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タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する  作者: 雨香
第1章

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落ち人


「んんまぁぁぁぁあ~~~~!なんてお綺麗な御髪(おぐし)でしょう!日に反射してキラキラ光ってもう!!プラチナシルバーとでもいうのでしょうか、はぁ、、ため息が出るほどですわねぇ。それにこの瞳の色、桃色なんて、なんてお可愛らしいっ」


体も髪も綺麗にしてもらった様で、今は首元にレースの襟がついた裾の長いネグリジェをきせてもらっている。

頭がぼんやりして思考がままならない。

熱があるみたいだ。

メイルさんの他にも何人か女の人がいた様だけれど、皆んなの言っている事が頭に入ってこない。イケメンさんに会いたい。安心が欲しい。


「メイル、終わったか?」


ドアの外から、低い優しい安心の声がする。

瞬間ポロポロと涙が出る。安心して泣くなんて、子供の時以来だろう。


「あらあら、まあまあ。シェイド様お入り下さい。お嬢様を安心させてあげてくださいな」


ドアが開いてイケメンさんが入ってくる、

濃い琥珀色の切れ長の目が私を捉えた。


「は?妖精?」


「そうなんです!わたくしもビックリ致しましたのよ!赤髪のお嬢様だとばかり思っておりましたら全て魔獣の血で!!お顔立ちも天使様と瓜二つですわ!美しいでしょう!?シェイド様、どこからこんな愛らしいお嬢様をお連れになったのです!?」


周りの言葉が頭に入らない、あの人のそばにいたい。

ふらふらとする体を叱咤して彼に駆け寄ろうとすると足が絡まって身体が傾いた。


大きな手が支えてくれる。また、助けてくれた。ここがいい。


「魔獣の血を長く浴びていたせいかお熱がありますわ。横になっていただきたかったのですが、いやいやと嫌がられてしまって。シェイド様を待っておられた様です」


「は?」


「ふふふ、魔熱に浮かされているとはいえ、シェイド様、妖精に懐かれましたわね。羨ましい」


「ぐっっ……」


この人の、冬の森みたいな匂いが好き。ずっとここにいたい。

眠いのに、眠ってしまうのは怖い。

この人から離れたくない。


「ほら、ベットにはこんでやるから、少し寝ような。魔熱はぼんやりするだろ、眠って、体力を回復するしかない」


眠るのは怖い、どこにも行かないで。

横抱きにされた彼の肩口に頬を擦り付ける。


「あらあらあらあら、シェイド様から離れるのがよほど不安なんでしょうねぇ。でしたらそのままソファーへ、まずは安心が一番のお薬ですわ」


「熱から覚めて、叫ばれなければいいけどな」


「その様な事ございませんよ。叫ばれたら、ばあやが一緒に謝って差し上げます!」


「メイル……俺は子供か。はぁ、まぁいい。毛布を持ってこい、あたためてやりたい」


安心の匂いがする。琥珀色の視線が暖かい。 

思考がとけていく。



ここは怖く無い。




◇◆◇




「起きたか?」


へ!?なんで私イケメンの腕の中なの!!!


「っ…………!わた、わた、私、ごめんなさい!!!!」


「落ち着け、俺が、怖くは無いか?」


「あなたが?いえ、怖くは無いです、その逆で安心というか……」


「………………」


「あの、私……ご迷惑をおかけしたようで…………」


ここにきてからの記憶はぼんやりとしか無い。けれど助けてもらった事だけはちゃんとわかる。


「迷惑じゃない。それが仕事だ。ん、熱は下がったな。水はのめるか?」


「はい、ありがとうございます」


私、イケメンさんの膝の上で横抱きにされてるよ!?ここで寝てたって事!?なんで!?


イケメンさんはテーブルに用意してあったグラスを取り、口に近づけてくれる。自分でもコップを支えるけれどコップがやけに重く感じる。


「まだ完全に魔熱が引いたわけじゃ無い。体に力が入らないはずだ」


「はい、なんだかうまく身体を動かせません……」


「何度かぶり返しがあるはずだ。元気になるまでここにいればいい、名前は何という?」


「リリです。結城 リリ」


「——————ユウキ………………??

まさかと思うが、リリは天から落ちてここに来たか?」


「は……い。信じてもらえないかもしれませんが……気づいたら空の高いところから落ちていて、何度かガラスの膜の様な物を通って…………こことは違う、別の世界から、来たんだと思います」


途端ガタンと私を抱いたまま立ち上がったイケメンさんはすぐに私を抱いていたことを思い出した様で、ふんわりとソファーにおろしてくれた。


そのまま絨毯張りの床に片膝を付き、片手を胸に当てて真っ直ぐに私を見る。


「今世の落ちビト様に多数の無礼、お詫びのしようもございません。グラセン公爵家当主、シェイドと申します。身命を賭してリリ様をお守り申し上げる」


「え?な、何??何で??」


「すぐに聖都に知らせを送ります。リリ様はお身体を第一に。メイルを侍女として付けますゆえ、何か必要なものがあればおっしゃって下さい」


「急に、どうしたんですか…………?」


「申し訳ありません。落ち人様への説明は聖教会の領分なのです。本来であればすぐに聖都へ行き、聖教会の承認を経るのですが、リリ様のご体調が優れないと知らせるつもりですのでご安心下さい」


何にも安心できない。さっきまでとは別人の様にかしこまってしまったイケメンさんに戸惑いしかない。

公爵家?このイケメンさん、偉い人だった!

シェイドさんっていったっけ、公爵様ならシェイド様かな。

そんな人が何でこんなにかしこまってるの!?

こちらに来てから一分一秒がジェットコースターみたいだ。

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