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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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お買い物1

「後ほどリリ様が商団ブースにいらっしゃるそうですよ。その時間商団ブースの壁側、会場側に警備を増やして対応致します」


「あぁ」


「もう一度言いますね。団長、リリ様がお買い物をするそうですよ」


「…………スランを呼べ」


「御意に。実は情報が上がってきた時に既に呼んでありますので、控えの間にて待機いただいております」


「…………」


「第一の団長であるカイウス殿下がエスコートするのです。警護はそれだけで十分過ぎるほど。職務中の団長が割って入る隙間はないでしょう。その点、スラン殿でしたらリリ様の覚えもよく、殿下とも上手くやり合って頂けるでしょう。殿下からのプレゼントばかりになるのはいただけないですから」


「お前は俺をどうしたいんだ」


「人聞きの悪い。初恋を自覚された団長を部下として応援しているのですよ」


「……………………」




◇◆◇




「うわぁ~~~!!すごいっ!!いろんなものがある!!」


上から見ていた時はドレスや宝石のお店が多いのかなとおもっていたら、食器から家具、絵画までなんでもあって、見る前からワクワクする。


「お嬢様、第二騎士団の団長様がお見えですわ」


「へ!?シェイド様!?」


また会えるの!?


商団ブースの入り口で待機してくれていたシェイド様を見つけて駆け寄ると、シェイド様の横にじいやがいる!!


「じいや!!!わわっ!また会えて嬉しい!!!ばあやは?ばあやも来てる!?」


「メイルは今日は留守番だ。リリ様に会いたがっていた」


苦笑しながら話すシェイド様は、じいやがいるからか、少し砕けた物言いに戻ってくれていて嬉しくて胸がキュンキュンする。


「お久しぶりでございますお嬢様。お元気そうなお顔を拝見できて安心いたしました。

坊ちゃんがお仕事で参戦できない分、じいやがおりますゆえ、なんでもこのじいやに言ってくださいまし。なんの、財布は坊ちゃんの物ですのでいくらでも、何でも、たくさん楽しみましょう」


「へ!?」


「そういうことだ。楽しんでくれれば嬉しい」


「えぇ……私、見学だけで……そんな、大丈夫です」


「女性に贈り物をすることは男の幸せですよ、お嬢様」


「えぇ…………」


「僕からも、何か送らせてもらうよ。

スランを呼ぶなんて、シェイド、考えたね」


カイウス殿下が話に入ってきてますます混乱する。


「ふぉっふぉっふぉっ、お嬢様はただ楽しまれればよいのです。さあさあ、参りましょう」


「え、あ、うん!」


すかさずカイウス殿下が手をとってエスコートしてくれる。


シェイド様ともっとお話ししたかったけれど、そのままシェイド様は私を見送ってくれた。

琥珀色の目が優しくて、ドギマギしてしまう。けれどすぐに招待客や警備の人に飲まれて見えなくなってしまった。


「リリちゃん、何がほしい?まずは装飾品から見てみる?」


カイウス殿下の声で我にかえる。じいやは私たちのうしろにニコニコしながら控えてくれている。


「欲しいものは特には無いのですが、この国の物を色々見てみたいです」


「任せて。五十を超える商人が来ているんだ、どうせ全部は見られないから、我が国の特産品のブースはこちらでチョイスするから、その他に気になった店があったら言ってね」


「はい!ありがとうございます、楽しみです!」


初めに入ったのは茶葉の缶がたくさん並んだ紅茶専門店のようだった。


「南部は紅茶の栽培が盛んでね、品質もいいから他国にも輸出してるんだよ」


「これはこれは!!ようこそ落ち人様!!ぜひ飲んで頂きたい茶葉がありますので、ご試飲をどうぞ」


手早く入れてくれたポットをカップに移す前にケイトさんがうけとり、ケイトさんが三つのカップに注いでいく。

準備ができたカップを私に渡す前に一つを取り、飲み干した。


「さ、お嬢様、こちらを」


ど、毒味した…………?

今までも、してくれていたのだろうか。手慣れてるし、怖くて聞けない。見なかった事にしよう。

カイウス殿下は涼しい顔でカップを受け取り試飲している。

この人、ティーカップ似合うな。

立ったままなのに、優雅さが滲み出ているもん。


「い、いただきますね……」


紅茶というよりは、澄んだ紫色のハーブティーみたいな色で綺麗だ。


「わっ、おいしっ——!!」


「気に入っていただけて嬉しいです!茶葉に魔法で花を咲かせてその花を混ぜ込んで一緒に紅茶にするのですよ、甘い蜜の多い魔法花を咲かせる事ができましたのでね、一番に落ち人様に飲んで頂きたく参上しました」


丸メガネをかけた、三十代ぐらいのきれいな茶髪が肩まである商人は本当に嬉しそうに笑いかけてくれる。

この人も線が細く綺麗系、さぞかしおもてになるのだろう。


「お嬢様?これが気に入ったのでしたら公爵家へのお土産にしましょうかね、お嬢様が我が公爵家へ遊びにいらっしゃった時にお出し出来ますから」


じいやのあたたかい言葉につい笑ってしまう。いつでも来ていいよと言ってくれているみたいですごく嬉しい。


「ならば是非とも!是非とも、落ち人様御用達の紋章を頂けますか!?」


「えぇっ!?」


「リリちゃんの紋章は聖紋に月桂冠だよ。リリちゃんの落ちた森は月桂樹の森だったからね。既にデザインもきまっているんだよ。さぁ次に行こう。スラン、買い物ついでに、後はよろしくね」


「承知しました」


「ありがとうございます!!!!」


店員さんの張り避けんばかりの声に押されてブースを出る。


「あ、あの、御用達って…………」


「ん~~リリちゃんが気に入った物は人気が出るからね。こちらでも管理が必要なんだよ。まぁ、何を選んでもらっても問題のない身元のしっかりした商人ばかり厳選しているから、リリちゃんは気にしなくても大丈夫」


えぇ…………。何それ怖い。。


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