表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に召喚されたら魔王でした 世界征服には興味ないけど勇者がイケメンだったので恋してみる  作者: 元 智


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/4

第3話 魔王の最初の仕事

第一章 魔王になった女子高生

第3話 魔王の最初の仕事


 翌朝。


 結奈は机に突っ伏していた。


「帰りたい……」


 本日一回目である。


 魔王城に来て三日目。


 まだ諦めてはいない。


 だが。


 現実は厳しかった。


 目の前には書類。


 右にも書類。


 左にも書類。


 そして。


 正面にも書類。


 紙しかない。


 昨日まで女子高生だった人間に処理できる量ではなかった。


「魔王様」


 リリアがお茶を置く。


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


 最近分かった。


 この国。


 挨拶を返すだけで感謝される。


 ちょっと心配になる。


「何か分かりましたか?」


 リリアが聞く。


 結奈は書類をぺらりとめくる。


「全然」


 即答だった。


「だと思いました」


 ひどい。


 でも事実だった。


 数字ばかりで頭が痛い。


 その時。


 執務室の扉が開く。


 ガルドだった。


「魔王様」


「おはようございます」


「おはようございます」


 老人は少し嬉しそうだった。


 やっぱりこの国。


 挨拶不足である。


「昨日のお話ですが」


「食糧問題?」


「はい」


 ガルドは一枚の地図を広げた。


 結奈も身を乗り出す。


「こちらが現在の農地です」


 地図には色が塗られていた。


 緑。


 茶色。


 赤。


 そして。


 赤が多かった。


「これ何?」


「失われた農地です」


「多くない?」


「多いです」


 ガルドは淡々と答える。


「戦争で失いました」


 結奈は黙る。


「元々は我が国最大の穀倉地帯でした」


 老人の指が地図をなぞる。


「今は人類領です」


 なるほど。


 分かりやすい。


 土地を失った。


 だから作物が作れない。


 だから食べ物がない。


 シンプルだった。


「取り返せばいいんじゃないの?」


 結奈が聞く。


 ガルドは苦笑した。


「それができれば苦労しません」


 そうだった。


 負けている側だった。


「兵力不足です」


「うん」


「武器不足です」


「うん」


「食糧不足です」


「うん」


「予算不足です」


「うん」


「希望不足です」


「最後なんか違くない?」


 違わなかった。


 老人は真面目な顔だった。


「かなり重要です」


 結奈は反論できなかった。


 実際。


 昨日見た兵士達もそうだった。


 疲れていた。


 諦めていた。


 負け続けている国の顔だった。


「現場を見ますか?」


 ガルドが聞く。


「見たい」


 即答だった。


 書類よりそっちの方が分かりやすい。


 一時間後。


 結奈は城の外にいた。


 今日は護衛も多い。


 魔王だかららしい。


 正直まだ慣れない。


 到着したのは畑だった。


 正確には。


 畑だった場所。


 土が荒れている。


 雑草だらけ。


 所々に焦げ跡。


「これ……」


「戦場でした」


 ガルドが答える。


「三年前です」


 三年前。


 結奈が召喚される前。


 魔族軍はここで敗北したらしい。


「それから放置?」


「人手がありません」


 返事は簡単だった。


 働ける人間は兵士になる。


 兵士が死ぬ。


 さらに人手が減る。


 畑が減る。


 食糧が減る。


 兵士が弱る。


 また負ける。


「最悪じゃん」


「最悪です」


 ガルドも否定しない。


 結奈は畑を見回す。


 広い。


 思っていたよりずっと広い。


 もったいない。


 素直にそう思った。


 その時だった。


「魔王様?」


 声がした。


 振り返る。


 一人の老人だった。


 農民らしい。


「こんにちは」


 結奈が頭を下げる。


 老人が固まった。


「え」


「え?」


「魔王様が頭を下げた」


 周囲がざわつく。


 何だろう。


 この国の魔王。


 相当偉そうだったらしい。


「畑なんとかならないかなって」


 結奈は聞いた。


 老人は少し驚き。


 そして。


 小さく笑った。


「昔は良い畑だったんですよ」


 その目は懐かしそうだった。


「小麦も採れた」


「野菜も育った」


「子供達も走り回ってた」


 老人の声が少しだけ寂しくなる。


「また見たいですね」


 ぽつりと言った。


 それだけだった。


 それだけだったのに。


 結奈の胸に刺さった。


 帰り道。


 結奈はずっと考えていた。


 どうすればいい。


 何ができる。


 魔法は使えない。


 戦争も知らない。


 政治も分からない。


 ただの女子高生だ。


 でも。


 何もできないわけじゃない気がした。


 執務室へ戻る。


 椅子に座る。


 そして。


 ガルドを見る。


「ねえ」


「はい」


「その畑」


「はい」


「復活させたい」


 老人が目を見開く。


 リリアも固まる。


 結奈は続けた。


「まずそこから始めよう」


 世界征服なんて知らない。


 戦争も分からない。


 でも。


 お腹が空いてる人にご飯を食べてもらうくらいなら。


 自分にもできるかもしれない。


 それが。


 魔王ユナが出した最初の命令だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