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特別編 基本、拒否権ありません

ぐだぐだ無駄会議をします。

女神様御一行がやってきましたのは〝謎めいた島〟。偉大なるSF作家ジュール=ヴェルヌの世界観を再現したエリアである。このエリアで特に人気なのが、摩訶不思議な地底空洞世界を高速の採掘車で探検するアトラクションなのである……が!


「行列しんどい」


女神様のその一言で、割と混雑していない、深海を探索するアトラクションを体験する事にしたのであった。


内容割愛。


その後、一行はパークの名物であるギョウザドッグをパクつきながら、ごく普通に感想を述べあっていた。


「私は面白かったけど……暗かったり、深海の人の造形が小さな子には不向きなのかも。だから人気薄なのかなぁ?」


「それも、大人が怖がるような姿ではありませぬし、落ち着いて見れば、深海の人は善意の人でありましたからな。スピード感も不足していますから、スリルを求めるヤング層のリピーターは見込めぬでありましょう」


「てゆうかね、子供騙しなのが問題じゃない?深海に潜る体なのに、キャノピーが空洞で、そこに水を注入しているだけじゃないの。まあ、ポッド一台しか通れない順路で、水中で故障でもしたら救助もままならないから無理もないけど。安全基準的には、優等生なアトラクションなんだろうねぇ」


「……ディスるなー!このドリームデストロイヤーどもがあっ!」


辛口批評に、小町ちゃん憤慨。純真な心と瞳で深海冒険を楽しんでいた彼女には、聞くに耐えない感想だったのだ!


「それと、どうしてギョウザドッグが名物なんだろね?あそこの潜水艦に似ているからって設定も無理がない?美味しいけれども」


「このエリアのレストランが中華なのも何でだろ?ヴェルヌさんと中国って、何か縁でもあるのかな?正直、よく解らないのだけれど……」


「それは私も解りません!それはごめんなさい!」


「小町たまが謝っている……イミフなのです。まあ、一番の問題は、お隣のエリアが海底そのものをイメージされているからでしょうなぁ。とても判り易いテーマでありますし……」


そう、この〝謎めいた島〟のお隣は〝人魚の浅瀬〟デ○ズニー作品リ○ル・マーメイドをテーマとしているエリアであり、海底の人魚の国をイメージしている空間を()()()楽しめるのである。海の生き物の形をした目にも楽しい乗り物も数種類あるので、狭いポッドの中から深海を見るだけのアトラクションに、勝ち目がある訳がなく……


※あくまで筆者の私見であります!


「うん!それは私も否定しない!海で一番、ディズ○ー感じるもんね!」


ヴェルヌさんの世界、小町ちゃんにあっさり見捨てらるる……


「……ま、確かに仕方がないんだよね!〝謎めいた島〟って、一番ディ○ニー感が薄いんだもの!ショーをやるスペースが無いし、キャラクターのグリーティング率も低いし……」


出てくる出てくる不満の数々……


「あれ?小町ちゃんが一番ディスってない?」


「ガチだからこその鬱憤でありますな。良好なテコ入れを切に願うのであります」


「……さて、と。ここに来ている意味も果たした事だし……そろそろ、本題に入ろうか?」


その瞬間、実鳥は椅子の上で、体育座りで縮こまった!


「女神様の仰せのままに!それでは第一回チキチキ!実鳥たまを魔法少女にプロデュース!なのであります!やっふぅ!」


「結局やるんだ……てゆっか、根本的な質問なんだけど。実鳥義姉さんの魔法って……ショボいよね?正直、手品以下でしょ?」


魔力を全開で使用して、手のひらにちょこっと納まる程度の水を発生させる程度の魔法。それが、小町が認識している、現時点での実鳥の実力であった。


「小町たま、それはそうでありますが、今後を見越しての企画会議なのでありますよ!そうでありますよね?我が主よ!」


「……あれ?」


桜と小町のやりとりに、女神様はキョトーンとしていた。


「あ……そっかそっか、本編のタイムテーブル的に、二人はまだ知らなかったんだった!いや、女神としたことが迂闊者にょ」


どっかの猫耳さんみたいに、テヘペロして誤魔化す女神ちゃんでした。


「んじゃ、手早く説明するね?ヴェルティエちゃんの遺体が蘇生可能だったので、剣ちゃんが治しちゃいました!そして今後、実鳥ちゃんはヴェルティエちゃんの身体と今の身体で魂を自在に入れ替えられるようになります!以上!」


