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負けないで ~君と私の余命日記~  作者: シラ猫


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7/7

6

 今日は一時帰宅する。予定は一週間。期間が過ぎれば一度病院に戻る。検査して症状が悪化してなければ無事に退院だ。


 私としては日の出と共に家に帰りたい。さずがに病院も親も許可しないことは理解していたので、そんば馬鹿な行動はしない。わたしは慎みがある女性なんだから。


 九時過ぎにお父さんが車で向かいにきてくれた。お母さんからは10時頃に迎えに行くと言ってたけど、だいぶ早かったので驚いた。早い分には助かるけど。当初、私としては徒歩での帰宅を考えていた。せっかく来てくれんだし、甘えておこう。ここで機嫌を損ねてはお小遣い作戦に支障が生じるからね。


 出張だったお父さんとは1週間ぶりの再会で、嬉しくて思わずハグしちゃいそうになったけど自制した。今夜にでも使うことになるんだし、一人娘とのハグ効果による感動を減らしてはいけない。お父さん的には久びりの再開で期待してたかもしれないけどね。打算な娘でごめんね。


 お父さんは寡黙だ。あまり自分から話しかけない。お酒を飲んで酔うとお喋りに変わるのが昔から不思議だった。こんなに喋らない人が会社でどうやって他人とコミュニケーション取っているのか気になる。


 助手席に乗り、車が走り出した。近所だけど見慣れた景色が懐かしい。まだ2か月くらいしか入院してないのに。


 うちから病院まで10分ちょいだけど、本が買いたくて、途中で本屋に寄ってもらった。お目当ての本は直ぐに見つかり会計しようと並んでいたら、会計時に急に現れたお父さんが黙って1万円札を出してから離れて行った。お釣りが9千円あったけど、合流した後でお父さんに渡そうとしたら、受け取らず私にあげると言って駐車場に向かいだす。スマートなやり取りに娘ながら父をカッコいいと思う。


 お母さんは本当に良い男を捕まえたと思う。同じ大学に通ってた時に一目惚れしたお母さんが猛烈にアタックして付き合うことになったと聞いている。私もお父さんみたいな人と結婚したいな。病気の都合で結婚は無理なんだけどね。


 家に着くとお母さんが玄関まで出迎えてくれた。この間の件があるからちょっと気まずい。少しだけ会話してから逃げるように自室に向かった。部屋に入ると不在の間も掃除してくれてたようで埃っぽさはない。ベッドに横になると我が家の匂いがして懐かしかに心が満たされていく。


「そうだ。みんなに連絡しておこう」



 起き上がってからスマホを手に取り、吉川君と親友グループチャットに『家に帰ってきたよ♪』とメッセージを送る。親友達からは直ぐにおかえりスタンプのメッセージがきた。私も直ぐにただいまスタンプを返す。


「吉岡君は忙しいのかな」


 友人から返事はきたけど、彼からはまだこない。向こうの都合もあるから直ぐに返事は来ないのは分かるけど、寂しい気持ちはどうしようもない。


 吉岡君はどこにデート連れてってくるのかな。


 困ったとき用に色々調べたけど、ヒントもないからどこに行くのか全く分からない。


 デートの定番の遊園地を思い浮かんだけど、彼は心臓が悪いからなぁ。

 刺激が強い場所は行けないよね。


 映画館も急に音が大きくなったりするし無理かも。

 そうなると運動系もダメだよね。


 私も急に息が苦しくなったりして、気を失ったりするけど、心臓病もやっかいだね。


 お互いに病気持ちだとデートもままならないもんだね。


 大人しく喫茶店でお喋りしててもいいけど。



 ★★★


 夜。


 忙しいのか彼からの返事はなかった。気にはなるけど今はそれよりも優先することがある。ミッションをクリアしないと。


 今夜の夕食は私の一時帰宅祝いとしてすき焼きだった。蕩けるようなお肉に舌鼓を打ちつつ、家族とたわいのない話で盛り上がった。あまり喋らないお父さんもお酒の力なのか今日は饒舌に話していた。



 ご飯を食べ終わったので、先にお風呂に入る。味気ない病院のお風呂と比べたら、久しぶりの我が家のお風呂は最高だった。別にうちの湯船が特別豪華ではない。ごくごく一般的なお風呂だと思う。だけど湯船に浸かった時のリラックス具合が天と地ほど違う。これが実家効果なのか。


リビングに戻ると洗い物をしている母に声を掛けた。


「お母さんもお風呂入ってきたら?」


「そうねぇ。洗い物も終わったし入ってこようかな」


これで計画通りに進めることが出来る。


お母さんが部屋を出てしばらく待ってからソファーでくつろいでいるお父さんに近づいた。



「お父さん、あのね。私悩みがあるんだ。お父さんじゃないと解決できないと思う」


「そうか。お父さんに任せなさい。何でも解決してあげるから」


「えっとね、お友達とお出かけする事になったんだけど、折角だから新しいお洋服が欲しいの。でもお小遣いが足りなくて助けて欲しい」


「ははは。なんだそんな事か。可愛いつかさの頼みなんだから、お父さんに任せなさい」


「わーい! ありがとう、お父さん。大好き」


お父さんの背後から抱き着いた。感謝の気持ちを伝えるのは大事だしね。


「つかさは本当に可愛いな。お母さんには内緒だぞ」


「うん! 二人だけの秘密ね」


「じゃあ部屋で待っていなさい。ここだとお母さんに見つかるかもしれないからな」


「分かったー」


 私が部屋で待っているとお父さんがやってきて白い封筒を渡すと直ぐに去っていく。


 封筒を開けると10万円入っていた。


 軍資金が手に入ったけど、誰とショッピング行こうかな。吉岡君には当日まで内緒にしたいし。ユッコは私と吉岡君の仲を反対していたからダメだし、咲ちゃんか若っちかな。後で二人に聞いてみよ。


 疲れていたのか割と早めに寝てしまったけど、吉岡君からのメッセージは来なかった。


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