第九回 ブランド力の最大利用
さて、前回の終わり近くでマーケティングにおける販促のことをちょこっと触れました。
CMや広告など、認知機会を増やす方法、宣伝のことですね。
なろうの作者が集うような場所で、こんなボヤきを聞いたことはありませんか?
「最初の作品はバカ受けして、ランキングの常連だったんだ。けど、その次の作品は鳴かず飛ばず……」
これは、戦略の失敗です。
二章で、『作者のブランドを大事に』と言っていますが、むしろ作品一つ一つの出来よりも作者というブランドの確立の方が大事なんだということです。
先のセリフは恐らく、フォロワー層の作者の嘆きでしょう。
彼は勘違いしているんです。最初の作品がバカ受けしたのは彼の手柄ではなく、フォローした作品の人気の反映に過ぎなかったという事なんです。
次にフォローした作品が最初ほどでなかったか、彼のフォローの仕方が本家ファンの不満を正しく掬い上げていなかったのでしょう。
ニッチの作者でも、フォロワーの作者でも、やり方は同じです。
自身の価値観を固めることが先決、土台が出来ていないのにその上に何かを建てても崩れるだけですから。
よく言われる「本を読め、」という言葉にしても、土台を作れという意味でしょう。
世間を知れという意味です。
しかし、世の中の仕組みなんぞというものは、正確なところなど誰にも解からないものですから、歪んでいたっていいですし、明らかな間違いだって、夢見すぎだっていいんです。この世界に対する、「こうだ!」と言える論理を形作れということです。ナナメ上にすっとんだ世界観でもいいです。
リアル世界に対する、「自身はこう思ってんだ、」という……、世界観を披露しようと思えばいつでも披露できるくらいには、世界に対する見解を頭の中に整理しておけよ、という事です。
それが出来ていることを前提に。
まずは、ヘビーユーザーを掴みましょう。
パレートの法則というそうですが、2割が8割を占める、というんですね。ライトユーザーが8割とヘビーユーザーが2割と計算すると、ヘビーユーザー2割が占める売り上げは全体の8割だというんです。
作家に当てはめると、熱烈なファンという層が2割です。その2割が作家の全作品の8割を買っているということです。逆にいえば、ライトユーザー一人一人となると、いかに貢献度が低いかという事です。
新作が出るたびに毎回必ず買うという熱心なファンが2割に、一度きりの購買や、数回は買った、今回初めて買うというファンが全部合わせてその4倍。一人一人が買う量など微々たるものだと解かりますね?
しかも、次も買うという確率となると、非常に低いのです。
ターゲットとすべきは、この、ヘビーユーザーです。
常に作者の作品にはチェックを入れてくれるという層です。
ここを大事に、そして少しづつでも増やしていくようにするのです。
彼らが、作者のブランドの何を気にいってくれたのか、そこが大事なのです。
作者自身のブランドが一番大事だと言う意味が、これで解かっていただけたものと思います。
彼らを裏切ることが、一番拙い戦略です。だから、作者本人の態度がブレブレではいけないんです。