諦めと決意
ちょうどいいから一週間後に迎えに来る。
臣君はそう言っていた。
あと五日、四日、三日、二日とカウントダウンのように過ごした。
シェイド様とは会えないままで不安ばかりが募る。
明日が約束の日という時に、臣君の言葉の意味に気付く。
————ちょうどいいから
あぁ、そうか。
臣君が私を連れていくと言えば結末は変えられない。
あの人は私を諦めてなんかなかった。
結局どこまでも何度でも私を攫うだろう。
————どうせそうなるのなら。
真夜中珍しくシェイド様のお部屋から物音がした。
良かった、最後にお顔が見れる。
このお部屋に引っ越してからケイトさんが密かにクローゼットに準備している物を私は知ってる。以前たまたま開けてビックリした。
すんごく可愛い下着達。
妖精のような淡い色合いの可愛い下着をつけて、お揃いのネグリジェを着る。
めちゃくちゃミニなので足がスースーするけど頑張るのだ。
鍵を回すとカチャっと軽い音がして、ドアが開く。
もう一度髪を梳かしてくればよかった、とかちょっとだけお化粧してくればよかった、とか不安なきもちばかり湧いて来て心臓がバクバクしてる。
シェイドさまのお部屋は真っ暗で、私の部屋の明かりが刺し込む。
「リリ?どうした?…………は??」
直ぐに駆け寄ってくれたシェイド様が私の格好を見て固まっている。
ふふ、可愛い。この人が好き。大好き。
「今日は、シェイドさまと一緒にいたいの」
「は?まて、リリさん!?」
シェイド様に抱きつこうとするとシェイド様は何故か両手をあげて後ろに下がる。
「……………………お膝に乗せて下さい」
目線を上にしたまま、万歳の姿勢でシェイド様はどんどん後ろに下がる。
「リリさん?落ち着こうか……?まずは上に何か羽織ろうな」
「シェイドさま、逃げたら悲しい」
「グッ……………………」
ベットにぶつかって座ったシェイド様は、まだ目線が上を向いたままだ。むぅ、頑張ったのに、私を見てくれない!
えいやと抱きついて、お膝にのりあげる。
「~~~~~~っあ!?リリ、落ち着け!何かのトラップか!?え?俺の妄想?」
両手を上に持ち上げたままなので抱きしめてもらえないのが寂しい。
「リリさん……?成人まで……大事にするから、な?」
「もう成人になりました。今日」
日が変わってもう今日が私の誕生日
臣君は、だからちょうどいいと言ったのだ。
誕生日に迎えに来ると。
「はぁ!?」
「今日が私の誕生日です」
「おまっ、何でもっと早く言わねぇ!」
「?特に聞かれなかったですし……?」
「はぁ~~~~、俺のダメさ加減がここに来て…………」
「シェイド様、こっち見て?」
「クッソ!…………無理だろこれ…………」
「プレゼント、欲しいです」
「何でも買ってやる。城でも島でも領地でも」
「そんなのいらないから、今日シェイドさまのお嫁さんにして欲しい」
「…………………………………………」
「私、初めてなので上手にできないかもですけど……」
「あ゛ぁ~~~可愛いなクソ!」
「シェイド、さま?」
「…………お前、煽った責任はとれよ?」
「?」
低い声と共に急に世界が反転して、ベットに押し倒されていた。
「へ?」
「飢えた男を煽ったらどうなるか教えてやる」
「シェイドさま、大好き」
「~~~~~~~っ!だから煽んな、手加減出来なくなる」
琥珀色の瞳がギラギラして捕食者のようで恐ろしいはずなのに愛おしい。
噛み付くみたいなキスが降って来て受け止めきれない熱がじわじわ侵食していく
琥珀色の熱が私を捉えて、目が離せない
この人が好き
大好き
痛みも快感も一つに溶けて、全部が合わさって一つになるまで私達は何度も何度も抱き合った。




