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クローバーの約束~あなたのファンです~  作者: 阿衣真衣


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10/13

秘密を抱えたまま…

文化祭が終わったことで本格的に受験モードになり、泉水(いずみ)はアーティスト活動と並行しながら短期大学進学を、風月(かづき)は芸術大学進学を目指して忙しくなり、公園で会う時間が取れず、気付けば冬休みに入ろうとしていた…


「ねぇ風月くん、この作品私にちょうだい」「ずるい!私も欲しい」「いや、そこは友だちの俺だろ」

冬休み前日、文化祭で飾っていた風月の作品が欲しいと騒ぎ出した。

風月に本の表紙の依頼が来たことも、みんなが奪い合っている理由だろう。


「みんな凄いね~ まあ、卒業して桜樹くんが有名になったら自慢できるもんね」

「卒アル貰ったら、サインしてもらわないと」


(卒業か… そうしたらもう、桜樹くんとも会えなくなるのかな…)


みんなが騒ぐ中、風月が口を開く。

「悪いけど、誰にもあげられない。 あげたい人がいるから」

風月の言葉に、教室がシーンとなった。

(あの時と同じだ… 

 桜樹くんが絵をあげたい人か… もしかしてあの子かな…)


文化祭が終わり、風月が告白されることが多くなったという噂を聞いた。

実際、たまたまその場面を見てしまったことがある。(悪いと思い、すぐ立ち去ったが)

その時の場面と風月の言葉を思い出して、胸がズキッと痛む…

(秘密を抱えている私が、こんなこと思う資格ないのに…)


自分の気持ちに名前がついた風月は、前より泉水のことを目で追うようになっていた。

授業を受ける後ろ姿、友だちと笑って話す顔……仕草一つが気になり、公園で話したときの笑顔や声を思い出すと、胸が高鳴る…


(受験が終わったら、前野に気持ちを伝える)

あの日、自分の気持ちを自覚してから告白することを決めた。

本当はすぐに言いたかったが、余計な事を言って邪魔をしたくない。だから…


受験も一段落し、卒業前に気持ちを伝えようと決心した風月は、泉水に連絡した。

『明日、公園に来れる?』


久しぶりの風月からの連絡。本当はすごく嬉しい。でも…

「もしかしたらこれが最後かも…」

自分で言ってて胸が苦しくなりながら、震える指で文字を打つ―

『うん。行けるよ』


公園に着くと、もうすでに風月がいた。

「ごめん、待たせちゃった?」

「ううん。今来た」

久しぶりに二人になったので、また緊張してしまう。


「その、もし迷惑じゃなかったら、これ貰って欲しいんだけど…」

そう言って風月が取り出したのは、文化祭の時の作品だった。

「えっ、これ…」

「前野に貰ってほしい。」


絵を差し出し、真っ直ぐと見つめる瞳を見て、冬休み前の風月の言葉を思い出す。

ー「あげたい人がいるから」

(その”人”が自分だったなんて…)

「……ありがとう。すっごく嬉しい…」

喜びと緊張で胸がいっぱいの泉水。


「あと、聞いてほしいことがあるんだけど…」

風月の真剣な顔に、泉水の心臓がドクンと跳ね、緊張が走り、全身に力が入る。


「俺…、前野のことが好き…です。いつからとか分かんないけど、気付いたらっていうか… 

 その、別に今すぐ返事を出して欲しいって訳じゃなくて… もしよかったら、付き合うことを考えて欲しい…です」

(なんだこのダサい告白は…)話し下手な自分が嫌になる。

がらにもなくシュミレーションしたつもりだったけど、本人を前にすると言葉に詰まり、変な言い方になった気がする…


いつもクールな風月が、目の前で顔を赤くし小さくなっている姿から、真剣な思いが伝わってくる。

(この真剣な思いに、秘密を抱えたままいられない…)

「桜樹くん、私も桜樹くんが…」

―「泉水?」


これ以上隠したまま一緒にいられないと思い、緊張で震える唇をやっとの思いで開いたとき、兄の声が聞こえた。

「泉水? こんな所で何し… あっ」

風月が全身黒の学ラン姿だったので見えなかったのだろう、泉水一人だと思って話しかけたが、ただならぬ雰囲気を感じた兄は、慌てた。

「ごめん、泉水一人だと思って… その… そのまま続けて?」


(続けられるかー!)(いや、お兄さんに会った後でこんな話をするのは無理だろ…)

「その、さっきのこと、いつでもいいから… すみません。失礼します」

兄に一礼して公園を出る風月。


「泉水、ごめんね?」


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