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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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使節団歓迎パーティー

「僕の天使。ドレス、よく似合っているよ。会場中が君に夢中になるよ」


今日のドレスは薄いクリーム色のマーメイドドレスで、金の刺繍が豪華にあしらわれている。後ろのマーメイド部分が長く、床を引き摺るタイプの様で、歩きずらい。

ダンスは絶対できない仕様なのがありがたいけれど。


人酔いしない様にと、ケイトさんが長いレースのヴェールをつけてくれたので、ウエディングドレスのようで落ち着かない。


「さあ、行こうか。体調が悪くなったら言ってね?」


カイウス殿下がいつもよりゆっくりエスコートして下さる。

二階席の扉が開くと、階下に大勢のドレスアップした人たちが見えた。


「後で使節団の代表から謁見を申し込まれているからね。僕が話すから、君は笑っているだけでいいよ」


「はい」


「あぁ、ダンスが始まるよ、中二階の方が見やすいから、そっちの席に行こうか」


イリオヤ皇国の使節団の方達は、白い詰襟の長い学ランの様な民族衣装で、すぐに見分ける事ができた。

男性ばかりの使節団の中で、紅一点の目立つ女性に目が行く。

——シェイド様がエスコートしている女性。


露出が多く、装飾品の多い踊り子の様なドレスで、会場中の視線が集まっている。


弦楽器の演奏がはじまると、シェイド様がエスコートして彼女と踊り始めた。

今日のシェイド様は騎士団の隊服を着ていない。ライトグレーのジャケットに金色の装飾が沢山ついた貴族の出立をしている。

グラセン公爵としてここにいるんだ。


「彼女は……?」


「使節団と共にいらっしゃったイリオヤ皇国のサーラ姫だよ、たしか僕と同じ年の二十四歳だったかな。かわったドレスだよね」


シェイド様が彼女の腰に手をそえて、ダンスが始まった。

途端に彼女は両腕をシェイド様の首に回して密着しだした。


シェイド様は慌てる様子もなく、淡々と踊ってらっしゃる様に見える……けれど自信がない。サーラ姫がシェイド様の耳元で何か囁き、二人は笑い合う。


「イリオヤは実力主義の国家だからね、黒への忌避感がこの国ほどないみたいだよ」


そうなの?建国神話も関係ないんだとしたら、彼女の目にはシェイド様はとてもかっこよく写っているということ?


「僕の天使、何か飲むかい?」


「いいえ、大丈夫です」


シェイド様から目が離せない。

胸がズキズキ痛んで涙が出そうになるのをこらえる。


「顔色が悪いね、早めに挨拶をすませようか、ちょうど一曲終わりそうだ、歩ける?」


「はい……」


頭が痛い。でも頑張らなきゃ。




◇◆◇




「リリ様、こちらイリオヤ皇国サーラ姫でございます。使節団の一員として遊学にいらっしゃいました。ご紹介が遅れ、申し訳ございません」


シェイド様が彼女を紹介してくれる。

シェイド様の手に引かれて、彼に寄り添う他国のお姫様を、シェイド様自ら私に紹介してくる。

想像より胸が痛い。喉がカラカラで声が出ない。


「サーラと申しますわ!ぜひお友達になりとうございます」


「僕の天使は奥手なんだ、お手柔らかに頼むよ」


令嬢シスターズと同じにおいがする。

サーラ姫の方がずっとグラマーで美人だけど。


「リリと申します……」


「サーラ姫は剣舞が得意だそうですね、是非見てみたいものだ、とても美しいのでしょうねぇ」


「まぁ、カイウス殿下、それは是非!実は昨夜、自室でグラセン公爵様に見ていただきましたのよ?とても美しいと沢山褒めて頂いて……国を出てまで披露した事が無かったものですから自信がつきましたわ!」


昨夜?

自室で?

シェイドさまと?

どういう事?


シェイド様のお顔が見れない。

胸が痛くて呼吸が苦しい。


「カイウス……殿下、私、喉が渇きました」


「おや、僕の天使はお疲れの様だ。上に戻ろうか。冷たい果実水をもらおうね。ではお二人ともパーティーを楽しんで」


「リリ様、エルスウィーズ殿下と明日お茶会を予定しておりますわ。是非リリ様もご出席なさって?お話し、お伺いしたいです」


「ええ……はい……」

シェイド様はどんなお顔をしているのか、確かめるのが怖くて目が泳ぐ。


カイウス殿下のエスコートで二階席に戻る際、サーラさんがシェイド様に耳打ちしてるのが聞こえてしまった。


————今夜も私の部屋にきてくださいね?

 


全身の血がざぁーっと潮騒のように引いていくのが分かった。


「カイウス殿下、お嬢様は限界でございます。ここまでに」


「そうだね、すぐ部屋に運ぼう。良く頑張ったね、僕の天使」




◇◆◇



夜中にベットで目が覚めた。

数時間ねてしまったようで、もうすぐ日付が変わる時間だ。


シェイド様が誰かの寝室を訪れる日なら、昨日のように何日も眠っていられればよかった。


ネグリジェの上にショールをはおり、鍵を出す。


ドームに入った気配で、少しでも私の事を思い出してもらえたら。

あの女の人の所に、行かないでもらえたら。


鍵を回してドームに入る。

裸足のまま、暗がりに転がり出てため息をつく。

もしかしたら、もう私をドームで待っているかもしれない——そんな希望がドームの暗さで打ち消される。


湖の中のガゼボに横たわり丸くなる。

すぐに気がついて、来てくださるはず。


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