簡潔にして明瞭な説明でした。


「マ、マジでありますか実鳥たま!前世の姿に変身?いや転身?これは凄い!だがしかし……」


「残念だったね桜姉さん。入れ替わりじゃあ、お約束のサービス的な変身シーンの演出はなさそうだね」


「そうなのが実に口惜しい!魔法少女の変身シーンとは!1.服が謎の原理で分解される!2.素っ裸になるけど全身が謎の着色をされてシルエット状になる!3.謎出現したコスチュームが段階的に装着される!4.ポーズを決めて口上!が、基本なのであります!それが無いのは……残念なのでありますよ!」


「……いや、アニメじゃないんだからね桜ちゃん。変身するところなんて他人に見られる訳にいかないから。あーゆーのは、視聴者だけに許された……」


言っててみどりん、何かに気付いた。その視線の先には、この世界そのものを俯瞰で捉えられる御方が……


「そう、変身シーンを見られるのは当事者ではなく部外者の特権なのだよ桜ちゃん!そう、現実的には一秒にも満たない瞬間を、アニメーターの作画技術と拘りの演出によって芸術にまで仕上げられた魔法少女モノには欠かせないシーン……映像化の際には絶対外せないよね!実際にどんな変身をしているかは関係ない!原作を無視しても、出来が良ければ私が許す!」


あの、原作者的には……ごふっ!?


「今、誰かの断末魔が聞こえたような……?ってゆうか、魔法少女になったからってどうするのよ?目的は?妙な悪者とか迷惑クリーチャーがご近所に沸いてくる世界観になるのは御免なんですけど」


「小町たま……幼い頃には、あんなにプリ○ュア様に憧れていらしたのに……時の流れは残酷なのであります……」


「現実と空想の区別がつけられるようになっただけです!……その現実が最近あやふやになっているのが、マジ鬱……ま、そんなのが出たとしても、実鳥義姉さんが出るまでもなく、兄さんがなんとかしちゃうんだろうけど」


なんだかんだ言いながらも、頼りがいのある兄を信頼している小町ちゃん。もし、そんな剣ですらも対処不能な事態が発生したとしたら……それはもう天災どころではなく神災だと思って受け入れるしかない。


「ふむふむ、小町ちゃんの意見は尤もだね。だがしかし!一つ思い違いをしているね。実鳥ちゃんは目的があって魔法少女になったんじゃない、魔法少女になっちゃったから目的を探すんだよ!」


「いや……別に目的とか欲してないです……って言うのは無意味なんですよね……」


無論、実鳥の小さな主張は完全にスルーされる!


「では、目的なんかは一先ず置いておきまして……第一に決めるべきは名前であります!それが決まらなければ方向性が定まりませぬ!」


「名前って……前世の身体になるだけなんだから、そのままヴェルティエじゃあ、ダメなの?」


「小町ちゃん、前世とはいえ本名で魔法少女をやる勇気は私にはありません……それにきっと、桜ちゃん監修で梓さん作のコスチューム着せられるのもきっと決定事項だから……」


それはきっと、否定すべき要素が一切ない魔法少女な外見に仕上がるであろう。しかも天然の狼耳と尻尾付きである!ただの魔法少女ではなくケモナーでもある。桜と梓のモチベーションが限界を突破するであろう事は、想像に難くなかった。


「あ……コスされるのは既に諦めの境地なんだね。梓姉さんの事だから、無駄にクオリティ高いコスチューム作りそう……」


「そこは妥協一切せずに作って戴くのであります!耳と尻尾、それにエメラルドの様な毛色はヴェルティエ様のチャームポイントでありますから!それらを十二分に生かしたデザインを、鋭意制作中なのであります!可愛くありながらも救助活動や戦闘などの実用性にも耐え、そしてそこはかとなくセクシーな要素も取り入れた素敵な服にしてみせるのであります!」


既にモチベーションは天を貫いていた!


