煽り耐性ってどうやったらつくの?
卒業式では爵位順に並ぶため、公開処刑かよと思うほど視線を集めたシルビアだが、幸いと式典中に声をかけてくる猛者はいなかった。
ひな壇の上の方の貴き方々のご尊顔は敢えて見ないようにしていた為、婚約者であった殿下の表情とかは知らない。答辞を読んだり代表して卒業証書を授与されていたり、それなりに向こうも忙しかったようだ。
大勢の卒業生に紛れているのかもしれないが、やはりグランとアーウェンの姿は見かけなかった。
一発殴りたかったのに。
卒業式の後は生徒会が主催する謝恩会だ。パーティなので、パーティ用のドレスに着替えなければならない。エスコートの相手とも合流だ。
それもあって、卒業生達は慌ただしく着替えに戻ったりするのでその波に紛れてシルビアも誰にも絡まれずにすんだ。
兄が張り切って用意してくれたドレスを着る。
このドレス見覚えあるんですけど???
ゲーム中にヒロインにプレゼントしてなかった?
…なるほど兄の好みでしたか。
もちろん着る人がシルビアなので細部は違っている。
マリアベルの時はフリルとリボンがもう少し多かった。
彼女の胸はささやかなので、盛る必要があったのだろう。
シルビアが着る場合はボリュームを押えないと間違ったら豚になる。ぶひー。
なのですっきりとしたデザインになっているが色味は同じようだ。
ロイヤルブルーの光沢のある生地に白いレース、それに金色の刺繍がほどこされ、白いレースにはところどころ深い青い色のリボンが通されている。
まぁいいんじゃないかしら?
くるりと、まわると鏡の中の美女もくるりとまわる。
まぁ、なんという美女でしょう。前世でこの半分でもいい、美人に産まれたかった。
「どうぞお姫様」
デレデレとした兄の腕に手をかけ、エスコートされて馬車に乗る。
妹ごときにこんなにデレデレして大丈夫だろうか?兄に恋人はいないのか?
兄の威嚇が効いたのか、会場に着くまで誰にも絡まれなかった。
ただ、ざわざわと落ち着かない感じだ。
耳が拾った言葉は「魔王」「軍部強化」「騎士団と軍部の対立」「徴兵」など不穏な言葉が並ぶ。
だがこうして、卒業パーティを開けるんだから、まだ余裕はあるのだと思う。
「カルラ!ロッテ!」
友人にも会えた。人妻になった彼女達からはほんのりと色気が醸し出されている。
「「シルビア!」」
久しぶりの邂逅に涙である。
「「本当に心配したのよ…」」
「結婚のお祝いに間に合わなくてごめんなさい…」
「いいの」「「いいのよ無事な姿を見せてもらえたから」」
魔王騒ぎのせいで、彼女達のように結婚を急がされた人も多いらしい。
シルビアは多分この時流に乗れないだろう。何しろ訳あり令嬢である。
このままずっと侯爵家でいかず後家をするのも兄の溺愛っぷりからしていいかもしれない。
つい緩い方向に流されたくなるが、シルビアは思い直した。
いつまでも妹が居候しているようでは兄のお嫁さんになる人も可哀そうだろう。
それに髭面の男の事もある。
侯爵家で捜索しているようだが、どうやらこの国から出奔したらしい。
足取りがプツッと途絶えたと父が無念そうに言っていた。
髭面の男の確保でもって、アーウェンの家やグランの実家にさらなる圧力をかける気満々なようだが、少々間が悪い。
何しろ魔王出現という非常事態なのだ。
先の二つの家が凋落するのは王国的に都合が悪い事なのだ。
そして直接的ではないが、シルビアが危害を与えられる事態になったきっかけのマリアベルは…。
「どうして高位貴族の方ばかり卒業できるのですか?おかしいです!!」
いや、お前、卒業テスト受けてないよね?
それに卒業生でもないのに、何故パーティに出ている?




