194話目 桜十四歳 聖域解放!
夏のアレの始まりです。そして、桜の誕生日編でもあります。ゴリゴリネタをブッ込みます!
暑く、熱く、燃えたぎる。そこは、日本の夏で最も、愛と夢と欲望が交差する聖域にして混沌の渦の中心となる約束の地。
世間一般に国際展示場と呼ばれるその場所には、下位次元を愛する屈強な戦士達が集っていた!
全ては、この地にて開催される趣味の祭典に参加せんが為。
プロとアマ。オリジナルと二次創作。玉石混淆の作品が自由な意思にて表現・発表、そして頒布されるが故に、戦士達は自らが求める宝を得る為に、早朝より酷暑に耐え、志を同じくする者達が創りし果てなき列へと並びて、楽園の扉が開かれる時を、厳粛に待ち続ける――
「いや、普通に皆仲間内でアニメやゲームの話をしてっから。MSK(綿密な作戦会議)とかしてっから」
「さっちゃんがイベント前の熱意と熱気で変になるのも、最早通例だけれどねぇ……けんちゃん、塩飴ちゃんいる?」
始発で現地に到着した三人。徹夜が禁止されている筈のイベントであるが、何故か既にかなりの行列が出来上がっていた……きっと、会場至近のホテルに宿泊していた人達に違いない!ここにはマナー違反をする参加者なんていない!……多分。
「込み上げてくる想いを、詩にせずにはいられなかったのです!前回の冬マケより八ヶ月……有明よ!私は帰ってきた!」
「どうやら家の妹は、核をぶっぱしたいらしい」
「来月の幕張でも同じこと言ってそうだよね」
九月には国内最大のゲーム展示会が開催される。そこにもやはり、コスプレイヤー用のスペースがあるのだった。
「やっぱ、来月もやるのか……」
「コスは鋭意制作中です!ちゃんと合わせで!」
「ゴリゴリ閲覧数を稼ぐのであります!」
斯くして、堅固なる門は定められし運命の時に開かれる。いざ進撃せよ数多の戦場を駆け巡りし戦士達よ!愛なき欲望にて我らが宝を貪りし亡者よりも先んじ、かけがえなき聖遺物を真に得るべき者へと託す為に――
「訳すと?」
「転バイヤー爆発しろ!奴等より先に買え!余計に買っていいのは保存用と布教用のみ!売るにしたって定価の一割増しまで!で、あります!」
「……一割なら、良心価格……かなあ?まあ、会場への移動費とか梱包の手間を考えたら儲けは無いかぁ」
「ま、俺達の今日の目的はコスプレで買い物じゃないから関係ないんだがな」
「見も蓋もねぇです兄様……」
こんな雑談を交わしながら、列を乱さず前の人を押したり追い抜いたりせず、マナーを守って会場入りしたのでありました。
ここまでのナレーションは聖桜がお送りしました!
