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第2話 ギルドへようこそ

 


「で、魔法ってのはその……体内にあるマナってやつと大気中に漂ってる魔素ってやつを組み合わせて使う、不思議な術ってことだな」


「はい。概ね合ってます。マナは体内で生成され個人によって蓄えられる量に限りがありますが、魔素というのは基本的に体内で生成することは出来ません」


「ほ、ほう……」


「魔素はどこへ行っても必ず存在します。ただし場所によっては魔素の濃淡の違いはあります。水の多いところだと水の魔素が多かったり、山の中だと土の魔素が多かったりします。でもトラム街道は、というかこの世界はどうやら魔素濃度が非常に高いように思えます。先ほど僕が使った魔法もあそこまで巨大な氷を作るつもりはありませんでしたし……」



 矢継ぎ早にそういうとダリルは渋い顔をしながら頭をぽりぽりしている。


「だが魔法……なんてそんなもん使ってるやつ見た事ねぇぜ?似ているものといやぁ精霊石ってのはあるが魔獣を氷付けになんてできねぇしな」


 なるほど。魔石的なものは存在しているらしい。

 そして精霊石なるものは生活の基盤となっているらしい。


「まあなんにせよ、坊主が強ぇってことはよーっく分かった!お前さんのおかげで命拾いしたぜ」


「いえ、こちらこそ倒れているところを助けていただきましたし、それに僕を見捨ててたらあの魔獣とも遭遇しなかったかも知れませんからね!」


「謙遜すんなって! どちらにせよ助けてもらったんだ。ありがとよ」


 人に感謝されたことなんて今までなかったフィンは、照れ笑いをしながらどういたしましてをした。



「さて、せっかくウルディウムを倒せたんだ。あの氷って溶かせるか?」


「もちろん溶かせますよ。ですが溶かしてどうするんですか?