「……えーと、名前だけど、髪の色とか狼要素を入れた方がいいよね?コンセプトは大切だもんね」


小町は桜が手に負えなくなったと判断し、無視して話題を強制的に元に戻した。


「そこはやはり、緑色と狼……広義で犬的な単語の組合せにするのがベターでありましょうな!ウルフ……ジャッカル……ハウンド……バーナード……コヨーテ……」


「わざとだよね?わざと野生で獰猛なのや、ごっつい犬種をチョイスしたでしょ桜姉さん!少女だからね、魔法少女!変身シーンでサイドチェストやダブルバイセップスをするマッシブな魔法少女なんてダレトクなのよ!?」


「いえ、最近は筋トレ+美少女にも需要がありまして……」


「そこに魔法まで混ぜないで!需要があるにしたって、ヴェルティエさんはマッチョじゃないでしょ!シュッとしてるからシュッと!チワワとかプードルじゃ可愛すぎるけど……レトリバーとかスパニエル……語呂がどうにも……」


「あの……あんまり真剣になられても恥ずかしい……」


目前で真面目に芸名を考えられているようで、実鳥はとてもいたたまれなかった……


「うんうん。案外小町ちゃんも積極的に参加してくれて女神感激!そうだね……私的には犬科な部分よりも色の方を推したいね!名前が実鳥だし、ヴェルティエもヴェルディって感じだし、体毛がまんまその色だしね!」


「女神様、体毛とか生々しいから……穴があったら……無いなら掘りたい……」


ヴェルティエの頭髪に尻尾の毛色は天然の翡翠色……地毛である。それはとりもなおさず、他の、見せられない部分に生えている毛もである。


「容赦なく人の羞恥心を削りにくる神様……実鳥姉さんが羞恥心で死んじゃう前に、さっさと会議を終わらせないと……」


鋭い鷹の目で桜を睨み付ける小町。この先、一切のおちゃらけは許さないとばかりに!


「そ、そうですなぁ……色を直接ネーミングに使うのは安直でありますし……緑でしたら植物から戴くとか、宝石でしたらエメラルドやオパールなんかもありますな……」


「そのまま使うんじゃなくて、略して可愛くするのもアリだよね。エメラルドならエメラル……エメルとか!」


「それにレトリバーを足して……エメルレトリー!……ふむ、悪くはない。さあ、ざくざくアイデア出し合おう!」


「次はボクが!少しひねりまして口上から……人と獣の絆を繋ぐ深き森の使者、シャーウッドテイル!……とかどうでしょう?テイル!と叫んだら尻尾をくりんっと振ってほしいのです!」


「解ってた……解ってたけどノリノリだよ桜姉さん……私はもっとシンプルに可愛く、ミントウルフィーとか……考えたけど」


「緑キャラでミントは基本だもんね!ハーブ系とか果物系も捨てがたい!ライムやメロン、アボカド……は、可愛くないか」


「キウイ……スパニエルキューイとかどうでしょうか?……済みません。考え無しの即興であります」


「……即興な割にはセンス感じるのが悔しい……んんん……テリア……テリアローリエ……とか?」


「私ももう一個!リーフケルベルとかどう?」


続々と沸いてくる命名案。会議は延々と、日が沈むまで続いたのであった……


「……本当、女の子が三人集まると姦しいよね。本当、架空のヒロインの名前を考えるんだったら、こんなに楽しい事はないんだろうなぁ……」


もし、変身して活動するにしても、誰にも名乗るつもりなんて無いのになぁ……そんな本心を押し隠し、実鳥は(ガルミア)の名前を、もうちょっと可愛らしく命名してあげれば良かったかなぁ……と、名前を付けられる立場になって思っていたりしたのであった。





今回挙げた候補から実鳥の魔法少女名を決定します!……多分。

すいません、マジでまだ決めきれていないのです……もっといいのが浮かんだら、今回の話は本当に無駄話に……


長続きしてしまいました特別編ですが、次回で区切りとしたいと思います……



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