「二人は……まだみたいだな」
剣は着替えを終えると屋外のコスプレエリアを訪れた。既に有名なコスプレイヤーの囲みが幾つも出来ていて、人、人、人で溢れかえっていた。取り敢えず、往来で立ち尽くしていても邪魔になるだけなので、何処か空いている壁際にでも背中を預けて桜と梓を待っていようかと辺りを見回すと……自分がかなりの注目を集めていた事に気が付いた。
「な……なんとゆう完成度の高さ!あれは、衣装だけでなく身体を鍛えていなければ到達し得ぬ極み!」
「や、ヤバイよ……マジでアニメまんまのイケメン!誰?あのレイヤー様の名前知ってる!?」
「……解らぬ。美しすぎる。男装なのか。はたまた野郎なのか。それほどに中性的なキャラをハイレベルで表現されておる!」
剣は居心地悪く、少しだけ表情を崩した。桜が来れば注目はそちらに集まると思い、人口密度の低そうな場所へ移動しようとした、その時。
「あ、あの……人違いなら申し訳ありませぬ。もしや、SAKUTANちゃんの兄君殿ではありませぬか?」
「……ん?あ、確か去年の冬マケで会いましたよね?その節は妹を応援してくださり、ありがとうございます」
声を掛けてきたのは、顔見知りのSAKUTANフォロワーであった。
「おおお!やはり!そのコスをすることが公開されてましたので思いきってお声掛けして正解でした!いやはや見事な着こなし振りでありますぞ!それで?SAKUTANちゃんは何処?」
「……あ、ああ。直に来る筈だ」
フォロワーさんの勢いに圧されたものの、剣は自分がコスプレをしている事を思い出し、キャラを演じて返答した。剣がコスプレしているキャラは冷静沈着なサイボーグであり、堕天使な名称の可変戦闘機のパイロットであり、桜が演じるヒロインの生き別れた実の兄とゆう設定である。美形で戦闘力も抜群と、剣もシンパシーを感じるキャラではあるが……作中で主に着用しているスーツは……全身タイツのように身体にピッチリしているのだ。とてもではないが、だらしない体型の人間には着る勇気を抱けないコスチュームである。
それを梓はエナメル素材とシースルー素材で再現した。目立たない方が無理なのであった。
フォロワーさんの声が大きいので、更にフォロワーが集まって来る。こうしていれば間違いなくSAKUTANの方から来てくれる筈だから。囲みの最前列をゲット可能だから!それに釣られて一般参加者も集まる。
本人の素材としての上質さに加え、梓の拘りぬいた匠のコスチュームとの相乗効果で一級品の被写体となった剣を2.5次元愛好家達が逃す筈がなく、次々に撮影を求められる。
しかし剣にとってコスプレは付き添いでしかないので、作中のポーズを要求されるのは面倒でしかない。なので「そうか」「好きにすればいい」等と、撮影拒否すらせぬものの、無愛想にしか返事をしなかった。……が、逆効果であった。
「きゃあー❤なりきってるぅ!」
「再現度、高っ!」
そう……例え横暴な態度であったとしても、ここでは作中イメージに近い反応をすればするほど……喜ぶ猛者ばかりなのだ!
もし、剣が人間の身体能力の限界を無視した動きで逃げようものなら、コスプレエリア全体が熱狂に包まれるであろう。本物降臨!と。当然、走ったり跳んだりするのはマナー違反なのでやらないけれども。
「いやぁ~兄上様のコスですら一切の手抜かり無し!これはSAKUTAN様のコスは一層期待出来ますな!」
「今回、キャラだけ先行発表でしたから嫌が応にも!王道で来るか変化球か……」
「我等の期待は裏切らぬでしょう!そうでしょうお兄さん!」
SAKUTANの動画フォロワー同士の会話も白熱していた。劇中様々な衣装を着用するキャラだけに、各々が推しキャラならぬ推し衣装に並々ならぬ熱意がある。果たしてどの衣装で姿を現してくれるのか……待ちきれず、剣に訊いてしまうフォロワーが出てしまうのも道理であった。
「まあ、人を驚かせるのが好きな奴だからな。応援してくれているファンをガッカリさせるような真似はしないと思うが」
実は、剣も桜がどんな衣装を選んだのかまだ見ていない。とゆうか見せてもらえていなかった。桜は剣も驚かせたいようである。
それから待つこと数分。笑い声混じりのどよめきが発生した。
「……確かにラ○カではあるが……」
剣は眉間を押さえながら、呆れて呟いた。周囲のフォロワー達も呆けて口をあんぐり。そして……失笑だったり爆笑したり。
「……予想の遥か彼方を往く!素晴らしき哉SAKUTAN!」
「いや、なんて美少女の無駄遣い!これはこれで一周回ってアリ!」
「ガッカリ超越して……よくぞ作ったと誉めたい!」
SAKUTAN放送局の常連閲覧者や、マク○スFのファンは好意的に受け止めていたが、そうではなく、美しいレイヤー目当ての参加者は残念な物を見る目でSAKUTANを睥睨し、他所へ立ち去る者までいた。何故なら……SAKUTANは美しさの欠片もない姿をしていたから。辛うじて、可愛いげはあるかもしれないが……。
それは、販促キャンペーンソングを口ずさみながら、ぐりぐりと納豆をかきまぜる納豆の藁苞の着ぐるみだった!混ぜるとキラキラ光り輝く未来で銀河な納豆の!その後には、不敵な笑みを浮かべる黒幕眼鏡に扮した梓が随伴している。
「おまたせしました!SAKUTANだよー!スッゴく暑いけどみんな水分ちゃんと摂取してるぅ?体調に気を付けて今日は楽しもうね!私も楽しむし楽しませるよー!」
登場早々、元気一杯の挨拶でファンを労う桜。SAKUTANからの気遣いメッセージを肉声で聴けてフォロワー達は感無量である!納豆だけど!
