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EQ @バランサー  作者: 院田一平
第2章
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"Unspoken Truths"

挿絵(By みてみん)





俺は社長と桜井会長を連れて、池野が技術実習生4名

からのヒアリングをしている社長室へ戻った。

一人目の話し初めの時より、かなり打ち解けている

様子だ。彼らのテーブルの上には

缶コーヒーが並んでいる。下野の気転が観える。


「Anh ấy có tốt với các anh không?

Có vấn đề gì không?

(彼は親切かい?問題ないかぃ?)」


「Vâng. Rất là thân thiện. Anh ấy hiểu

câu chuyện của chúng tôi.

(とても親切で、私たちを理解してくれます)」


俺の声掛けに嬉しそうに言う。


「なんてなあ、松田さんもベトナム語を

喋られっとねえ?こりゃ頼もしわあ」


「社長、桜井さんから聞いてませんか?

これはうちの商売ですので、言葉が分からないと

話になりませんよ」


「はいはい。そげな事ですなあ」


4人目の話しも済み、下野は手帳に書いた

メモをにらみながら、


「どうしましょう?

彼達はもう帰ってもらった方が・・」


「おうそうだな。では社長、

今日は解散させてください」


彼ら4人は礼儀正しく、

挨拶をして出て行った。



「しっかりと挨拶もできるいい子達じゃないですか。

先ほど申し上げました通り、この下野の話を聞いて

あげて欲しいのですが、先にもう少し私から

話させていただきます。一般的な話なんですが、

来日後3ヶ月目くらいにこんな問題が多いのです。

考えてみてください、今までとは違う環境で生活を

はじめて、ホームシックにもなりますよ。

彼達は基本に真面目なので、プレッシャーも

あるんです。時間にルーズなのは体内時計が違うん

ですよ。我々とは。タバコを吸うの、休憩時間が

どうの、分量が違うのなどは、こう言っちまえば

シカラれますが、そういう奴らだと頭に置いた上で

、ルールを作らなければいけないモノなんですよ。

外国人ワーカーを入れてるとこは何処も同じです。

社長の所の奴らが特別に問題児じゃないんですよ。

生意気に耳の痛い話をして申し訳ございません。

あとは下野の話を聞いてあげてください」



「はぁ・・こりゃ・・こちらこそスマン事で・・」



「・・では、私からお話を・・」



下野は俺の顔を見ながら話しだした。



「まず、松田からも御座いました通り、

私も彼らは特別に問題児とは思えません。

問題のタバコも日本人の先輩の真似をしている様子で、

就業規則には喫煙や休憩時間の詳細が無く、

注意されたことも無いと言ってました。

そして、体調不良を理由に休んでいる

ことなのですが、

新しく彼らのポジションに来られたアライさんに

問題があるようでがお心当たりはございますか?」


「んにゃ・・ばってん、新井は店んし(店担当)

じゃたば今は戻って来たのは知ってますがの・・」


「なるほど。すみません。アライさんは今日は

お休みという事ですのでお話が出来ませんので、

この件は一方的なお話になりますが・・

続けてよろしいでしょうか?」



「はあはい。聞かせてくださいなあ」



「あくまで彼らの言い分です。

でも無欠勤のレ・バオさんも言っていましたので

ご参考まで。アライさんは非常に厳しく、

手を挙げるそうです。げんこつ程度とは

言っていますが、彼の日本語も聞き取りにくく、

その為、聞き間違いや聞き直しの度に、

キツク怒られるそうです。

月曜日がそのアライさんが工場の彼達の

レーンに入るそうですが、

月曜日の仮病はその為です」



「じゃたとですかあ・・そりゃまた・・」



「もう一度言いますが、この話はあくまで彼ら

からの話しで、アライさんにも言い分が有ると

思いますので、ご了承ください。あと、

食事の件で、彼達の自炊の件で、可能な限りの

改善をしてあげて欲しいのですが・・」



「はあはい。何をどげなごと?」



「はい。どうやら宿舎はオール電化の

ご様子ですので、電気の容量UPと、

2口電気コンロを用意してあげたいのです。

私は見ていませんので何とも言いにくいのですが、

おそらくは調理とは程遠いコンロが1つ有る

だけかと想像しています。

これは4人共なのですが、タンさんが一番ひどく、

着任時から8キロも体重を落としています。

昼食も出来ればお弁当を持参したいそうです」


「でんきコンロを2つですかね?

