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パーティを引退したら、勇者様がメイド服を着て玄関に立っていました  作者: 28号
プロローグ

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プロローグ


「メイドは、まだ募集しているだろうか?」


 そう言って玄関先に立っていたのは、かつて旅を共にした勇者様であった。

 

――それもなぜか、メイド服姿の勇者様である。


 イザベラは先月買ったばかりの新居の入り口で立ち尽くし、何者かに幻影魔法をかけられた可能性を考えた。


(いや、さすがにないか)


 もし幻影魔法だとしたら、さすがにかけられた瞬間に気づくはずだ。

 ならばこれはどういう状況かと思っていると、勇者様ことクリード=グレイシアが紙を差し出してくる。

 とんでもない状況だが、それでも彼は凜々しく悠然としていた。

 整った顔立ちも、長い銀色の髪も、引き締まった体躯も、すべてが魅力的な男である。ただ、メイド服がそれを台無しにはしていたが。


「張り紙を見てきたのだが、もう決まってしまっただろうか?」


 持ち前の凜々しい顔立ちに、クリードは切ない表情をのせる。

 彼のファンが見たらよだれが出そうな表情だが、いかんせんメイド服なので違和感が半端ない。


「きまってはいない……けど」

「ならば、面接をお願いしたい」


 かつて共に冒険し、世界に仇なす魔王を倒したときと同じくらい真剣な表情で、クリードは詰め寄ってくる。

 近くに寄られると、クリードがいつも纏っている香水が鼻をくすぐる。

 その香りからして本人のようだと思ってから、イザベラはハッと気づく。


「クリード、あなた何か呪いにかかっていない?」

「そうらしいが、害はないからと放置している」


 絶対害がある。

 何せ世界を救った勇者が、メイド服姿である。


「とりあえず、呪いを解くから中に入って」

「それは、採用ということか」

「今はそれどころじゃないと思う」

「採用してくれないと、入らない」


 なぜだか逆に、雇用側が脅されていた。


「そんな格好を誰かに見られたら、あなた社会的に死ぬわよ」

「イザベラに雇用してもらえるのなら、それでも構わない」


 どうやら彼にかかった呪いは、常識的判断を曇らせる物らしい。


(これは、一刻も早く解呪しないと)


 そして目の前の英雄が社会的に死なないように救わねばと思い、新居に招き入れる。


「雇用か?」

「そうよ、だからすぐ入って」

「ありがとう、精一杯働く」


 そして彼は、イザベラがかつて恋した笑顔を浮かべる。


(くっ、メイド服姿なのにやっぱり格好いい)


 いっそ百年の恋も冷めてほしいのに、無理そうだとわかってイザベラは落ち込む。

 そもそもパーティを抜けたのだって、この面倒な思いを捨てるためだったのに、どうしてこうなったのか。


「それで、最初の仕事は? 掃除か? 洗濯か?」

「まず、着替えね」


 ため息と共にそう言うと、クリードはきょとんと首をかしげた。

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― 新着の感想 ―
シュールな始まりで読むのが楽しみです! ところで、あらすじがパーティが魔王になっちゃってる感じですが、お間違いではないでしょうか?
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