「炎天下に着ぐるみとか、汗が尋常じゃない」
盛り上がるオーディエンスと対照的に、剣は冷静に突っ込んだ。納豆の藁は、一本一本筒状生地に綿でも詰め込んだ柔らかいクッションのようである。保温性に優れ過ぎていて、とてもではないが夏場に長時間着ていられるような代物ではない。
「大丈夫よ。抜かりは……無いから」
陽光で眼鏡を妖しく煌めかせ、嘲笑うように口許を歪める梓。キャラに寄せた立ち振舞いに、カメラのシャッター音が木霊する!
「……まあ、衣装替えはするんだろうが……」
剣も桜のコスプレに掛ける情熱は理解しているつもりである。体調に無理が生じる衣装を何時間も着続けるような、そんな初歩的なミスをするだなんて思ってはいない。何より、衣装の製作者は梓なのだ。身体に負担を掛けるような無理なコスプレであれば、事前に気付いて姉ストップしている筈であるから。
剣の心配を余所に、SAKUTANはスマイル全開でポーズを決めて視線を囲みの全方位へと向ける。どうやって光らせているか謎な納豆をかき混ぜながら……。
それから数分後。SAKUTANから仕切り直しの挨拶が始まった。
「みんな!今日はSAKUTANを見に来てくれて、ありがとぉー!公式プロフに載せているので今更ですが……この八月で、SAKUTANは十四歳になりましたぁ~!おめでと自分!」
そう……桜にとってこの夏のイベントは、バースデーパーティーと同義なのである!とゆうか……剣と梓が同伴者しているのは誕プレ扱いでもあるのだ!
巻き起こる拍手喝采とおめでとうコール。それをとびきりの笑顔で応えるSAKUTAN。相乗効果で異様に盛り上がる会場の一角に、何事かと野次馬が集まってくる。
「それじゃあ盛り上がってきましたところで……ここで一回こっきりのシャッターチャンスだ!ベストショットを撮り逃さないでね~!」
桜は腕を大きく広げると、身体を捻って片足スピンを始めた。動きにくそうな着ぐるみでの軽快な動きに驚嘆の声が上がる。すると、梓が楚々とこっそり近付き、着ぐるみから解れている紐を掴んで、勢い良く引っ張った!
「いくわよ!キャスト・オフ!」
弾け解ける藁の中から現れたのは、パステルカラーのノースリーブ・ショートパンツ姿の魔法少女風衣装を纏ったSAKUTAN!ネタでしかない納豆を一皮剥いて登場した王道な美少女コスに、
「もしやと思っていたけれど……やっぱり下に着こんでいたぁ!」
「ほう、虹色ク○クマですか。変身を意識したチョイスでもある訳ですな!」
「ウケ狙いだけで終わらない!流石はSAKUTANだぜ!」
「見てくれよコレ!藁が綺麗にバラけた瞬間のベストショットをいただきましたぁー!」
「羨ますい!見惚れてしまって撮り逃しとぁー!ヤーック!」
SAKUTANを追っかけてくれている方々は大満足していた。桜もまた満足気に劇場版キービジュアルのポーズをとって撮影の為に数秒静止すると、集まってくれた皆様に一礼して、足下に散らばった藁クッションを一本拾い上げた。
「え~、先程の納豆コスは早い時間から集まってくれた皆さんだけへのファンサービスで~す!二度とやらないから、撮影した人達は大事に保存して、今日この場に来れなかった人に自慢しちゃって下さいね~」
残念なネタコスプレこそが、実は朝一から他所のサークルよりもSAKUTANを優先してくれたファンの為に用意していた激レア衣装のSAKUTANだった!その事実に、熱心なSAKUTAN信者達にはもう、圧倒的な感謝の気持ちしかない!
