変動
いつも通り絶好調で練習を終えた。ドラムの音の余韻に浸っていると、友黄が、ギターを投げつけた。
「なんで青藍じゃないの!ドラムは…ドラムは青藍そのものなのに!」
水を打ったようにその場が静まり返った。泣き出した友黄は、スタジオを飛び出した。
ドアの閉まるバタンと言う音で我に返り、友黄の言った意味を考える。
「青藍じゃないの…」か友黄はまだ、向き合えてなかったのか。
この前までの自分を見ているようだ。助けなければ、助けなければ友黄は壊れてしまうかもしれない。強いものほど脆く壊れやすいのだ。
「か、鞄…」
赤華がおどおどしながら指を刺す。全く何もできないやつだ。普段は友黄に近寄っていくくせに、友黄が熱くなったら何もできない。
赤華の視線から、鞄をひったくるように走ってスタジオを出た。
友黄はバス停に座っていた。
「友黄これ…」
鞄を持ち上げ、友黄にも見えるようにする。
「あんたなんか…青藍じゃない。青藍の真似しても、あんたじゃ青藍になれないの!」
こちらを一見もせず道路に向かって叫ぶ。勝手に横に座る。
「私は青藍の代わりになんかなろうとしてない」
「じゃあなんでドラマなんかやってんのよ?それとも、青藍のことただのドラマーとしか思ってないんでしょ!」
「青藍は…青藍は大切な仲間だよ!」
「嘘つくなよ!」
「嘘じゃない!私だってたまに青藍の幻影を追うこともあるよ!そしてそのたびに思うんだ「もう青藍はいない」って実感するんだ」
ふと友黄を見ると目から涙が溢れていた。
「もう青藍はいないんだよ。そのくらい分かるだろ。いないからこそやるべきことがあるでしょ!後ろばっかり向いてうじうじしてんなよ!」
言いたいこと全部道路にぶちまけた。ぶちまけた言葉を、バスが下敷きにして停車する。
涙を流しながら友黄はバスに乗って行った。バスが、見えなくなるまでバスをずっと睨んでいた。
不意に緊張がとけ、足が震える。紫織はこんなに大変なことをしていたのか。今更だが、頭が上がらなかった。




