑う。


「そうだ。Cloverから伝言預かってるんだった」

「? それってどういう…」

「いつもコメントありがとうございます。”Spring”さん」

「!!」


卒業式の日、泉水は自分がHaruであることを、友だちに告げた。

どんな反応をするのか正直怖かったが、二人は驚きながらも、すごく喜んで、抱きしめてくれた。

「泉水すごい!夢叶えたんだね」「ずっと応援してるから!」

二人の言葉に胸が熱くなり、涙が溢れた。

「ありがとう」

秘密にしていた後ろめたさがふわっと溶かされ、二人の優しさに心が満たされる。


事務所の人と相談して、短大を卒業してアーティストを続けるつもりなら、顔出ししようということになった。

なので、それまではこのことを秘密にしてほしいと二人にお願いした。


「もちろん!逆に私達に言って大丈夫だった?」

「信頼してる人にしか、こんな秘密言えないよ。だから…」

チラッと泉水が風月を見ると、それに気付いた風月はニコッと笑った。

泉水と風月の様子を見て、二人はニヤリと笑い

「「なるほど~」」と声を揃える。


―『Sakura my love』

風月のことを想って書いたこの曲は、同じ電車に乗るクラスメイトの男の子に恋をした歌。


桜が舞う季節に彼のことを好きになり、いつも遠くから見ていた。

姿を見て嬉しくなったり、目が合うと熱くなって緊張したり、遠くから声が聞こえると耳が反応した。

顔を見るたび、声を聞くたび、心がときめいた。


そんな彼と、ふとしたきっかけで公園で会って話すようになる。

穏やかな彼の声を聞きながら二人で話す時間、二人でゆっくり空を眺める静かな時間。

私の話を微笑んで聞いてくれる彼の顔、空を見上げる彼の横顔。

いつも遠くから見ていたのに、隣に座っている奇跡。


一緒にいて色んな彼の顔を見ると、胸がきゅんとしたり、聞こえるんじゃないかと思うほど心臓がドキドキしたり…

でも、一緒にいる時間が増えると、どう思われているか考えて胸が苦しくなったり、この時間がいつか終わると思うとズキッと痛んだり…


同じ気持ちだったらいいのにな。と隣に座る彼の普段通りの横顔を見ながら何度も思った。


クラスメイトも友だちも知らない、公園で二人並んで話す大切な時間。

刻一刻と迫る彼との別れの時間まで、溢れ出しそうな思いに蓋をして、大好きな笑顔と声を胸に刻み込むように、大切に過ごした。


そして、卒業式の日。

女の子は誰にも気持ちを話すことなく、彼と一緒に見た空の写真を一人公園で眺めて、片想いのまま、気持ちに鍵をかけて心にそっとしまい、この恋は思い出になった―


そう。秘めたまま終わると思っていた片想い…

曲を書いている時は、まさかこんな幸せが待っているだなんて思ってもみなかったー


二年後…

泉水は短大を卒業し、Haruとしてアーティストを続ける決心をし、顔出しした。

知り合いからたくさんの連絡があったが、どれも応援メッセージでホッとし、胸がいっぱいに。


Haruの顔出し後、初リリースとなった『Promise of That Day』

ジャケットイラストには、四つ葉のクローバーをお互いに差し出す少年少女。

その後ろには、二重虹が架かっている。

イラストは、Haruがずっとファンの“Clover”が手がけてくれた。


あの時の少年少女の夢は、時を経て最高の形で叶ったー


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