 こんなウルディウム入り氷像を街道なんかに置いておいたら道行く人は間違いなくびっくりするだろうが。

 ちなみにわりと高位な魔法を使ったので、放置していても年単位で溶けないだろう。


「素材だよ。こいつの角は高値で売れるんだ。可能なら取っておいた方が良い」


「なるほど! 確かに素材は大事ですよね!わかりました、今溶かします!」


 フィンは右手を氷像に近づけて詠唱を開始する。


「−−大いなる火の加護よ、我に力を示し与えたまえ」


 右手を発光させ、そのまま氷像に押し当てると瞬く間に氷像が溶け出し、ウルディウムが地面に横たわる。

 −−もちろんすでに事切れている。 



「おお、こんなでけぇ氷を一瞬で溶かしちまうとは……。よし、後は任せな」


 ダリルは腰にさしてあったナイフを取り出し、角を生え際付近から切り取っていく。

 手際がとても良いが、行商人ってのは剥ぎ取りスキルみたいなものも鍛えるのだろうかと考える。


 角は全部で5本取れた。頭に1本背中に4本だ。

 そういえば襲撃時に角を打ってきたみたいだけど、あの後すぐ生えたってことなのかな。

 蜥蜴の尻尾みたいだ。



「ほらよ、坊主の分だ」


 そういって袋に入れて4本手渡してくれた。


「こんなに要りませんよ!ダリルさんがいたから角を手に入れる事が出来たんですよ!」


「いや、坊主がいなけりゃ手に入れるどころかおっ死んでたところだ。1本で十分さ」


「そ、そうですか……。それではお言葉に甘えていただきます」


 今の僕は無一文だし、売れるというのであればあるに超した事はないだろう。



「よし、じゃあそろそろ行くとするか!今ならまだ日が暮れる前に街に着けるだろう」


 そういいながらポケットからほんのり赤みを帯びている石を取り出し、魔獣の死体に振りかざし火の粉を舞い落とした。


「それは……?」


「これが精霊石だ。これは火種を落としてくれるやつでな、野営には欠かせないんだぜ。っていっても坊主には必要なさそうだけどな」


 どうやら死体を放っておくと疫病の元になるらしく、燃やすのがルールだそうだ。



 二人は竜車に乗り込みその場を後にした。





 ※※※※※※※※※※





 そんなこんなでやっとリヴィラの街に到着した。



「ここがリヴィラですか……。やっと着きましたね〜!」



 伸びをしながらフィンは町並みを見やる。

 建物は主に石やレンガなどを使用して作られているようだ。


「無事着く事ができて良かったな。俺は竜車を置いてこなきゃなんねぇ。坊主はこれからどうすんだ?」


「そうですね、まずはお金が必要なので素材を換金出来る場所に行きたいのですが……」


 ギルドにも行きたいがまずはお金と宿屋が先だとフィンは考える。


「それならギルドに行くと良い。換金もそこで出来るからな」


「そうなんですか! それはちょうど良かったです! では、僕はギルドを探してみる事にします!」


 時間的には恐らく夕方くらいだろうと見当をつける。日が沈む前に宿を決めてしまいたい。


「ギルドならこの大通りを歩いてりゃあ見つかるぜ。冒険者達が出入りしてるからな」


「分かりました! 助かります!」


「おう! それじゃあ頑張れよ! しばらく街にいるからなんかあったら声かけてくれや」


「はい! それでは、また!」


 フィンは一旦ダリルと別れを告げ、ギルドを探すべく大通りを歩き出す。


「はー今手持ちにあるのは魔獣の角とダリルのおっちゃんがくれたリンゴだけ、かぁ」


 もらったばかりのリンゴを大事にポッケにしまい、周りを見渡す。


「えーと、見た感じ色んな人種?というか種族がいるのか」


 大通りを行き交う人達を見てると人族以外の種族も歩いている。

 猫っぽい人たちに犬っぽい人たち。

 基本的には顔は人に近く、耳や尻尾が動物のそれである。

 他にも狼をそのまま人型にしたような獣人や全身鱗に覆われているリザードマンなんかもいる。


 その中でも特に猫耳と猫尻尾を生やしている女の子をフィンはつい目で追ってしまう。

 あの耳と尻尾をさわさわしたい気持ちに駆られるがフィンは堪える。

 まだ始まったばかりなのに牢獄送りになるのは嫌なのでね。

 あ、でも今の見た目ならイタズラで済むかな?……いややめておこう……。

 フィンは未来の自分にその役目を託し歩み続ける。


 するとやたら賑やかな建物をフィンは見つけ、ギルドだと目星を付ける。


「武具を装備した人達が出入りしてるし、多分ここかな?」


 扉を押し開けると−−


「さ、酒場……?間違えたかな……」


 フィンは困惑顔で周りを見渡した。


 すると入り口にほど近いテーブルから、巨漢が野太い声を飛ばしてくる。


「おい坊ちゃん! ここは子どもの来るとこじゃねぇぞ! さっさと帰ってママのおっぱいでも吸いな!」


