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第七話 出会い編の舞台裏 策士コリンの憂鬱 ②

第七話の二つ目のお話です。


 村に戻りコリンはソニアを家に招待して、夕ご飯を彼女と共に取ることにした。

 彼女と二人で暫く過ごしていたら、あの時の音が彼女のお腹の音だったことに気づいたからだ。

 

(絶対逃さないぞ)

 コリンはソニアがキョロキョロと家を眺めている間に獲物を狙う野獣のようにギラリと目元を光らせた。

 食事の間も彼女に考える隙を与えないように矢継ぎ早に話し掛ける。

「ソニアさんに本当に感謝してるんです。今日は本当にありがとうございます!」

「ソニアさんこちらもどうですか?」

「デザートもあるんですよ。うちのシェフはすごいんですから」

「食べ終わったらこっちに来てください。話したい事があるんです」

「ちなみにソニアさんは婚約者とか彼氏とかいるんですか?」

「え?いないんですか?じゃあ好みのタイプは?」


 前半はソニアも柔軟に対応していた。

「いえいえこちらこそこんなご馳走いただいて」

「はい!いただきます。ほんとうに美味しい!モリモリいっちゃう」

「ありがとうございます。えぇ、本当に美味しい。まだまだ行けますよ」

「分かりました。何のお話でしょうか?」


 しかし後半になると少しゴニョゴニョと口籠る。

「婚約者?彼氏?……そ、そんなの、いるわけないじゃないですか!い……いたら一人寂しく旅してないですよぉ」

「好みのタイプ?えぇっとえっとですねぇ。ま……真面目な人でしょうか?」

 

(これは……いけるかも知れない!)

 コリンは勢いづいた。

 

 部屋にソニアを連れて行くと既に兄ちゃんは部屋のソファに腰掛けていた。

 コリンはそのままの勢いでソニアに話し掛ける。

 

「兄ちゃんを助けてあげて欲しいんです」

 

***


 そうしてラウルの特異体質について話をし、ソニアが浄化の詩を詠う為にラウルに近づく。

 二人は照れながら至近距離で向かい合っている。

 

(あぁ、兄ちゃんが幸せそうで何よりだ)

 

 ここ最近のラウルはコリンから見て本当に鬱々としていたから、こんなはにかんだ笑顔を見るのは久しぶり、いや初めてかも知れないと思っていた。そんな照れた笑顔の二人を見ているとコリン自身ニヤニヤと笑みが溢れてしまう。


 だが、痣を診るためにラウルの半裸にさせた時は、全く照れもないソニアに

(そういう気持ちはないのかぁ)

 と少し残念に思う。


 (僕自身イマイチ恋心という物には縁がないから、よくわからないんだけど)

 コリンは自分自身の気持ちを確認しながらラウルを見る。

 

 ラウルの方は特異体質についてソニアがあまり忌避感を持たないで接してくれていることにかなり好感を持っていることは見ていてわかる。

 ソニアの存在を一人の女性として認識しているのは明らかだ。


 

「そう!一気に解決よ!」

 ソニアがそう言うと、コリンとラウルは首を傾げた。


 話を詳しく聞けば、洞窟にいる魔獣をソニアとラウルで退治しに行こうと言う。


 魔獣を退治することとラウルの特異体質は別の問題だ。

 それをソニアはどちらも今できる範囲で解決しようと言うのだ。


 だがラウルはキョトンとしたままソニアを見つめている。

 それは、ソニアの考えを掴みきれていない訳ではないだろう。

 おそらく、自分に対してソニアが自分の力を惜しみなく使ってくれることに戸惑いを覚えているのだ。

 

(兄ちゃんも僕とおんなじじゃないか。……ほんと兄ちゃんは手が焼けるなぁ)

「じゃあ、ソニアさんはウチに泊まっていけばいいよ。兄ちゃんはもう帰って、明日の準備をしておいてね」

「え?明日?」

 ラウルはもちろん、当のソニアも驚いてコリンを見る。

「えぇ?そうだよ。もうこんなに暗いし、今からって訳にもいかないでしょ?」

 コリンが親指で窓の外を差し、ラウルとソニアはそれに釣られるように窓の外に視線を移す。


 時間は夜十一時を回っている。

「あぁ……。そうですね。すみません。お世話になります」

 ソニアは深々と頭を下げ、自分の荷物をひとまず纏める。

 コリンが合図をすると、客室用メイドが入室してきてソニアに退出を促す。


 そのメイドに案内されるままソニアは部屋の外へ退出し、ラウルもコリンと一言二言話をして帰宅した。



 翌朝、二人が洞窟に向かう姿をコリンは自宅からニヤニヤして眺めていた。


 二人が帰って来たら魔獣の問題は大方解決しているだろう。

 退治できたなら万々歳。できていなくてもおそらくソニアの口ぶりなら何か解決する方法を考えていて、それを施した状態で帰ってくるだろうとコリンは思っている。

 そしてラウルの特異体質のこと。

 これも、呪いなのはわかっていてすぐに解決するものではないこともハッキリしている。だから問題があるとすれば、日常生活での扱い方だろう。これが思いつけばラウルはもう少しポジティブに考えることができるようになるかも知れない。

 これもソニアの言動を思い返せばその方法がわかっているかのように思えた。


 そう考えると、二人が洞窟に向かったことによりほぼほぼコリンにとって問題は解決したも同然だった。


(二人の関係はどうなって帰ってくるかな?)


 自室から廊下に出れば村長であるコリンの父に頼まれた村の者たちが、自宅の廊下を行き来している。

 二人が戻って来たら自宅の大広間でお祝いの会を開くことになっているからだ。

 その会は魔獣が退治できれば祝勝会になるし、退治できなくても慰労会ということにして行われると父が言っていた。


(二人の仲がとてつもない早さで進展すればこの会が披露宴になるなんてこともあるかも知れないんだけど、兄ちゃんの奥手加減からは奇跡が起きてもないだろうな。それにソニアさんもかなり鈍感なようだし)


 コリンはため息を吐いて、一つ頷くと会の準備を手伝うことにした。


 

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