「ありがとう!企業ブースのイベ限グッズ蹴って来た甲斐あった!」
「これだから……SAKUTANには期待しちまうんだ。次回ラン○ちゃんやるときは、ダルマでお願いしゃす!」
「てゆうか、お姉様の手作り衣装がクオリティ高杉さん!バン○ム超合金も再現してくれるのでは……?」
ファンを喜ばせることに、SAKUTANは至上の喜びを感じてしまう!そこで、更なるサービス精神が解放される!
「それでは、ここでSAKUTANからのバースデー逆プレゼント!SAKUTANから分泌された液体を吸い込んだ納豆着ぐるみのパーツを無料で頒布――」
「アホか!?んな物理的に如何わしい代物を届出なく頒布するなんて倫理も運営も許してくれんわ!何より、兄として許可出来るかぁー!」
ここで過保護な兄ストップ!藁クッションのフルスイングが桜のお腹に横一文字の一閃を刻む!
「ぼふぅ!そ、そうゆう訳で皆様……この藁はお洗濯した上で、ご希望の方にプレゼント致しますぅ……」
苦悶の表情を浮かべて蹲った桜に代わり、ジャーマネ梓がしれっと説明を引き継いだ。
「SAKUTANは来月幕張で行われるゲームイベントの一般公開日にもコスプレで参加予定です。当日、私共に本日撮影して戴きました納豆コスの画像と共に、後日SAKUTAN放送局にて発表する合言葉をお伝え下さい。先着順にて、一度はSAKUTANから分泌された液体を吸収した此方のクッションをSAKUTANから手渡しでプレゼントさせて頂きます。はぷっ!?」
「だから姉妹揃って、いちいち言動が如何わしい!」
梓の後頭部へ、縦一文字の旦那突っ込みが炸裂!梓も桜と並んで、土下座みたいな格好で蹲った……。
「……SAKUTAN家って、プライベートだとこんな感じなのかな?」
「お兄さんキャラ完全に忘れてるわ。でも、家族仲良さそうで尊ひ」
「ラ○カとブ○ラが生き別れてなかったらこんな兄妹に……ならねぇたろうなぁ~」
「トンデモifなパロディ見ちまった気分で笑える」
こうしてSAKUTANがフォロワー達の和やかな笑い声に包まれているのと同時刻。新橋駅――
「やはり、無理して急ぐよりも、一本駅で待ってでも座るのが正解」
「だね。荷物大きいし、私達はヲタ好きな外見してるから。ラッキースケベさせない努力しないと」
「こんな暑い日に、人だらけのイベントに行ってあげるだなんて、私達いい姉すぎる」
「SAKUTANよりも沸かせちゃったらごめんなさいだけどもね」
そう……朝一番ではないにせよ、桜の誕生日を祝うべくして聖域に向かう姉妹が、そこにいた。
はい!フロン○ィアネタを詰め込みました!悔いはない!
そして、次回も続くよコミケ回。
正体バレバレな奴等が到着します!コスプレで!誰をやるのかお楽しみ~?
中一三人組も登場させるよ!
告知
近々新規作品投稿します。こちらは正統派?ファンタジー世界を舞台にした異世界転生物です。多少、聖剣くんとリンクしたりしてます。気が向いたら読んでみて下さい。