 全く、見た目が子どもってのは意外に不便だなとフィンは感じる。

 巨漢と同じテーブルを囲う男達はそれに乗っかり笑うが、フィンはそれを聞き流し悪役が必ず言うであろう台詞をいってのけた男をみやる。

 なんだか本で見た事がある海賊ってやつの船長に似てるからあだ名は船長だな。うんそうしよう。



「すみません。どうやら間違えてしまったみたいです。もしよければギルドの場所を教えてはくれませんか?」



 しかし変に事を荒立てたくはないので、フィンは最大限の敬意を込めて丁寧に尋ねてみた。


 すると船長達はさらに笑い声をあげるが、さすがにいくら心を改めたフィンでも無駄に笑い者にされるのは癪である。

 ぐっと堪え、フィンは船長の言葉を待つ。


 すると船長が近寄り、


「ハハッ! それならここで正解だ! ここがギルド兼酒場 【魅惑の溜まり場亭】だ! 子どもがギルドに何の用だ?」


 船長がにやにやしながらこちらをじっと見やる。


 やっぱりここがギルドなのか! フィンは心の中で思いつつもこの船長とはあまり絡みたくない気持ちを胸に抱く。

 このまま絡んでいてもろくな事無いよな〜と思いつつ無視するのも良くないので、


「あの、換金が出来ると聞いてきました。換金場はどこにあるのでしょうか?」


 またもより丁寧に、フィンは尋ねる。


「換金は奥で出来るが、ぼっちゃんは何を持ってきたのかなぁ? この俺が査定してやるぜ!」


 まさにこれをお節介と呼ぶのだろう。

 相手にしても時間の無駄なのでフィンは奥へと急ごうとする。



「いえ、直接査定していただくので結構です! お心遣いありがとうございました! では!」



 と矢継ぎ早に立ち去ろうとするがフィンの手にしていた布袋を船長に奪われる。

 まさに海賊のする事だなとフィンは思った。


「あっ! なにするんですか!」


 と言うと同時に船長が中身を取り出し−−



「お、おいこりゃあウルディウムの角じゃねぇか。しかも4本もなんでこんな坊主が……。いや確かこれは……」



 船長が何かぶつくさ呟いているがこちらはそれどころではない。

 だから関わりたくないのに……とフィンは船長に背を向けたまま顔をしかめる。



「おいぼっちゃん。俺がこれを金貨1枚で買い取ってやろう。いいだろう?」



 あ、ちゃんと交換するのね。一方的な略奪じゃないだけ海賊よりマシか。

 しかしこの世界での貨幣の価値がまだわからないフィンにはこの話はリスクが高すぎる。

 金貨というくらいだから安くはないのだろうけども。

 だがここで断ってもなんやかんや言ってくるだろうとフィンは考える。

 さて、どうするか……


「あのぉー! それは僕の大切なものなんですぅー! 返してくださいぃー!」


「おい、あんまでけぇ声だすんじゃねぇよ!」


 フィンはわざと声を荒げ、周りも巻き込もうとする。


「いいからさっさとこの金貨持ってお家へ帰んな!」



 巨漢が無理矢理金貨を押し付けようとするが、



「ストーップ! アンセム、やめなさい! 早くそれをその子に返してあげて!」



 声の主とおぼしき女性が部屋の奥から近づいてくる。

 酒場の従業員だろうかとフィンは顔を向ける。

 −−そこにいたのは金髪色白巨乳という三拍子を揃えた美女がいた。いや美女を含めれば4拍子か。



「シ、シア!お、おいおい俺はなんにもしちゃあいねぇぜ……?」


「いいから返しなさい。この部屋からあなたをエリミネイト《排除》するわよ?」


 このやり取りだけで、とっても素敵なお姉さんだけど怒らせるのは避けた方が良いとフィンは悟った。


「わ、分かってるよ……。返すぜ……」


 船長がすんなりと布袋を返してくれた。


「面倒事を起こさないなら居ても良いけど……どうするのアンセム?」


「すまなかったな……」


 フィンに一瞥すると、船長もといアンセムは席に戻り酒を煽り始める。



「ごめんねー! アンセムはすぐちょっかいだしちゃう子だから許してあげて? 君は大丈夫かな?」


「だ、大丈夫です! こちらこそ助けていただきありがとうございます!……あなたは?」


「私はシア。ここでギルドの管理を任されてるの。ギルドに用があるそうね?」


「はい! 素材の換金と、あと冒険者になりたくて来ました!」



 その言葉にシアを名乗る女性は少し驚いた表情を浮かべ、そして天使のような微笑みをしながら言った−−




「−−ふふっ! ギルドへようこそ! 小さな冒険者さんっ!」










ここまで読んでいただきありがとうございます!

小説を書く難しさに驚愕の日々ですが、がんばります!

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