Elsku
どうやら緑ちゃんの家は、バス停とは逆の方向にあるようだ。
いつもは普段行かない所は怖くて行けないけれど、今日は不思議と怖くない。
緑ちゃんに会ったら、まず何を言おう。「大丈夫?」から始めるのが定石だろうか。それとも思い切って告白してみようかな。
「好きです」なんて本人の前で言えるわけがない。言えたところで…
何にせよ緑ちゃんの家に行けることが楽しみだ。楽しみすぎて、人生で初めてスキップしながら鼻歌を歌った。
「次の角を右方向、その次の角を左方向です」スマホが道を教えてくれる。上機嫌で道を曲がる。
目の前にはトラックがあった。いや、目の前数十センチからどんどん、近づいてきていた。
咄嗟の出来事だった。体に衝撃が伝わって体が宙に浮かぶ。世界がスローモーションになり、緑ちゃんに渡すためのクッキーが鞄から飛び出す。
「待って」声に出そうとしても声が出ない。手を伸ばそうとしても伸ばせない。
ゆっくりと、ゆっくりと地面に叩きつけられる。落ちた右手から全身に電流が流れる。そして、叩きつけられた方がじんわりと熱くなる。
直感でわかった。もう死んでしまう。その前に緑ちゃんの家に行かなきゃ。
どうしてもこうしても身体が動かない。トラックの運転手さんが、声をかけてくれるがどうも煩い。
行かなきゃ…いかなきゃ……イカナ……