今は1つという事ですね?それで2人は

何も出来んごたるね・・」


「それで彼らも彼らなりに考えておりまして、

現在家賃を2万円支払っているそうなのですが、

自分たちで家を借りてもいいのかと、

それにつきましては、私はダメですと

答えたのですが、

どうやら近くに同じベトナム人実習生が済む

アパートが在るそうなのですが、

そこは1LDKで2口ガスコンロでしかも

家賃が32,000円で1人は16,000円なのだそうです

。社長、宿舎は賃貸アパートですよね?

それならば、そのアパートを変えられる事も

お考えいただけないでしょうか?」



「そうだねえ・・なんごて

そんアパートにしたかねえ・・」



「社長、大変失礼な事を申し上げますが・・

先ほど少し調べたのですが、彼らの言う通り、

自転車で30分圏内なら10程のアパートの

空情報がありまして、

同条件で全て3万円台です。それと・・

今の彼らのアパートの情報も有りまして・・

32,000円とネットでは掲示されています。

つまり彼らは余分に4千円を会社に

取られていると思っています・・」



「んにゃ そげんなこつは無かですたい。内どもは

そんなよそわしか(汚い)事はせんですう」


<おいおい・・まさかそこもか?>


「社長もしかして、その宿舎の手配も組合か

北川氏ではないですか?」


「ですたい。北川なもんでえ。 あっ

まさか松田さん、あんし(北川)はあ・・・・」


「ね。かもしれませんね。社長、どうでしょう。


うちと契約しませんか? どうもズサンが過ぎる

様子ですので、ハナっからやり直しましょうよ。

桜井会長のよしみだからといって

こればっかりはボランティアでは出来ませんので」



「んにゃこわ、逆にお願いできますかあ?」



「勿論です。博多に営業所が在りますんで、

そこの者を寄越しますよ。それと、

北川氏の件は、社長とのご関係もあるで

しょうから、こっちに任せて欲しいのです。

調査もしますので、白黒ハッキリするまでは、

今まで通りしといてください。

1週間ほどの事ですので」


「はあはい。わかりましたあ。

どっちにしてもあんし(彼)はまだ

10日はベトナムじゃけん」



社長は、実習生の宿舎は担当をつけて、

本人たちが生活し易い物件を探すと言い、

月曜日にも社員を集めて、事細かい職場の

規則を見直して、ルール作りもすると。


そして今夜は早速、彼らを焼肉に

連れて行くという。



まだ憶測の段階ではあるが、

北川氏のそれらもある種のパターンであり、

あんな彼らからも、身内の会社からも金を

抜く事にだけ集中している。ただ、

この個人の抜きなど可愛いモノで、

上には上がいる。

利権のるつぼとなったこの制度自体が

大問題なのだろう。

俺らはそれを知りながら、

その決まってしまった規則の中で『奴らの幸せ』

を見出さなければならないのだ。


下野には期待大だ。



電車じゃ不便だと、桜井会長が博多まで

送ってくれた。

途中連絡を入れたので、そ少し遅くなったが、

GSA博多の山下大介が迎えてくれた。

大介は大手キャリアショップの店舗展開に

尽力した奴だが、健太郎のラブコールで

うちに来てくれたお墨付きだ。


もつ鍋を突きながら一通りの佐世保の話を伝え、

やる事を言う前には自分から手順を話してくれた。

疑わしい北川の裏は、既に車の中でベトナムにも

東京にも連絡をしている。

あとは答えを待つだけだ。



「大介じゃそれで頼むわ。んで?

沖縄の件はどうなんよ?」



去年の年末ミーティングの時に、沖縄進出の企画書を

上げていた大介を想い出した。その時は俺が口を

挟むことは考えていなかったが・・


「はい。やはり増える一方でして、そろそろ

出張経費を考慮すると、やはり何某かの事務所を

構えた方が良いかと」


「まあ銭金もあるけどよ、現地のスタッフを雇う事が

また繋がるモンだかんよ。健太郎に俺からも言っとく

からよ。多分、大介が当面

忙しくなるだろうが頼むぜぇ」


沖縄での実習生の需要が増えているのは圧倒的に

建設業が多く、チィとした沖縄バブルを感じている。

時期的にはちょうどいいと

大介の後を推すことにした。




翌朝、1週間ぶりの神戸へと新幹線に乗った。







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