いい事言ったみたいなドヤ顔はムカツク
「シルビアさんなんか、半年も学園に来ていなかったですよね?」
…大きな声で正論を言えば皆頷くかと思ったかコノヤロー。
隣の兄の機嫌が急降下。むしろ冷気を漂わせている。
落ち着くためにシルビアは深呼吸をした。
すーはーすーはー。うん大丈夫。落ち着いたはず(混乱)
グランというスポンサーを失ったためか今日のマリアベルは普通の装いだ。薄ピンクのドレスに何枚もオーガンジーの透ける布をふわふわと重ね、その上に花などの造花を縫い付けた可憐な出で立ちが似合っている。ただし後ろの大きなリボンはいただけない。そのドレスだと子どもの発表会用のようで幼い感じだ。
「……」
彼女をエスコートしてきたと思わしき男性は、巻き込まれを恐れたかそそくさと人ごみに紛れる。
「出席日数だって足りているはずありません!」
町民学校ならそうだろうが、王立学園は貴族が多く通う学校だ。出席日数<学力なので、卒業レベルまで学力があると判断されれば卒業テストを受けて合格すれば学業修了の判定が下る。
成人前後の子どもとはいえ、貴族家に生まれた以上成さねばならぬ義務がある。その義務を遂行するためのお家の事情で欠席しがちな貴族への救済措置だ。
それをずるいと取られるのは納得ができない。
受けられなかった分の授業分の勉学は家庭教師などをつけて学園とは別にお金をかけて勉強しているのだ。
時間も足りず、やる事がいっぱいあってのその間を縫っての勉強になるし、楽とはいえない。
マリアベルの声が聞こえる範囲にいた大半の貴族の冷たい視線を浴びてもマリアベルは気が付かないようだ。
というか貴女のせいで、貴女の信奉者に拉致されたせいで半年も放浪する羽目になったんですけど?
だから通えなかったのよ!通いたくても、無理だったの!!
こっちはいろいろ痛い目にあいつつも、倍返ししたいのを我慢して穏やかに卒業パーティを閉めたいのに。
まだ強制執行しようとするの?「卒業パーティでの断罪劇」とやらを。
あれ、「痛い目」で甦るのが、アーウェンに誘拐されて暴行を受けた時の事よりコータとの冒険者活動で受けたレベルアップ時の成長痛なんだけど?あれ?涙出てきた。なんでだろう?
どういうこと?
カルラとロッテがシルビアを庇うように前に出て、マリアベルが怯えたように後ずさった。
や、前出ただけですよね?何、そのオーバーアクション。
そしてマリアベルが後ずさったため、後ろで友人達と談笑していた令嬢にぶつかり、令嬢はその令嬢をエスコートしていた令息にぶつかった。
ぶつかられてよろけた令息の手には二人分のワインのグラス。
どうやら飲食コーナーからたった今持ってきたのであろう。
その令息のグループは卒業おめでとうの乾杯待機中。
「あっ…」
令息の持つワインのグラスが手から滑り落ち、マリアベルの頭の上へ。
「………」
怒り心頭だったカルラとロッテも驚きのあまり勢いが消える。
兄にいたっては、冷気の温度が緩んだようだ。
ポタリ、ポタリ。
髪からワインの雫を垂らしつつマリアベルは唖然としていたが、すぐに怒りの感情に火がついたようだ。
「ひどいです!本当の事を言われて言い返せないからって、こんな嫌がらせ!ひどいです!」
「「は?」」
今、何て言った?
どう見ても今のは自爆。シルビア関係ないよね?
何、魔力高めてるの?
ここどこで今何中だかわかってるの?
「待って…!」
シルビアの静止もむなしく、マリアベルから魔力が立ち上る。
だめだから、こんな場所で魔法使ったらだめだから!
兄がシルビア、カルラ、ロッテを庇うように自分の身体の陰に引っ張り込むのと声がかけられるのは同時だった。
「やめたまえ」
マリアベルの腕を抑え、魔法をキャンセルさせたのは腕に「実行委員」と書かれた腕章をつけた青年だった。
「君、こういう場所で騒ぎを起こしたらどうなるかわかっているよね?」
他にも腕章をつけた青年達がかけつけてきてヒロインを確保する。
「非招待客の片割れを確保。これから本部に連行する」
え?招待をされてないのに来ちゃったの?、じゃさっきのマリアベルをエスコートしていた青年は?
「待って!わたしちゃんと招待されたんだから!招待状だってちゃんと!ちょっと、ねぇ?話聞いて?」
「その招待状がニセモノだと判明した。事情を説明してもらおう」
「いや~~~~~~~~。やめてやめて。乱暴しないで!」
別段そう乱暴にされた訳ではないのに相変わらずオーバーだ。
「実行委員」達に両腕をとられて退場していくヒロイン。
何だ、何だと周囲がざわめきはじめた時、
パン!パンッ!パシン!!!
何かの破裂音が会場に響き渡った。




