第20話 平穏学園は永遠に不可思議です
私たち3人は、学園長室のドアを乱暴に開け放ちました。
カギなんてかかっていません。私たちを誘うかのように、ドアは開きました。
そこに待ち構えていたのは、当然ながら学園長さんでした。
学園長さんのすぐ隣には、ロマンスグレーのあのおじいさんも並んで立っています。
「また一緒にいたのか! どういう関係だ! やっぱり、ラブラブな仲なのか!? このオレ様を差し置いて!」
ヤンキーが怒鳴りつけます。とってもズレた方向で。
「は……? なにを言ってるんだい、この子は」
「あっ、ヤンキーはおかしな子なので、気にしないでください」
きっぱりと言い放ちます。
「おい、パシリ! そりゃ、ひどくないか!? 親友なんだろ!?」
「親友だからこそだよ!」
親友。便利な言葉です。
ヤンキーが納得してくれたかは、はなはだ疑問ですが。
と、そんなことよりも。
「学園長さん、詳しく話を聞かせてもらいたいんですが」
「……そうだね。観念して全部話そうじゃないか」
私のお願いを、学園長さんは素直に聞き入れてくれました。
「おおよそ予測はついているんじゃないかと思うけどね、この私がすべてを指示していたんだよ。不可思議な存在をこの学園内に集めて閉じ込め、周辺地域一帯におかしな出来事が起こらないようにね」
「不可思議な存在を、学園内に閉じ込める……? 周辺地域一帯におかしな出来事が起こらないように……?」
思わずオウム返ししてしまいます。
学園長さんが怪しいのは予想していましたが、考えていたよりもずっと規模の大きな話だったみたいです。
まず、この学園の校舎自体が意思を持っている、というのは事実だとのことです。
学園自体が幽霊とか妖怪とか、そういった存在になっているということですね。
長年、学園に通う生徒たちの想いや思念を吸い取った結果、どんどんと力が強くなっていきました。
その結果、周辺地域一帯にまで影響を及ぼし、この界隈ではおかしなことが起こりまくるようになったのだそうです。
それを防ぐため、学園の敷地内にすべての不可思議な存在や思念などを閉じ込めるようにしたのが、今から三十年くらい前。
その頃から、学園長の立場にある人が、学園内の自然ならざる存在を取りまとめる役目も担うようになりました。
また、現在いる幽霊や妖怪などの類だけでなく、新たに別の場所から不可思議な存在を取り寄せてくることもあるようです。
お出迎え天使さんの彫像も、そうやって運び入れたものでした。
どんなにひどい悪さをするような幽霊や妖怪でも、この学園の敷地内に入れば、ちょっとしたイタズラをする程度の害の少ない存在に変わるのだとか。
そんなこんなで、学園内では不可思議なことが絶え間なく起こるような場所になっていきましたが。
それでもなんの問題もありませんでした。
というのも、この学園の敷地内にいれば、どんなにおかしなことが起こったとしても、大して気にしなくなるからです。
精神的に干渉して、思考がコントロールされるようですね。
ただ、私たち3人にはその干渉が充分に効かず、『不思議ちゃん探検隊』なんて言って、いろいろと調べ始めるに至りました。
そこで学園長さんは、あまり嗅ぎ回らないよう、風紀を乱す生徒の取り締まりを強化する、といった指示まで出していたのです。
「どうして私たちは、思考がコントロールされなかったんですか?」
率直な疑問を口にします。その質問にも、学園長さんはすぐさま答えを返してくれました。
「それは、あんたたちが初代学園長の子孫にあたる血筋だからだよ」
「ええっ!?」
「そしてここにいるこの人が、初代学園長なのさ。もっとも、すでに幽霊になってるけどね」
学園長さんが、隣に立つロマンスグレーのおじいさんを指差しながら解説を加えてくれました。
「そのおじいさんが初代学園長さんで幽霊で、私たちのご先祖様……?」
あれ? でもそうすると、ヤンキーも釘バットも、私の親戚ってことになるのでしょうか?
「そうなるね。といっても、この人は何代も前の祖先だから、かなりの遠縁ってことになるだろうけどね」
「なるほど……」
だったら知らなくても全然不思議ではありませんね。
学園長さんは、さらに続けて語ってくれました。
初代学園長であるおじいさんは、幽霊となってこの学園に存在し続けてきました。
学園内に不可思議なことを集めるというのも、実際にはおじいさんから指示を受けて、その後の歴代の学園長さんたちが実行してきた、ということなのだそうです。
ところで、私たち3人の中でも、一番強く初代学園長さんの血を引いているのが、ヤンキーでした。
だからこそヤンキーを操って、私たちが学園を調査するの諦めるように誘導する作戦を決行したのだといいます。
ヤンキーが屋上にトランポリンを持ち込んだのも、初代学園長さんに操られていたからだったようです。
危険な目に遭わせれば諦めてくれるに違いない、と考えての行動だったのでしょう。
あのときは、校舎が私を助けてしまったため、作戦は失敗に終わったわけですが。
「って、私、ほんとに屋上から落とされる予定だったんですか!?」
「いやいや、突然の強風は想定外だったんだよ」
作戦は失敗したとはいえ、私たちが嗅ぎ回るのはどうにかして止めないといけない。
そう考えた初代学園長さんは、私たちを異空間に引き込んで、そこで警告することにしました。
警告をそのまま受け止め、3人の心がバラバラになれば、バカな活動もしなくなるだろう、と。
ですが、その作戦も失敗しました。
私たち3人の絆が、思った以上に強かったからだそうです。
う~ん、そこまで強い絆で結ばれているんですね、私たち。
普段のちょっとひどい仕打ちからすると、とてもそうは思えませんが。
それでも、あの異空間で私が語った想いに嘘は一切ありませんでした。
そう考えれば、私たちは強い絆で結ばれている関係ってことで、間違いはないと言えるのでしょう。
「んで? 結局のところ、どうするつもりなんだ?」
ヤンキーが学園長さんに詰め寄ります。
学園で一番偉い立場の人相手で、どんな状況になっていようとも、ヤンキーはやっぱりヤンキーです。
対する学園長さんのほうも、至って落ち着いた口調を崩さず、こんなお願いをしてきました。
「この学園には不可思議な存在がたくさん集まっているけど、生徒たちに危害を加えたりするわけではない。だから、これからも今までどおり、ひっそりと暮らさせてあげてはもらえないかい?」
さて、ヤンキーはどんなふうに答えるのでしょう。
いえ、予想はできています。
「わかった、いいだろう!」
ほら、思ったとおりです。
それにしても、お出迎え天使さんとか校舎自体の妖怪とかって、ひっそりと暮らしていると言えるのでしょうかねぇ……?
ま、いいんですけど。私はヤンキーの――親友の決定に従うのみです。
「アニキがそう言うなら、あたしも異論はありません!」
もちろん、釘バットも即答でヤンキーに同意します。
「おお……ありがとう。キミたちはとても物わかりのいい生徒のようだね……」
初代学園長のおじいさんも、目をうるうるさせて喜んでいるようです。
「それじゃあ、この話はこれでおしまいだね!」
学園長さんが宣言しますが、そこで終わらないのがヤンキーというものです。
「いや、まだだ。学園長たちの邪魔はしない、これは約束しよう。だが、不可思議な存在は確かにいるとわかった。しかも大量に! これはオレ様たち『不思議ちゃん探検隊』にとっては最高の調査対象! 今後も様々な不可思議なことについて、調べ続けるぜ!」
「はい、そうしましょう、アニキ!」
ヤンキーの宣言に、釘バットが当然のように同調します。
学園長さんが私のほうに目を向けて、どうにかしてくれないかね~? と視線で語ってきます。
うん。それは無理ってものですよ。
私は首を左右に振って答えます。
それからすぐに、私たちは学園長室から立ち去りました。
呆然としたままの学園長さんと初代学園長さんの幽霊を残して――。
こうして、学園内に妖怪やら幽霊やらといった不可思議な存在が集まっていることを黙認しつつ、調査対象として楽しむことを決めた私たち。
そんなわけで、この平穏学園では今日も今日とておかしな出来事が起こり、私たち『不思議ちゃん探検隊』が嬉々として活動を開始するのでした。
以上で終了です。お疲れ様でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本当は、1話完結の変な話をもっと書いていくつもりだったのですが、とりあえずここまでで完結ということにしました。
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